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異世界の家

 ピグマから色々と譲らせた俺は、フェルに車椅子を押してもらってユリウス王に教えてもらったピグマの屋敷を訪れた。

 城から徒歩20分程度、俺とフェルの2人には大きすぎる。ユリウス王曰く、ピグマは従者に家事を任せて、1人で暮らしていたそうだ。家族とかが居たのなら、追い出すつもりだったが居ないなら考える必要はない。むしろ問題はピグマの従者だ。譲らせた財産は相当な金額だった。性格は悪かったが、金稼ぎに関しての手腕は優秀な方だった。そんな男が金で雇った従者。まともな性格なら良いんだけど。


「フェル、入ろう」


「行きましょう」


 門から屋敷の玄関へと向かっていく。周りを見渡してみると、石畳の一本道以外は芝の庭くらいのものだ。街の中央に位置しているし、このくらいの広さなら何もないのが丁度いい。有ってもこの辺を1人では歩いたり出来ないし。

 フェルが進路を変更し、芝の上を進み始める。指示を出した覚えがない俺はフェルの顔を見る。


「レイジ様、発言する暇が無かったのですが、私、レイジ様の心を読むことが出来ますので、口に出さなくても大丈夫ですよ」


「うえっ!?」


「私に負い目を感じることもありません。レイジ様の役に立つ事こそが私の幸せ。レイジ様が頼ってくださるならば、どんな命令も達成して見せますので、私を使うなど考えず、私に頼ってください。それこそが、私の人生なのですから」


 フェルの言葉に、視界が歪んでいく。滴が零れ落ちるとフェルはそれを拭ってくれる。後頭部に柔らかいものが当たる。首に腕が回され、フェルに優しく抱きしめられる。

 とても、落ち着く。暖かくて、柔らかくて、幸せな気持ちに包まれていく。


「……います、レイジ様」


「え、なんだって?」


「いいえ、なんでもありません」


 フェルは俺から離れると、車椅子を屋敷の方へ方向転換させる。心を読まれる……って事は今も読まれてるわけで、なんというか、恥ずかしい。多分、有事以外は心を読むなという事も出来るんだろうけど、命令のタイムラグが無いってのはフェルにも良い事のはずだ。



 屋敷に入り、車椅子や靴のまま上がった。玄関に段差が無いなんて見慣れないな。フェルが適当に進んでいくと、人影が見える。

 フェルに警戒してもらうべきか……?フェルが俺の目の前にナイフを見せる。なるほど、本当に心を読んでくれているのか。だが、まだだ……後手に回れ。


「フンフフ~ン……ん? どちら様でしょうか?」


 清掃をしていたメイドがこちらに気付いた。驚いてはいるが、怯えてはいない。フェルはちゃんとナイフを隠したようだ。


「俺の名はレイジ。このピグマの屋敷を譲り受けた者だ。ここの従者を取りまとめている者はいるか?」


「え……? へ……?」


 伝えた事が急すぎてなのか、メイドはポケっとしている。かと思いきや、メイドがこちらへ飛び掛かる。手に持っていた箒から刃に変わっている。仕込み刀か……フェル、殺すなよ。


「了解です」


 フェルがナイフで、正面から受け止める。メイドは驚き、後ろに飛び退いた。暖かい家になるはずだったのに、めんどくさいダンジョンになりやがった。

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