俺でも知ってる名前の女王
まだまだシーに手を引いてもらい、海底の散歩は続いていく。水の中って動かなくても疲れるな……
「シー、オツェアーンはまだなのか?」
声をかけると、シーは泳ぎを止める。
やべ……怒らせちまったか? って、この景色は……!
「もう着いたわよ。オツェアーンにようこそ!」
シーが腕を広げ、俺の視界の中心から外れる。巨大な貝や岩を削って作られたであろう家。扉などは無く、屋根だけあれば良いって……ヴァルトみたいだな。確かに海の中では水温の調整が出来ないだろうし、家に求める目的が人間とは違うんだろうな。
「オツェアーン、マーメイドの国のようですね。私の知識に無いのは、魔物の国だからでしょうか……?」
マーメイドの国か。その割には、女性しか見かけないような……?
(マーメイドは女性しか存在していません。伴侶となるのは人間の男性で、この国に連れて来られるようですね。家から気配を感じます。気を付けてください)
なるほど……家はマーメイドが暮らすんじゃなくて、人間を住まわせる為だったのか。そりゃ人魚の文化は人間とは違うに決まってるだろうけどさ……流石に、怖いな。
落ち着かない心境にボーっとしていると、シーが繋いでいる手を引っ張る。
「女王様の所に案内するわ、着いてきて!」
シーがゆっくりと泳ぎ始め、海底の街の奥へと泳ぎ始める。他の人魚が俺の事をジッと見てくる……ちょっと、緊張してきたな。
◆
シーに案内されたのは、オツェアーンの最奥にある大きな城のような建造物だった。唯一ドアがあったり、門番の様にビキニがビキニアーマーと槍を装備したマーメイドが守っていたり……人間の国での城みたいな場所だな。
その大きな扉を開けた先、武装マーメイドが2人。そして、巨大なマーメイド。3メートル程だろうか? それに他のマーメイドと違って装飾品を多く付けていて、青髪ロングで気品さを感じる……気がする。
「ようこそ、レイジ君、フェルさん。私の名前はポセイドン。このオツェアーンの女王です」
「ポセイドン……ポセイドンってあのポセイドンか!?」
ポセイドンの名前は俺でも流石に聞いた事がある。と言っても、外国の物凄そうな海の神様ってくらいだけど……でも、俺の記憶が正しければ……
「ポセイドンってお爺さんの名前のイメージなんだけど……」
「それは地球のイメージですから。私はシェーンのポセイドンですので、貴方のイメージと違うのは仕方ありません」
まさか、地球の事を知ってるなんて……ポセイドンも神の領域に到達してるのか……? 何か一筋縄で行かなそうな気がしてきたな。