守護神獣を少しでも知ろう
こっそりと掛けていた銀縁の眼鏡をお供に、フェルは持ってきた本をパラパラと捲っていく。フェルの事だから、ちゃんと読んでいるのだろう……あっ、もう2冊目に入った。
守護神獣……俺が会った事が有るのは、火の守護神獣天照。担当の地域はヤパン。雷の守護神獣トール。担当地域はハインリヒ。残りの2体は名前だけ、ゼピュロスとアプサラス……だったかな?
「そのようですね」
「もう読み終わったのか?」
「守護神獣の項目についてで絞りましたので」
フェルが本をぱたんと音を立てて閉じ、静かにベッドの上に置く。知的な感じに眼鏡を整えると、フェルは解説を始める。
「まず、守護神獣が生まれた理由は勇者が負けた時の為の保険……だそうです」
「保険ねえ……」
「国を守護する神獣ですが、その国でしか活動できない……という訳では無いようですね」
確かに天照はヤパンの守護神獣だけど、ハインリヒの俺の領地付近まで訪れていた……そう言えば、俺は神様の力を貰う事は出来ないのに、借りるという形でヤパンでは太陽の腕、ハインリヒでは雷光の脚を使わせてもらったのは……どういう事だ?
「どうやら守護神獣は自身が守護する土地では、他者に力を一時的に扱えるようにする事が可能だそうです。推測ですがレイジ様は神からを貰う、つまり神の力の所有権を得る事が不可能なのだと思われます。ですので力を借りるというのは、所有権を守護神獣に預けたまま力を一時的に扱っているという事ではないかと」
「つまり所有権さえ受け取らなければ神の力を使えるんだな」
「推測が正しければですが……太陽の剣も私が所有しているから、レイジ様に一時的にお貸しする事が出来たのだと思います」
だからあの時、太陽の剣も使う事が出来たのか……ヤパンの中なら疑似的に太陽の腕を再現できるのは、って天照に言えば使わせてもらえる……フェルに睨まれた。
怖かったけど……ちょっとくらいは戦うのも悪くないのに……世界の命運とかは勘弁だけど。
「脱線してしまいましたね。説明を再会します。守護神獣は火・水・雷・風の4柱となっています。先ほどお考えになっていた通り、レイジ様がお会いになったのは火の天照様と雷のトール様です」
「残りの2柱は?」
「水はアプサラス様。担当の地域は海の国ゼメル。風はゼピュロス様。担当地域は森にある亜人の国ヴァルトのようです」
「会ってみたいなぁ……」
「レイジ様の事ですから、変な事に巻き込まれるに決まっています。せめて神経が治ってから……」
(悪イナ、俺ノ国モ時間ガネェ。怪我ハサセネェカラ、借リテクゼ)
窓は開いていないと言うのに、どこからか風が吹き荒れる。俺の体が固く力強い、昆虫の脚らしきものに掴まれる。
「レイジ様!?」
「……優しくしてね」
(シャッシャッシャッシャ! 覚悟出来テンナァ! ンジャ、アバヨ!)
声は頼れる兄貴タイプな声だけど……頭に響いてくる感じの声……今度は風かなぁ……せめて義手と義足を持っていきたいな……
本日の省かれシーン
レ:最近攫われ属性が……
?:助ケラレル才能ノ弊害ダゼ?
レ:マジか!?