熱い森
俺達の行く先に、また大きな火柱が上がる。気のせいじゃなければ、周囲の気温が上がっているような気がする。レオの背中にも大粒の汗が滲んでいる……気のせいじゃない、この辺りは暑くなっている。
「妙だな……快適温度の性質が効いちゃいない。これは暑いんじゃなくて、属性結界だ」
「属性結界……?」
「自分の属性が有利になるように作るフィールドだ。オレ達の服には快適温度が付いてるのに、汗をかいている。これは気温による暑さでなく魔法的な熱さが生じているって事だな」
この熱さ……属性は間違いなく火属性だ。ゼピュロスは風属性……炎属性には不利だ。完全にゼピュロスを殺しにかかってる……俺に何か出来る事は……
「レオ、結界を解く方法は?」
「いやいや、分かんねーよ。属性結界にだって種類がある。1人が作っているのか、複数人が作り上げているのか……とにかく、火柱の元へ行くんだ。そこから、何か出来る事があるかもしれない」
「……そうだな。少しハンドガンの弾を変える」
今回も通常弾は一発しか使わなかった……通常弾は殺傷能力が高すぎる。通常弾の弾倉をホルダーに収め、水属性の弾倉をホルダーから取り出しリロードする。フェルの魔法が籠められているはずだから、火属性の結界の中でもダメージを与えられるはずだ。しかし、水属性の弾丸には限りがある。嵐球もしっかり使っていかないと……
◆
火柱の元へ近付けば近付くほど、熱気が異常になっていく。汗が止まらず、風が操り辛くなっている……火属性の結界の中心地に確実に近づいている。
「…………っ!」
レオが俺を手で制する。激しい炎と風の音……ゼピュロスが戦っている。相手は……侍みたいな鎧を着ていて、顔がトカゲのような顔だ。その手には炎を纏う剣……フェルやレオ、天照の炎に比べればくすんで見える。
「拙者の剣術を捌くとは、敵ながら見事」
(シャッシャッシャ……俺ミタイナ昆虫ガ、龍デアルオ前ニ勝テル訳ガ無イダロ……)
ゼピュロスの甲殻は所々焦げていて、火属性に苦戦させられているのが良く分かる。剣を右手に握り直し、左のハンドガンの引き金に指をかけておく。しかし、レオが俺の肩を掴んで止めてくる。
「レイジ様、周りをよく見ろ」
レオに促され、ゼピュロスとトカゲ人間……? みたいな侍の周りをよく見てみる。ローブを着た何かが2人程、汗をかきながら呪文を唱えている。アイツらは……もしかしなくても!?
「怪しすぎんだろ、オレが仕掛ける」
「分かった。頼む」
レオが静かに、異空間から2本の投げナイフを取り出した……頼む、外すなよ……
本日の余談
レイジ:属性結界……厄介だな
レオ :でもこっちが同じ属性が使えりゃ、強化されるぜ
レイジ:そう考えると、1属性単パーティーは止めた方が良いんだな(ゲーム脳)