再会 レイジ編
やっと合流出来た……
本日の治療が終わり、俺とヘンジはお茶会に突入していた。お供は紅茶とヴァルト特産の小粒のベリー系の果実だ。爽やかな酸味の中に甘みが隠れていて美味しい。
さっきまでの事は……記憶にございません。泣いてない、泣いてないってば!
「吹き荒れる右脚ねぇ……」
ヘンジは俺の右脚をジッと見つめている。あっ、そうか……これってヘンジが用意してくれた義足なんだよな。自然な流れでゼピュロスの力を借りちまったけど、これは怪我人の為の義足なんだよな。
「これって患者さんの為の義足だもんなぁ……」
「ああっ、そういう事じゃなくてね? 君に作った義手と義足は魔法要素を排除してるって言ったじゃない? それって私も昔、魔法の付与に挑戦して大失敗したからなんだけどさ。神様とは言え、あっさり成功させられると……ねぇ?」
うーん……何となく、分かるような……分からないような……
「一応、未だに挑戦してはいるんだけど……まだまだ電池程度が精一杯だね」
電池程度って……シェーンで生まれて、地球の現代レベルの発明を成功してる時点で凄い事なんだけど……ヘンジなら信じてくれそうだけど、地球の事話すのどうなんだろ? ショウはカグヤに話してたけど……あの2人は夫婦とかだし……
「アオォォォォォォオン!」
突然、国の何処かからサイレンのような音が聞こえてくる。思わず体が反応し、縮こまってしまう。
ヘンジが何事も無く紅茶を飲んでいるから、ヴァルトでは普通の事なんだろうか……心臓に悪いな。
「えっと……ヘンジ、これは?」
「別にイヌ科かネコ科の電話みたいなものだよ。驚く事でもないさ。そんな事より。もっと吹き荒れる右脚での君の発想とか聞かせてよ……!」
「やっぱそういう話になるんだ……」
「無いのかい?」
「無いとは言ってない」
静かに立ち上がり、吹き荒れる右脚に意識を集中させる。イメージするのは左足の甲の上から風が渦巻いていく。その風は小さな竜巻となり、俺の体を通って右手の上に乗った。
「おお……小さい竜巻だ。でも、これくらいなら魔法にあるよ?」
「正直に言うと、太陽の腕以外はあまり出来る事がないんだ。太陽光弾や太陽烈弾って言うのは、火そのものじゃなくて闘気の生成量でゴリ押してるだけなんだよな……」
というか、火や雷は属性も上手く噛み合って攻撃に使えたけど……風って何も思いつかないし……扇風機?
「そうだね……私だったら上手く水分とかも操って、光の屈折率とか弄るんだけど……そんな細かい調整できないよね?」
「ううーん……水分は水属性だからな……せめてヘンジが作ってくれたハンドガンがあれば何とか……」
「なら、シンプルに宙に浮くとか? 案外、魔法だけじゃ飛べないし」
宙に浮くのか……まずは右足から足元に風を発生させる。風は足元で渦を巻いていき……
「渦を巻くんじゃなくて、体を押し上げるイメージの方が良いんじゃないのかな?」
なるほど、風で直接的に体を持ち上げてしまうのか。あんまり風圧を上げ過ぎても体が動かなくなりそうだし……ギリギリの風圧で……
「お? ……おお!」
なんとか体が持ち上がり、地面の感触が消える。視界がほんの少しだけ高くなり、髪の毛が逆立っていく。なんか、初めて魔法使ってるって実感できるなぁ。今まではそんな風に考える余裕なかったし、これは厳密には魔法じゃないけど。
「ここか!?」
部屋に誰かが飛び込んだ声が聞こえた気がする。風の力で振り向くとそこには……
「あれ、レオ?」
汗だくのレオが肩で息をしていた。俺のせいじゃないけど……心配かけて申し訳ないな。
本日の省かれシーン
レ:風ねぇ……そういや再生も出来るんだよな
長考中……
レ:自爆が気軽に出来る?
ヘ:この場にメイドちゃん居たら怒られるよー