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手も足も出ない報復

報復と言ってますが、そこまで酷いことはしません。

 ユリウス王の言葉に俺はニヤリと笑ってしまう。

 先ほど、俺はピグマに殺されかけた。まだ魔法も知らない俺は、あの程度の魔法でだって死ぬかもしれなかった。だったら、ピグマへの処罰を他人に任せたくはない。


「それでしたら、ピグマへの処罰の決定権を求めます」


「……分かった。レイジ君にミハエルの護衛を頼もう。ピグマ男爵の牢へ連れて行こう。念のため、私も同行するが構わないね?」


「勿論です」


 こうして、俺はフェルと共にミハエルの護衛へと就けた。

 さて、ピグマへの報復の始まりだ……!



 城の地下。蠟燭の炎が簡易的に配置された道を、俺とフェル、ユリウス王に松明を持った一般兵士と進んでいる。ミハエルとマリアちゃんには、クリスティーナ王妃と待機してもらっている。マリアちゃんをピグマと再開させるのは可哀想だし、ミハエルはクリスティーナ王妃に呼び出されていた。鼻息を荒くしていたから、アレな話だろうけど……どうにか誤解を解いてほしい。

 牢は規則正しく配置されている。思っていたよりは牢の中が綺麗なのは捕虜を捕まえた時の配慮か何かだろう。


「こちらがピグマ男爵の牢となっております」


 案内をしていた兵士が動物園の豚の檻の前……ゲフンゲフン、ピグマの牢の前で止まる。ピグマは俺を見て怒りに満ちた表情でこちらを睨んでいたが、ユリウス王の前では大人しくしているだろう。


「さて、レイジ君。ピグマ男爵の処分だが、無論、処刑は出来ない。しかしそれ以外はどんな罰を科しても構わない」


 予想は出来ていたけど、殺すことは出来ないか。それは問題ではない。しかし、俺を狙ったことを後悔させるような処罰にして、ついでに俺の異世界の住居と金を解決させてもらおうか。


「ありがとうございます、ユリウス王。さて、ピグマ男爵? 貴方今の立場、理解できないほど愚かでは無いでしょう?」


「………………」


 だんまり……か。立場を理解して大人しくしているのか、それとも、罵倒でも考えているのか。別にコイツがどんな反応をしようが処罰は決まっている。


「俺からピグマ男爵への処罰は男爵としての地位、財産、領地、俺にそのまま譲ってもらいます」


「ブヒっ!? そ、そんなこと許されるわけがないブヒ!」


 流石に聞き流せないことに、ピグマが悲鳴を上げる。しかし、俺は断られても構わない。何故なら……


「それなら、ピグマ男爵のストーカー行為を世間に公表して、目撃証言や噂から事実にランクアップさせるだけです。無難に懲役数か月にしますけど、出てきた時、世間の目は厳しいと思いますけどね……?」


 こっちは、ピグマの貴族の地位をめちゃめちゃに出来る情報(ちから)がある。それに牢から出たところをフェルに殺してもらう。そうすれば、ユリウス王に頼んでその領地をいただくだけだ。


「ブヒッ!?そ、それは……」


「ピグマ男爵、私も前者をお勧めしよう。王にあるまじき発言かもしれんが、貴様が犯した罪に相応しい罰だ」


 ユリウス王は俺の意見を後押ししてくれる。当たり前だろう、自分の息子と娘が危険に晒されて、怒らない親はいない。さらに細かい公表はされていないが、ユリウスやマリアちゃんと相席している男を撃ったという情報位は流れている。既に、世間の間では他国からの暗殺じゃないか、だの王国への反旗を翻す者が国内に居るのではないか、という噂が流れ始めている。

 俺もこんなに大事になるとは思ってなかった。


「こっちは殺されかけたんです……それくらい、こっちはアンタを恨んでんだよ !プラスで懲役1年付けてやる! 愚かな自分の単細胞な脳みそ呪ってろ!」


 ユリウス王の前にも関わらず、俺はピグマに怒鳴ってしまった。俺だって数時間前まで、どこにでも居るような普通の高校生だったんだ。読んできた主人公のように冷静でいられないし、怒らずに許したりは出来ない、だから報復する。手足のを奪われた俺のように、貴族としての手足を奪い取ってやる。

 俺の怒りを代弁するかのようにフェルが鉄柵を思いっきり蹴りつける。その大きな音に俺は我に返る。あれ?鉄柵歪んでる?


「ピギィィィィィィィィイイ!?」


「その鉄柵……ドラゴンでも傷つけれない特注品なんだが……」


「フ、フェル……?」


 フェルは俺の正面に立ち、腰を抜かしたピグマを見下ろした。ユリウス王は鉄柵の歪みに呆然としている、請求、俺に来ないよね……?


「レイジ様はとある事情で相当傷心しておられるのだ……! 貴様、これ以上、レイジ様の心労を増やしてみろ?」


 フェルが言葉を区切る。次の瞬間には魔力ではないどす黒い何かが、フェルの体は覆っていた


「その命、終わることも始まることも無いと思え……!」


「ブヒィ!? お、お譲りいたしますぅぅぅぅぅ!」


 フェルの言葉に、ピグマは失禁する。鼻を摘まめないのが辛い。フェルはピグマへの説得(きょうはく)を終えると、俺の車椅子の後ろへと戻る。

 何はともあれ、フェルの圧力にピグマが折れ、住居と金と異世界らしい生活が手に入ったのだった。

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