風になるっ!
鹿と馬……まさかあんなに美味しいとは……今回の襲撃が収まったら、こっそり交易とか出来ないかな? それ程に未知の肉は素晴らしかった……是非、俺の領地の香辛料と組み合わせて焼くのも良いけど、煮込みで……
「レイジ様、聞いてたか?」
「え……いや、ちょっと……」
鹿と馬なんて食べきれるのかと思ったけれど……獣人3人に魔力持ちが1人いれば、あっさりと無くなってしまった。という事で、先ほどレオと戦った森へと来ていた。目的は勿論、レオがやっていたという練習をするためだ。って、何の練習なんだ? 魔法か? それとも森での戦術?
「全く……今からやるのはオレが昔からやってた風属性の魔法を上手く扱う為の練習だ。まあレイジ様のは魔法じゃねえけど……イメージはそこまで変わんないだろ」
今回やることは魔法か……正直言って気軽に使える物じゃないからやる気でないんだけど。国によって扱える魔法の属性変わるし……
「レオ姐さんが様付けしてるよ。面白いねえ」
「大分丸くなったっすねー」
「うんうん、昔だったらもうレイジさん、ぶん殴られてますね」
「うるせえぞ、お前ら!」
外野の獣人3人に、半獣化しながら怒鳴りつけるレオ。何でアイツらはここで俺を見ているんだろうか? そしてレオは半獣化をポンポン使って良いのか?
「ったく……レイジ様は風属性が4属性では難しいって知ってるか?」
「聞いた事は無かったけど、火と雷よりも難しかったな……火や雷と違って、イメージが難しいっていうか」
前も思ったけど、風ってどうイメージすれば良いのかが分からないんだよな。竜巻なら簡単にイメージ出来るんだけど、俺が使いたい一陣の風を真っ直ぐに撃ち出したいというか、一方向にのみ風を吹かせたいというか……自分で言ってて混乱してきた。
「ああ、風属性はイメージが難しい。だからまずは色付きで練習するのも良いな」
レオが人差し指を立て、その先に小さな黄緑色の風を纏める。指先を動かすと、風はふよふよと踊っていく。そうか……無理に透明にしなくても色を付けて自分のイメージを明確にすれば良いのか。
「でも、それじゃ風属性の利点が活かせない」
「風属性の……利点?」
レオの風が透き通っていく。そのまま、レオが指を近くの木に向けると、幹に鋭く深い傷が刻み込まれた。なるほど……透明な風は不可視の攻撃になるのか……これは大きな利点だ。ヘンジの考えていた事も実現できるかもしれない。
「さあ、レイジ様……風になってもらうぜ?」
レオの言葉に、3頭のメスのライオンが現れ、大きく吼える。あれ……まさか……? レオもなんかロープを握って……まさか……!? 咄嗟に判断し、吹き荒れる右脚で体を持ち上げ……
「ふぎゃっ!?」
な、なんだ……!? 上から凄い風がっ! 体が地面に押し潰される……!?
「風にはこういう使い方もあるんだぜ……」
地面に押し付けられる俺に、レオがロープを巻き付けていく。ううっ……ショウじゃないのに、未来が視えるよ……
本日の省かれシーン
テーラ :絶対、レオ姐さんって惚れてるよねえ?
ライ :間違いないっす。さっきなんて料理はりきってたっすよ
シシリー:ちょっと誤魔化せてないね……
レオ :うるせええええええ!