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風の抱擁

 ここはハインリヒにあるレイジの屋敷。石で出来たバルコニーにはメイド服を身に纏う銀髪の少女が居た。柵に手を置き、とある方向を見つめていた。


「フェル殿は行かなくて宜しかったのですかな?」


 フェルの後ろから執事服を破きかねない程に筋肉の鎧を纏った初老の見た目をした男が声をかける。静かに溜め息を吐き、彼女は首を横に振る。


「レイジ様もレオも……私がいては踏み出せません。レイジ様はレオを明らかに好いています。以前の私でしたらレオを消していましたが……それではレイジ様が傷ついてしまう。それに、私もレオは好きです」


「なるほど……しかし、彼らは不器用だ。変な喧嘩でもしなければ良いのだが……」


「もう遅いです。レイジ様が失言をして、本気でやりあってます」



 右手に剣を持ち、左手に剣を持つ。両腕が利き腕というわけでは無いが、左で攻撃を払い、右腕で追撃を払う。俺から攻撃する必要は無い。レオに与えてしまったストレスは暴れて発散させる……俺にやってもらったヴァルトの流儀だ。


「うああああああ!」


 半獣化したレオの爪による鋭い一撃を、右の剣で受け止める。俺の筋力では右手だけじゃ押されてしまいそうだ……左の剣で右の剣を支え、持てる力の全てで押し返す。レオは片腕だというのに……この圧力、ヤパンでのフェルを思い出す……俺はまた……好きな人と……


風機関銃突(マシンガン)!」


 蹴り技である風機関銃蹴(マシンガン)の応用で、残像が見えるほどの突きを何度も放つ。しかし、レオは次々と迫る剣を布のようにひらりひらりと躱していく。


「甘いんだよぉ!」


「ガッ……ウグッ……グ……」


 剣閃を見極められ、目の前までの接近を許してしまった……首を掴まれ、今にでもへし折られそうだ。喉が締め付けられ、呼吸が上手くいかない。吐き気のような感覚が……


「オレは……こんな事をする為に、ヴァルトに来たわけじゃないのに……!」


 レオの瞳から涙が零れる。このまま、俺が負けて終わるわけには……行かない! レオの腹部になんとか膝蹴りを叩き込み、首を離させる。バックステップで下がり、剣を構えなおす。このままじゃ駄目だ……このまま続けても、レオを傷つけるだけだ。今、俺に出来る事は……出来る事は……!


「あ? おい、何で武器を片付けるんだよ……オレは暴れたりねえぞ。それとも、武器無しでオレとやりあうってのか?」


「そうだ、俺は今から武器無しでお前に仕掛ける」


 レオは俺を獅子の瞳で睨み付け、俺の動きに警戒心を露わにする。迷っていても仕方ない……足から空気銃(エアガン)を放つ事で、0歩での急加速。急な動きの変化に、レオは爪を突き刺そうとする動きで対処してくる。よし、予想通りだ……闘気が持ってくれれば良いけど、身体強化全開だ!


「なっ……!?」


「捕まえた……好きなだけ嗅げよ」


 身体強化でレオの爪を紙一重で躱した……という所で、闘気が切れた。レオの体に持たれかかり、力が抜けていく。やっぱ、吹き荒れる右脚(ゲイルレッグ)の闘気生成量じゃ、一瞬が限界か……


「こんな汗だくで……こんな濃密な匂いを、今のオレに嗅がせるとか……我慢、出来ねえよ」


「我慢するな、俺が悪かった」


 疲れた……瞼も重くなってきたし、また気絶コースかな……でも、レオが喜んでくれたようで良かった。ここはレオに任せて、少しだけ……


「全く……しょうがねえな。ほんのちょっと、我慢してやるよ」

本日の省かれシーン


レオ :ああ、匂いが……いやいや、我慢我慢……でも少しだけ、いや駄目だ。でもちょっと位なら……


レイジ:(起き辛い……)

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