VS竜人の侍
右手に剣を、左手にハンドガンを握りしめる。銃弾は水属性の弾丸19発……戦闘中のリロードは不可能と考えておこう。通常弾や火属性の弾丸の起爆は効果は無さそうだな……俺の方が大分不利だ。
「武具、魔法、兵法、あらゆる全てに制限は付けぬ。それで良いな?」
「ああ、大丈夫だ」
サラマンドラがその辺りの木から枝を手折る。
「これを真上に放り投げ、地に触れた時が合図とする」
サラマンドラから距離を取り、お互いが剣を伸ばしても届かない位の間合いになる。眼を見て頷くと、高く放り投げられる。くるくると回りながら、夜の闇に吸い込まれていく。風切り音を立てながら、木の枝は地面に……触れた。地面を蹴り、砂埃を巻き上げる。風を操り、サラマンドラの眼に集中させた。
「うっ……いきなり目潰しか……!?」
卑怯と罵られようが、長期戦を避けなければ……! 右の剣を振り下ろし、胸元を斬りつける……つもりだった。
「受け……止めた?」
「拙者、心眼を会得している……目が使えぬくらいならば、支障は無い」
俺の一撃はサラマンドラの炎を纏う剣に受け止められていた。鍔迫り合いの形になってしまうが、竜人の方が圧倒的に強い……あっさりと押し返され、不利な体勢になってしまう。ここは……ハンドガンを向ける。水の光線は後ろに躱されてしまった。まだ目は空いていない筈なのに、全てが見えているような動きだ。
「嵐球!」
「この音……風か? 貴様も風使いか。悲しいかな……拙者はオルクス四天王の中で火を司るのだ!」
俺の方向へと火球を吐き出してくる。しかし、嵐球は火属性に対しての相殺魔法だ。問題なく火球を防ぎ、上手く拡散して火に呑み込まれてくれる。風と炎が音を掻き消している間に風でふわりと体を浮かせる。ゼピュロスを倒すための兵士なんだから、火属性なのは当然だよな……どうしよう。
「やっと目が開くようになったか……ほほう? 人間だというのに、空を飛べるか。面白い、飛炎斬!」
サラマンドラの剣から、炎の斬撃が飛ばされた。くっ……これじゃ嵐球は斬られるから炎が防げない。義手の電池のエネルギーを雷に変え、無理矢理に剣に纏わせる。
「これで、どうだっ!」
雷の剣で振り払い、炎の斬撃を斬り払う。
「水を撃ち、風を操り、雷を纏わせるか……まるで勇者のようだな」
最後に充電したのは何時だ……そろそろ、義手と義足は限界が近いんじゃないか? 今の斬撃だけで、1時間分のエネルギーって事だろ……燃費が悪すぎる。
「どうした? これで終わりか……?」
一旦地面に降り、サラマンドラを睨む。どうにかして、水の属性弾か雷の斬撃を当てなきゃ……オレに勝機は無い。
本日の余談
レイジ:炎と雷、風と水ってぶつかり合ったらどうなるんだ?
レオ :実力勝負になるぜ。だから飛炎斬とあの一撃は互角だったって事だな。
レイジ:あれはあんまり使いたくないんだけどな……