これが俺の強さ……?
遅くなりました。大変申し訳ありません
俺と黒い俺……不安が具現化した影と目線が重なる。右腕に絡みつく狼の頭が吼えると、影の腕に黒い剣が現れる。あの燃え盛る炎のような真紅の模様……まさか、太陽の剣か? 今の俺には使えないというのに……まあ、太陽の腕があればなんとかなるか。
「まずは、これでどうだ?」
ハンドガンに闘気を込め、引き金を引けば静かに撃ち出される。太陽光弾の応用というか、指からではなく銃から撃ち出しただけだが……牽制には充分だ。
「憎悪黒弾」
影の俺も左手に真っ黒なハンドガンを作り上げ、真っ黒な弾丸を放ってくる。影の弾丸は光の弾丸を呑み込み、更に俺の方へと迫ってくる。
憎悪ってなんだよ!? 俺は使った記憶無いぞ!?
「チィッ……雷光電磁壁!」
迫る弾丸を雷の衝撃で掻き消す。と同時に駆け出し、銃を構えたまま立ち止まる影に接近戦を仕掛ける。俺の事を見ちゃいない、代わりに腕と足に纏わりつく頭が俺を睨んでやがる。
「オラァッ!」
地面を這いずるような低姿勢で駆け抜け、影の眼の前で全力で斬り上げる。鳥の目が俺を強く睨むと、影の左腕に黒いひし形の盾。黄色の雷の文様……雷光の盾!? それはまだ使った事が無いぞ!?
「憎悪空気銃」
「ぐっ……うわぁっ!?」
俺の一撃は雷光の盾で防がれ、電流が俺の体を駆け巡る。痛みとともに体が停止した隙に、影の左手の手のひらが俺に向けられる。衝撃波が放たれ、俺の体は大きく吹き飛ばされた。
「……ったく、厄介だな」
吹き荒れる右脚で風を操り、地面に無様に転がる前に体制を立て直す。あの影……まさか、未来の俺なのか? だから使った事のない憎悪や雷光の盾を……って事は?
「オ前ダッテ……勇者ニナリタクナイダロウ?」
やっぱり……影の左腕にイルカの首が噛みつく。あれって……多分、そういう事だよな?
「四属性身体強化」
「おいおい、嘘だろ……?」
完全な四属性……フェルが使ったのと同じ虹色の闘気を体に纏っている。弱ったな……アプサラスの鋼水の盾は不完全な雷風炎でしか破ることが出来ない。でも相手は俺の雷の盾を破ってくる。
コイツ……本当に俺か? ゲームじゃあるまいし、敵になった方が強いなんて、勘弁してくれよ……
「正攻法デノ勝チ目ハ無イ……理解シテイルダロウ……?」
「……驚いたな。話しかけてくるのか」
影の言う通りだ。コイツは俺の不安で、物理的に排除できるようなものではない。でも、どうしたら……