ヴァルトの現状
結局11時からかよ……!(完全な私情)
ヘンジが立ち上がり、ホワイトボードを持ってくる。まず大きく書かれたのは、俺達が居る《亜人の国ヴァルト》。そして聞いた事ない《魔の国オルクス》だった。とは言え、こんな状況なら攻めてきている魔王軍の国……なんだろうな。
「まずはここは亜人の国ヴァルト、ハインリヒからは馬車を使って5日程で辿り着ける場所だね。私やレイジはゼピュロス様に連れて来られたんだけど、レオはどうやって来たんだい?」
「オレは獣人と人間のクォーターなんでな、獣化……ようするに動物の姿になって走ってきたんだ。魔力で身体強化をしなが全速力で来たんだ。オレはライオンの血を引いてるからな……直ぐに来れたぜ?」
「なるほど、結界もすり抜けたんだね」
結界……? そんな物があるのか。俺の場合は気絶してたから気が付かなかったけど……多分なんかあったんだろ。
「そんなヴァルトが魔の国オルクスに襲撃されている。私は聞かされているけれど、その目的としては……」
「ヴァルトの宝物……とか? そんなの有るか分からないけどさ」
「そうですね……あっ、アレですか? ヴァルトの結界を産み出してる結界の宝珠!」
「だろうね。オルクスが攻め込んでくる理由は結界の宝珠だろう。これによってヴァルトはオルクスの進行の3割を防いでる。しかし現在このヴァルトは窮地に追い込まれている」
結界の宝珠……名前からして凄い結界が作れるようになる珠なんだろうな。多分フェルの方が凄いけど。
それはそれとして、なんらかの結界があるのに、窮地に追い込まれてるのは……
「1つは結界をすり抜ける事が出来る奴らだね。人を払う結界だから、人間の兵やゾンビ兵と言った人の兵士は結界が防いでいるが、獣の魔物やオルクスの亜人、ダークエルフや吸血鬼はすり抜けてくる」
人間か……今回は戦う必要が無いけれど、もしかしたら俺も戦う時があるのかな……そうじゃなくても人型の敵が来るんだよな。というか、今までの戦いは相手を無力化させればよかったけど……場合によってはこの手で殺さなきゃいけない……とか?
「もう1つは火属性の敵が多すぎる。ヴァルトの大半は風属性の人物が多いうえに、水属性の人物は居ない。主戦力のゼピュロス様も風属性だしね、神様でもキツいらしい」
「やっぱゼピュロス様も前線に出てんだな。それらしき痕跡が残ってた」
「この状況を打破する鍵……それはレイジ! 君なんだよっ!」
ヘンジが大きな声でいきなり俺を指差してくる。今の話の中で、俺がいる事で変化が起きそうな要素なんて無かったんだけど……
「おいおい……浮かない顔をしてるけど、まさか自分がいたって何も変わらないんじゃ……とか思ってないだろうね?」
「なんで的確に心を読んでくるんだ……」
「全く、君は自分がこのシェーンで凄い存在だって気付いていないのかい?」
俺がこの世界で凄い存在? 彼女は何を言っているんだ……? 俺は別に魔法も使えないし、剣技が凄いわけじゃない。どちらかと言えば周りにいる奴らの方が凄い存在って感じがする。
「風の右脚……レイジさん! もしかして、火の神様に右腕、雷の神様に左脚、水の神様に左腕を貰ったりしなかったですか?」
「水はまだだけど……シシリーさんがなんでその事を?」
「っ!? シシリー、それって……!?」
シシリーさんもレオも何かに気付いてるみたいだけど……どういう事だ?
「レイジ、君はこの世界の伝説の勇者に割と近付いて行ってるんだよね!」
本日の省かれシーン
レイジ:(け、結界……?)
レオ :ん? ああ、ヴァルトは人だけじゃ辿りつけないんだよ(小声)
レイジ:ああ、そういう事か。サンキュー(小声)