どれだけ辛くても……!
まだ今日中! まだ今日中ですから!
俺のハンドガンの弾は3種類ある。1つは通常の弾丸。ケツを叩いて火薬に着火。弾頭を撃ち出して攻撃する地球にもある普通の弾だ。もう1つは魔法弾。火薬の着火までは同じだが、撃ち出されるのは通常の弾頭ではなく、魔法を封じ込めた特殊弾頭を撃ち出す。最後のは説明した通り、自分に撃ち込んで効果を発揮する弾丸。
これらの弾丸は火薬だけ着火できれば、ハンドガンの本体が無くても撃ち出すことが出来る。だから……
「そらっ!」
光属性の弾丸が詰まった弾倉を、女に向かって投げつける。闇の弾丸で撃ち落とされるが、問題無し。左足に電気を溜めて大きく跳躍し、相手との距離を詰める。
今の義手と義足はフェルの破壊されない性質は付与されていないから、格闘が出来なかった……だけど!
「これは……!? くっ!」
稲妻の蹴りを、女は焦った表情で避けた。振るわれた左足には雷のバリアが纏われている。バリアというのは、何も身を護るだけではない。どんな攻撃でも受け止める盾は、どんな防御にも壊れずに通用する武器となってくれる筈だ!
(なんて発想……バリアを纏うなんて……)
「こういう事を平気で思いつくから、異世界の人間は嫌いなんだ!」
闇の魔力を纏った拳は、俺の頬を目に見える速さで掠めていく。目に見えないような速さではない。久々の身体強化のおかげで、よく見える……
雷光の脚なら、技のバリエーションが増やせる! 太陽の腕では出来なかった、近接の格闘が!
「電光衝撃!」
相手の腹を左膝でぶち抜く。膝がぶつかる瞬間にバリアを纏わせ、戦闘人形のように電気を相手の体に流し込むっ!
このバリアに、ヘンジの戦闘人形を参考にした近接格闘! 闘気が持つまで……っ!
「うっ……ぐっ……!」
体の内側が……人工魔核が、もう切れたのか……体の内側が針で刺されているような…………
突然の痛みに硬直していると、女の掌が腹に当てられる。ヤバイ! バリアの形成を……!
「遅いわ」
「ぐぁっ!」
掌から闇の魔力で衝撃波が発せられ、俺の体は大きく吹き飛ぶ。体が動かせず、背中から地面に叩き付けられる。
(レイジさんっ!)
「邪魔よ!」
(ああっ!)
俺を庇い、女の前にトールが立ちはだかるが一瞬で薙ぎ払われる。動けない体に膝が減り込み、体の中の何かが弾けた感覚。堪え切れずに口から血が噴き出し、血の味が口の中に充満していく。
女が俺を見下し、ニヤリと笑う……これで勝った気になってるのかよ。
「下らない意地で死ぬ気分はどうかしら?」
「まだ……死んでない……!」
「いいえ、ここで終わるの。しっかりと殺してあげ……っ!?」
気付かれたか……でも遅い……俺はいつだってこうしてきた。今回だって耐えきってみせる。
電気のエネルギーの暴走……例えコイツだって、無事では済ませない。炎と違って体にどんな影響が出るか分からないけど……やってやる!
「その必要はありません」
「え……? きゃあっ!?」
フェルの声が聞こえ、悲鳴と共に蹴り倒される。そうか……間に合ったのか。
「俺の下らない意地でも……役に立ったんだな」
「下らない意地になどではありません。あれは立派な戦士の意地でしたぞ、レイジ様!」
ネルガの肩を借りて、痛む体を無理矢理に立ち上がらせる。ここからだ……俺に助けられる才能とやらが発動した、ここから……!
「かかってこいよ……俺はまだ……戦える!」
「うふふ……そうねぇ……」
口の端から流れる血を舐めながら、女は妖艶に笑う。ネルガがいる、フェルがいる……なら、俺はまだまだ戦える……!
「いいわ、今日はここで終わりにしてあげる。ただでさえ面倒なメイドと勇者、ついでに守護神獣が貴方に指揮されるのは……私でも無事じゃ済まなそうだし」
女が指を鳴らすと、何処かへと転移していく。
終わった……俺自身は負けたけど……全体的に見れば、勝ちで良いだろ!