不穏な道中
ネルガの筋肉車が動き始める。車内にレオ、俺、フェルと並んで座っている。ちょっと狭いんだけど……フェルはメイド服だから良いとして、レオはヴァルトの時の服装をしてるから……こう、肌と肌が擦れ合って恥ずかしい……まあ、言っても離れてくれないのは分かってるから、何もしないけどな。
「今回はどのくらいかかるんだ?」
今回はゼメルまでの時間とか、何を持ってきたのかとかを俺は知らない。レオとネルガに全てを任せてシャワーやら着替えやら朝食を済ませていたからな……従者って素晴らしい。
「ゼメルはネルガの足でも半日以上かかる。丁度真ん中位にスギヤの街があるから、領主の館で休息。翌日の早朝に出て昼頃にはゼメルに着くだろ」
ネルガの足で半日以上って……相当遠いんだな。休まず行けば夕方には着きそうなものだけど、そうしないのは何か理由があるのだろうか?
「はい。ネルガ曰く、ゼメル付近の魔物は夜に活発化するそうなんです」
「別に倒せば良いんじゃないか?」
「どうやらネルガと相性の悪い毒や麻痺を使う魔物が多いようなのです」
なるほど、毒や麻痺は魔法では無く性質。いくら魔力完全無効のネルガでも、無視できないって訳か。確か……アプサラスの性質も変化だったな。物理も魔法も効かない相手には良い対策になりそうだ。
「分かった。少し仮眠を取るから、よっぽどの事が無い限りは起こさなくていい」
向かいの席に移り、硬い席で横になって目を閉じる。相変わらずネルガの筋肉車は揺れを感じない。眠るのに都合が良く、俺の瞼は直ぐに重くなっていく。
◆
俺は普通に眠りたかっただけなのに……
「なんで夢の世界が出来ている上に!」
(うむ)
(あはは……)
(シャッシャッシャ!)
白銀の狼に! 青い鳥に! 緑色の昆虫!
「守護神獣が勢揃いしてるんだよぉぉぉお!」
(うーむ、我を呼んだのはどちらだ? トールか? それともゼピュロスか?)
(ア? 俺ジャネーヨ。トール、オ前ダロ?)
(いいえ、私でもありません。レイジさんでも無さそうですし……)
あれ……3柱とも心当たりが無さそうだ。何かおかしいな……夢の世界なら、肉体に疲れは残らない。なら、やるか。右手、左脚、右脚に意識を集中させると、右手には炎が、左脚には雷が、右脚には風が集まってくる。それぞれの義手と義足は変化し、太陽の腕、雷光の脚、吹き荒れる右脚を装着する。
(おお……勇ましくなったではないか)
(凄い……あの時とは比べ物になりません……)
(シャッシャッシャ、面構エモ、悪クナイナ!)
ザワザワし始める守護神獣は放っておいて、闘気による周囲の探知を行う。同時に電波による探知、風の操作で三重の探知で周囲を探っていく…………っ! この気配は!?
「天照、下がれ! トール、俺と頭上に盾を! ゼピュロス、余波を風で払ってくれ!」
本日の余談
レイジ:……zzZ
フェル:あっ……
レオ :……見えたな
フェル:見えましたね……
ネルガ:(レイジ様……大丈夫だろうか?)