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美しき旋律

 沈む……体が液体の中に沈んでいく……泥の様に不快な感触で、触れている個所が焼けるように熱い…………はずなのに、まるで他人の事のようだ。俺の事なのに……夢……みたいな感じ。ここは……っ!?


「ガハッ、ゲホッ!」


 意識の無い俺の体に液体が侵入し、肺を満たし、喉をこじ開け体の奥深くを埋め尽くしていく。体の外側だけでなく内側までもが焼かれていく。肌が爛れ、骨が露出し、感覚が、神経が毒に侵されていく。何も出来る事なく……俺は死ぬのか? フェル……ネルガ……レオ……誰でもいい! 俺に助けを!


「わぁーお、こんな海なのに遊びに来るニンゲンなんていたんだー」


「馬鹿、どう見ても溺れてる……どうする?」


「助けるに決まってるでしょ、急ぐわよ!」


 女性の……声? 液体の中だというのに、なんて女性の綺麗な声だ……やっぱりここは海、なのか……?


「Ah――」


 1つの歌声が俺の体を包み込む。穏やかで包み込むような歌声に傷ついた体は癒えていき、水の中だというのに不快な感触が消えうせ地上に戻ったかのような感覚だ。


「La――」


 2つ目の歌声は1つ目の歌声よりも少し高めの声で……落ち着いている。今度は体の内部を癒してくれる。この歌声……魔力を感じない。神力は当然感じない、けれど、闘気でもない……なのに、俺はこの何かを知っている? 何故だ……体に馴染む気がする。


「Ru――」


 3つ目の歌声は2つに比べれば少し低めで、一番必死さを感じる歌声だ。俺の体の奥深くへと入り込んでくる。肺や内臓を満たしていた水を追い出し、体の中を空気が満たしていく。これって……水の中で呼吸が出来てる?


「これで水の中でも大丈夫そうだねー」


「さっさと地上へ投げ返す」


「って、治したのに手足無いじゃない! 私達の歌で治せないなんて!?」


 治してもらったのならお礼を言いたい。だけど、手足が無いから動きようがなかった。俺は声を出す事が出来るのだろうか……?


「というか、コイツもう起きてない? 私達の歌、聞かれてたんじゃないの?」


「ええー、聞かれてたら女王に怒られちゃうー」


「でも、元々目覚めかけてたっぽい。このニンゲンなら、私達の歌を聞かなくても他の誰かが助けてたと思う」


 なんか色々言われてるけど……話しかけ辛くなってしまった。この声の主は人間にさっきの歌声を聞かれてはいけないらしい……目覚めるとか何とかって、さっき感じた魔力でも闘気でも無さそうな何かの事なのか?


「どれどれー? わー本当だ、シーちゃんの言う通りもう起きてるよー。初めまして、アタシはラクシュ!」


 俺の顔を覗き込んだのは黄緑色の髪を持った少女だった。透き通った青色の瞳はキラキラと何かの期待に満ちている。肌の露出が多く、ピンクの貝殻をビキニの様に胸に当てているだけ。下半身は桃色の鱗が煌めいて……え?


「に……人魚?」


「喋ったー、ねえねえお兄さん名前はー?」


 人魚って……俺、魂を食べられるのか!?

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