風になったっ!
俺の体にはロープがグルグルと巻かれ、腕を動かす事は出来ない。足で踏ん張ってみるも、大した抵抗にならない。俺は今、3頭のライオンに凄まじい勢いで引き摺り回されていた。猛烈な勢いに表情すら動かせない……けど。
「これは違うだろぉぉぉぉぉぉおお!?」
「いやいや、オレはこれで使えるようになったんだよ!」
俺の横を半獣化したレオが並走している。確かに凄い風になってる感はあるけど! これはちょっと、ケツ痛い! 破ける、というか肌が出てる部分が痛い!
「風は考えるもんじゃねえ。風は心で感じるんだ! こうした大自然の中で風を浴びながら、何かを感じて捉えろ!」
大自然を捉えろって、痛みでそんな集中してる余裕が無いってのに……せめて、風でバランス取って立ち上がれれば……っ!? なんだこれ? 頭の中に不思議な映像が……? 日差しが降り注ぐ森、葉や草、果実を食べる動物……それらを食べる動物……いつかは死に、土へと還る。これは……なんだ?
「おっ……おお!? な、何か……感覚が?」
風で体勢を整えて……何とか靴で立つことは出来たけど、引き摺られるのは変わらない。気を抜けば、バランスを崩して頭を打ちそうだ……何かを感じる……目を閉じて、風を浴びながら……
「何か掴んだな……よし、スピード上げろぉ!」
レオの号令の下、俺を引き摺るライオン達のスピードが跳ね上がる。今まで加減してたのかよっ!? 風で体が後ろに持ってかれそうだ。でも、目を開けるな……考えずに風を感じる……先ほどの様に映像が流れ込んでくる。海、大地、生き物、虫、空気、空……これは何だ? 俺は何を感じ取って…………俺が見える? …………俺? ……なんで、俺が?
「ああ、そうか……風か……そうかそうか……」
風の刃が俺を封じるロープを切り裂く。そのまま特に集中することも無く、風に俺の体を持ち上げさせる。言葉にし辛いけど……風は自然で、常に俺達と共にある。風を生み出すなんてイメージしなくても良い。傍にいる風に動いてもらえば良いのか。
「おおお……コツを掴んだんだな」
「凄いな……風を操れるって事がこんなに凄い事だなんて!」
風で宙返りを決め、ふんわりと地面に着地する。けれど、ライオン3頭は獣人の姿に戻らず、俺に向かって唸り始める。レオの方を見ると、俺の方をニッコリと見ている。
「さあ、次は戦闘中にも上手く扱えるようになろうな?この3頭、連携すればオレより厄介だぞ?」
「ちょっ、休憩とかは!?」
駄目だ、もうすでに3頭とも飛び掛かってきてる。一旦、下がってどうにかしないと!
「素手と風魔法だけで頑張れよ?」
「いや、せめて最初はもう少し難易度低くさぁ! うわっ、こいつらも風属性使って、うわああああああ!?」
本日の省かれシーン
レイジ:飛べなっ!? 牙、危ねっ!?甘噛み止めろっ!痛い痛いイダダダダダダ!?
レオ :暇だなぁ……俺も参加するか!
レイジ:お前!? これだけでもキツイのに、おわあああああああ!