自覚
吹き荒れる右脚による癒しの風で痛みを取り除く。完全には治せなかったけど……少しよろける程度には痛みは治まったし、呼吸も正常に戻った。レオの肩を借りながら、よろめきつつも立ち上がる。
「悪いな、つい熱くなっちまった」
「いやいや、おかげで何というか……気分が晴れた。ありがとう」
こんな隠し玉があったなんて、やっぱレオも凄いな……既にレオは半獣化とやらを解き、元の姿に戻っていた。頭の獣耳以外は残っていない。あの姿、後でもう一度見せてくれないかな。
「いやあ……初めて屋敷来た時に比べれば、戦えるようになったなぁ」
「あの時は手足も無かったからな……どうだ、俺は強くなれたか?」
「うーん……中の下って感じか? 確かにその右脚には驚かされるけど、出来そうな事が分かればそれまでだな。空を飛ぶのはまだまだ慣れてなさそうだし、機動力が低すぎる」
うっ、確かに……風で空を飛ぶ事に関しては、移動する風の感覚が掴めてない。強過ぎたら、多分ブッ飛ばされて墜落するのがオチだ……
「後、風を操る時に意識を集中させ過ぎだな。もう少し気軽に使えねーと、実戦では使えないな」
うぐっ、……レオの言う通りだ。意識を集中させ過ぎて、レオの動きについて行く事が出来なかった。実戦で使えば、死ぬ可能性もある……こっちもなんというか、感覚が足りない。
「後、戦いながら回復できないとなぁ……最低限、相手の攻撃を躱しながら自分の回復くらいは出来るようにならないと……」
そうだよな……吹き荒れる右脚の最大の特性は受けるとか風を操れるんじゃなくて、治癒が出来るって事だもんな。ゼピュロスの言う通り、変に考えずに治療を出来るようにならなきゃかな……
「とても、参考に……なったよ、うん」
「そう凹むなよ……あの太陽の腕とやらと違って、随分とトリッキーな武器なんだからな」
何というか……風って炎や雷と違って、イメージし辛いんだよな……普通なら目に見えないし、台風とかの目視できるレベルの強風にすると、上手く制御出来るとも思えないし。
「俺……ゼピュロスの力になれるかな」
「大丈夫さ。レイジ様なら問題ない。お前は本番に強い! ヘルからオレを守ってくれたのはレイジ様だろ?」
あの時は無我夢中だったし、剣もハンドガンもあったからなぁ……途中でトールが来てくれなかったら危なかったし……まず、俺だけの力じゃなかったし……
「あー……とにかく、飯にするか。そしたら稽古つけてやるよ。オレが昔やってた練習方法だ」
レオがやってた練習方法か。フェルは最初から使えてしまうから、練習方法とか聞けなくて困ってたし……ちょっとやってみようか。
本日の省かれシーン
レオ :…………
レイジ:…………
レオ :(言いすぎちまったかな……)
レイジ:(胸が……当たってる……)