ピグマの屋敷を攻略せよ 怒りのメイド視点
レイジ様の声が途切れてしまった。攫って行ったのは黒髪に褐色肌のメイドのガキ……レイジ様が攫われてしまったのは私の慢心。
体中に白の無属性の身体強化の魔力を纏う。レイジ様の乗っていた車椅子が目に入る。クソッ、せめてレイジ様に私が創造した物を渡していれば場所が……いや、過ぎたことは仕方ありません。今は、レイジ様を一刻も早く。助け出す!
「いたぞ! 侵入者だ!」
私の身体強化の魔力を捉えたのか、ガキが消えた方向からゾロゾロと様々な武器を持ったメイドがやってくる。剣では殺してしまいそうだ……しかし、レイジ様は殺すなとおっしゃった。この私が居れば充分と思いますが……レイジ様が望むならば、仕方ありません。ならば、創り出す武器はこれで良い。
「創造 : 棍」
魔力の輝きから創り出したのは棍。約2メートルのただの棒だ。レイジ様の暮らしていた日本という場所では六尺棒と呼ばれているらしい。握りやすい太さに握りやすい丸さ、当然だが私の手に良く馴染む。
棍を振り下ろし、1人目を間合いの限界で殴る、気絶。
「退け!」
2人目、棍の間合いの半分まで接近していたので、棍を引き寄せて薙ぎ払い、頭を殴って気絶。更に跳躍しながら、棍を縦に半回転して3人目も気絶。わらわらとメイドが止まらない。邪魔だ! 邪魔だ! 邪魔だっ!
「邪魔だっ! 咆哮 : 龍」
咆哮に魔力を乗せることで事で、龍の咆哮を再現する。その咆哮は普通の音で済むわけがなく、衝撃波を生み出し群がるメイドを吹き飛ばす。動く影が無くなったところで、龍の咆哮を止める。
(……ル! フェル! 今の咆哮はお前か!?)
どこからか、レイジ様の声が聞こえてくる。私の声で目を覚ましたのだろうか?とにかく。返事をしなくては。
「通話 : 対象レイジ様! 『レイジ様? 聞こえますか!? レイジ様!』」
私は通話の魔法を使って必死にレイジ様へと呼びかける。私の読心が届くということは魔力が遮断されるようなところには居ないという事。ならば、この通話も届くはず。
(頭の中に声が響く!? これが、念話ってやつか。スゲェな……)
「『レイジ様、今はどちらに居るか分かりますか?』」
ここは、レイジ様の話を聞いてから動こう。立ち止まり、棍を消して、レイジ様の声に耳を澄ませる。
攫った奴だけは、絶対半殺しにしてやる……
(悪い、気を失っていたからな。既にどこかの部屋に居るみたいだ。目隠しされていて、多分目の前には攫った奴が居る。チートで使えそうな事を指示するから実践してみてくれ)
「『かしこまりました』」
これは……レイジ様との初めての共同作業! このフェル、気合を入れて望まねば!
あれ?フェルさん残念属性?