従者は信じて戦い続ける
レイジ様が海に放り込まれ、我を失って飛び掛かろうとしましたが……どういう訳か、レイジ様の声が聞こえました。すぐにでも助けに行きたかったのですが、私だって感情があります。
「ウフフ……アプサラス、やりなさい!」
今はネルガもレオも私の分身と協力して魔物の大群を蹴散らしています。特別に強い魔物が存在していないのが救いですね。とにかく、私はヴォルテールの顔をぶん殴ってやらなければ気が済みません……!
「放出 : 四属性!」
太陽の剣は再び虹色の輝きを取り戻す。輝きを目にすると、アプサラスが警戒するように鳴きました。レイジ様が使った魔法だと気付いたのでしょうか……未完成だというのに、守護神獣を警戒させるとは……流石はレイジ様の作り出した魔法です。
「ハァッ!」
アプサラスの周りがキラリと輝いた。先程の金属のような見た目をした何かを、細かく粒状に飛ばしてくるのが見えました。太陽の剣を振るえば金属の粒が小さな爆発を起こして、消え去った。なるほど、この様子ならアプサラスにもしっかりと通じそうです。
「待て!」
ヴォルテールが命令すると、アプサラスがこちらを睨みながら動きを止める。神の領域まで到達している守護神獣をここまで操れるなんて……恐ろしい能力ですね。レイジ様の心の声を聞く限り、戻ってくるには時間がかかりそうです。マーメイドと何かしようとしているみたいですが……心配です。
「貴女、相当強いのね。その力もまるで初代の勇者みたい」
「初代の勇者は1000年以上も前の存在ですが……見た目よりも年を重ねているのですね」
海から妙な力を感じます。レイジ様とマーメイドが何かし始めたみたいですね。でしたら、ヴォルテールの気を、こちらに向けて……
「でも、さっきのガキは私の下で泣きながら喘いでいたわよ? 貴女、床での努力が足りないんじゃない……?」
「あ?」
今、コイツなんて言った? レイジ様を……泣かせた? というか、レイジ様を虐げただけではなく、レイジ様を犯したと……? 助けに行く道中でレイジ様が静かに謝り始めたのは……!
「可愛かったわよぉ。手足が無いから大して抵抗もしないし、泣き虫で反応も良かったしね」
限界だ……レイジ様の手は煩わせない。これ以上、コイツの言葉は聞く必要は無い。これ以上の感情も必要ない。今は、コイツを……
「ぶっ殺す!」
「小娘が……殺れるもんなら殺ってみなさいよ! アプサラス、迎え撃ちなさい!」