準備完了 レイジ編
義手と義足があっさりと手に入り、接続してくれる技術者も居てくれたから助かったけど……まさか魔王軍と戦わされるために攫われたなんて。
(攫ッタトハ人聞キガ悪リィ。チョット、連レテキタダケダロ?)
「怪我で動けない人間を有無を言わさず……あれ?」
発言を訂正してやろうと、勢いよく立ち上がって気付いた。体が痛くない……? 筋肉痛は割と簡単に取れるけど、神経の損傷による痛みが消えてる……? そんな……神経の損傷なんて神レベルの治癒系魔法じゃなきゃ治せないってフェルが……まさか!?
(ハッハー! ヤット気付イタカ! 俺ノ名前ハ、ゼピュロス! 風ノ守護神獣デ特性ハ治癒ダゼ。俺ニ合ワネエノハ分カッテルガナ!)
こ、この明らかな無脊椎生物が風の守護神獣!? まさか、風の守護獣が……むしろ守護神虫か? というか、特性……? 特性なんて初めて聞いたぞ……?
(ナンダヨ、知ラネーノカヨ? オ前サッキ、俺達ノ事ヲ学ンデタジャネーカ?)
「学び終わる前にお前がここに連れてきたんだろうが!?」
(ソウ怒ンナッテ。特性ッテノハ簡単ナ事デヨ。俺ハ治癒ガ得意ッテ事ダ。天照ノ野郎ハ攻撃。トールノ奴ハ防御。アプサラスガ確カ……チッ、忘レチマッタナ!)
「水の守護神アプサラスだね? その水は触れるだけで、毒となり薬となる。生きていようが死んでいようが、実態が有ろうが無かろうが。関係なく状態に変化を与える。アプサラスの特性は変化……だったはずさ」
(ソレダソレダ。性格ハポワポワシテンノニ、能力ハ面倒ナンダヨ。俺ノ特性デモ中和出来ルカ怪シイゼ)
特性……か。確かに天照の太陽の腕は攻撃に特化したイメージが、怒涛の勢いで流れ込んできた。トールの時は守り方、形成できるバリアの特性が丁寧に流れ込んでいたな……
その特性を2つとも攻撃的に使ったのが俺だけど、流石に借りる事が出来たとしても、治癒を攻撃になんて使えるだろうか……?
(別ニ考エル必要ハ無ェヨ。俺ガオ前にヤッテ欲シイノハ、国ヲ守ル事ダカラナ)
「国を……守る?」
(オウヨ。俺ハ魔王軍ト遣リ合イテエンダガ、俺ダケジャ限界ガアル。負傷者モ出ルシ、ソイツラ庇イナガラジャ俺モ最後ハ撤退スルシカ無ェ。俺ヲ無視シテ国ヲ攻メテクル奴ラモ居ル。ッテ事ダカラ、オ前ノ……右脚ダナ)
ゼピュロスがそう言うと、俺の右脚が優しく暖かな翠の風に包まれていく。光沢を出しながら黄緑の風の文様が鎧を駆け抜けている。凄いな……これが風の守護神獣の力。流れ込んでくるイメージは、闘気の生成はやはり太陽の腕に負けているが、風を操れて、損傷であるならば生き物でも無生物でも治す事が出来るらしい。
(基本、オ前ヲ戦ワセルツモリハ無ェ。次ノ襲撃マデハマダ2~3日アル。大変ダト思ウガ、ソノ脚……アー…………吹き荒れる右脚ダナ! ソレヲ扱エルヨウニシテクレ。怪我人ハソコノ変態ニ任セテアッカラナ)
「変態ってそんな……照れるなぁ。でも……うん、今はレイジの力が必要だ」
「分かった……」
俺が力になれるかは分からないけど……戦闘以外で役に立てるなら、俺1人でも問題ないだろ。
本日の省かれシーン
レ:どうしてそんな読みにくい喋り方なんだ?
風:そりゃお前、虫の口で流暢に喋れる訳が無ぇだろ(※特別翻訳)