妻石の原石を求めて
鋼水の脚をフィンに変え、手足を使って大きく水を掻いていく。俺の前を泳ぐのは4人の人魚。フェルとシー、ストリーにラクシュだ。
……地球のプールに比べて、体が動かしやすい気がするな。これは……左腕の恩恵だろうか?
「わーい、レイジと泳ぐの楽しい~!」
「ラクシュ、レイジに抱きつかない。またメイドさんに怒られるよ」
「安心しなさい。既に怒っています」
騒がしい人魚の戯れは放っておき、俺は目的の物を探し始める。
何故、こういう状況になっているのか。それはポセイドンに妻石の原石を掘り出してきて欲しいと頼まれたからだ。マーメイドの技術では原石を掘り出す事は出来ずに、何かしらの理由で転がってるのを拾う事でしか妻石を入手する事が出来なかった……だから、俺達が取ってくる事になった、という事だ。
「シー、目的地まではどのくらいだ?」
「そうね……女王様はこの辺りと言っていたけど……」
妻石の原石を掘り出すにあたって、シーが道案内を引き受けてくれたのだが……城を出た瞬間にラクシュに見つかり、ストリーも現れ着いてきてしまった……と言っても、目的地付近も友好的な魔物ばかりで危険は無いそうだ。
「あっ、あれじゃないかしら? あの崖っぽい所!」
シーが指を指したのは、そびえ立つ岩の壁……見上げれば海面で島になっているような円柱状の岩の柱。少し離れているのに、妙に魔力を感じるな……だが、岩肌に海の青と違った青が露出している。あれが妻石の原石……いや、原石と言うか巨大な……岩? これは人間でも取り出すのは難しそうだ。
「フェル、遊んでないで来てくれ」
「こちらに」
岩の壁まで近付き、フェルを呼べば真横から返事が返ってくる。
俺1人じゃ無理そうだからな……フェルなら1人でも取り出せるだろうか?
「勿論です。少々お待ちください」
フェルがそう言うなら、任せておくか。と、フェルが妻石の岩に近付いた時だ……妙だな、無限変化水流の左腕が何かを訴えてるような……鋼水のフィンが勝手に変化してる。これは……どういう事だ?
「マジ!? ひっさびさに地元帰ろうと思ったら、噂のユーシャ様じゃーん! チィーッス!」
俺の目の前に現れたのは変わった人魚だった。尾は美しい翠の鱗。肌は小麦色に焼けていて健康的に見える。ビキニは貝殻で今も零れ落ちそうだ……今まで出会った誰よりもデカい。金髪のサイドテールで……オタクが考えるギャルって感じだ。
「どーもー! アタシ、オルクス四天王の水担当。ウンディーネ、みたいなー?」
オルクス四天王……だって!? ゼメルを攻めていたのはヴォルテールだけじゃなかったのか!?
と、イヤリングの宝石を摘まみ、2本の剣を構えると……ウンディーネは笑顔で俺を見ていた。
「驚いた顔、チョーウケルんですけどー! アタシは戦う気無いから安心しなって!」
いやいや、安心できねーよ!?