レイジ様の為に!
獣の四肢に獣耳を取り戻したレオを先頭に、ネルガ、私の順で森を歩いています。筋肉車では大きな音を立ててしまうので、私の異空間収納に収めました。太陽の剣、雷光の盾、そよ風のマフラーを装備して……もう油断はしません。必ず、レイジ様を救います。
「ヴォルテール、彼女はオルクス四天王にて雷を司っています。戦闘面では強いと言えませんが、恐怖や美貌で洗脳し、部下を増やして戦うのを得意としているのです」
自分で戦わず、部下に戦わせる……先程の魔物の大群もヴォルテールの仕業と言うわけですね。あの様子……アプサラスも洗脳しているのでしょう。魔物の大群もアプサラスも目が染まっていると言っていました。間違いなく、洗脳されている証拠でしょう。レイジ様は洗脳されていなければ良いのですが……
「彼女自身は雷で麻痺させる事を得意としてる為、サポートに回られると厄介なのです」
困りました……アプサラスは性質を破れる私が相手を相手をするべきでしょう。ですが、レオとネルガに魔物の大群もヴォルテールも任せるのは難しそうです。私が分身をしても良いのですが……どうにかして麻痺に完全な対策をしなければ……
「これは……レイジ様が目覚めて……?」
レイジ様の苦渋に満ちた声が私の頭の中に流れ込んでくる。あの女、本当にレイジ様を……!
「フェル殿、落ち着くのです!」
「分かっています……分身して魔物の大群とアプサラスを抑えます。ネルガとレオで、ヴォルテールを抑え、隙を突いてレイジ様を救出しましょう」
「なるほど……落ち着いていましたな。分かりました、ヴォルテールはお任せください」
「良いぜ、オレのスピードなら確実に隙を突けるはずだ」
心強い返事です。これならば、必ず……!
◆
レイジ様が囚われている魔王軍の拠点近くで息を潜めます。白い砂浜と紫に染まった海、石で作られた奇妙な小屋と複数のテント。アプサラスの姿は見えませんが、先ほどレイジ様を握った豚野郎、ポイズンリザードやスタンクラブ、アシッドスライム……骨の兵士やゾンビ兵がうようよ居ます。
「分身……では、参ります!」
私と分身で突撃し、強烈な突風で魔物の大群を吹き飛ばしていく。アプサラスは……海の方でしょうか? こっちは分身に任せて、私は海から来るであろうアプサラスに……っ!?
「くっ……変化の性質は透明化まで出来るのですね……!」
背後に何かを感じ取り、雷光の盾を構えると甲高い金属音が盾から鳴り響く。海ではなく透明化して陸に控えていたのですか……乱戦は避けられそうに無いですね。