チートの成長
サラマンドラが駆け出し、フェルは太陽の剣と雷光の盾を構えて相手を待つ。振り下ろされる剣は盾で受け止められる。一瞬で何かが弾けるような音が鳴り響き、サラマンドラは剣を手放した。
「痺れるな……思わず剣を落としてしまった」
「あのネルガですら失神しかける程の電気ですが……」
そういう事か……シンプルな能力だけど恐ろしい盾だ。サラマンドラは剣を落としても関係ないとばかりに拳のラッシュを仕掛けている。そんな……雷の盾にその攻撃は無謀すぎる。
「あれ……? 盾に触れているのに、感電していない?」
「そのようですね……」
サラマンドラの拳は、確かにフェルの盾捌きによって防がれている。拳がぶつかる度にサラマンドラの体には電流が走っているように見える。というのに、お構いなしにサラマンドラは攻撃を加えていく。どういう事だ……?
(竜ノ鱗ダナ……)
「竜の鱗……!?」
(竜ノ鱗ッテノハ、弱点以外ノ属性ヲ半減サセルンダ。アイツハ間違イナク火ノ竜人。水以外ハ魔法デ無クテモ半減サセテイルンダロウナ)
道理で戦ってる時に水属性だけやたら避けていたんだな……というか、サラマンドラの攻撃が激しすぎてフェルが防戦一方になってないか!?
「盾の練習をしていたんですけど、必要ならもう終わらせますか?」
「え、じゃあ……やってくれ」
「かしこまりました」
そう返事をした直後だった。フェルは何時の間にか剣を振りぬいた姿でサラマンドラの背後に現れた。サラマンドラもダメージを喰らったように体が少し前屈みになって止まっていた。これ、何が起きて……?
「見事……也」
そう言ってサラマンドラは、静かに地に倒れ伏せた。天照との修行で多少の速度なら見る事は出来るようになったというのに、それでも見えなかった……まさか、フェルが……チートが成長してるって言うのか?
「って、殺してないよな!?」
「勿論です。生かしておかねば、情報が引き出せないですからね」
景色が歪み、元の森と夜空へと戻っていった。とにかく義手と義足を充電してもらって、立ち上がれるようになる所から……という事で、フェルが義手と義足から電池を取り出し、黄色い魔力を注いでいく。充電が終わると、電池を入れてくれる。それを取り付けてもらい、手足の感覚を取り戻した。
「さて、サラマンドラを起こしましょうか」
「それには及ばぬ」
倒れているサラマンドラから声が聞こえる。其方を向くと、サラマンドラが落とした剣を杖代わりに立ち上がっていた。
「拙者の負けだ。軍は撤退する……その前に、レイジ。貴様の問いに答えよう」
そうだ……俺が勝ったら、質問に答えてもらえるんだった。だったら……
本日の余談
レイジ:雷光の盾も凄いな……!
フェル:武器としても使えなくないんですよ
レイジ:盾で殴る……コスト0……敬語……うっ、頭がぁっ!?