所詮は使い魔……2分も持たなかったか
レイジ様の事も心配ですが、今は指示通りにネルガと協力して使い魔をどうにかするのが先決。太陽の剣を構え、使い魔の動きを待ちますが……どうかしたのでしょうか? ネルガの方を不敵な笑みを浮かべながら睨んでいますが、お知り合いなのでしょうか。
ネルガとは言葉でしか連携出来ません……魔力完全無効では味方の魔法も無効化されるのが厄介ですね。
「ギヒヒ! 久しぶりだな、ネルガ・アノルド!」
「む? その声は……?」
やはり、お知合い……でしたら、話している隙を突いて仕留める。
不意打ちが卑怯と罵られようと、主人を待たせるなど従者失格! 闘気解放、身体強化、刀身に闘気を纏わせ……これでいつでも、殺せる。
「…………うーむ、誰でしたかな?」
ネルガの声に、私もバルトロの体を乗っ取っている使い魔もズッコケる。身体強化が効いてる分、私の体は床に頭から減り込んだ。
失敗した……いつもこうだ。ネルガが絡むと、ペースが乱されて私らしくない行動をとってしまう。英雄とやらのこの空気は苦手だ。
「テ、テメエ! 俺の事を覚えてないのか!? 俺だよ、俺!」
「全く分かりませんな! 貴様が体を乗っ取っているバルトロは、私の友人だったのだがね」
あ、あれ? 私がコケたのが流されてる……? 身体強化や闘気を開放したのがバレてないなら……良しとしましょう。
再び構え直し、隙を伺っておく。ネルガ様が一瞬だけ、こちらを見た気がします……分かりました、隙を見て斬りかかれという事ですね。
「俺はヴァーハ。ネルガ・アノルド! テメエが魔王城に来た時に、門番を務めてたんだよ! 覚えてるだろ!?」
「覚えてませんな……拳を交えれば、思い出すかもしれません!」
ネルガが駆け出し、使い魔の前に現れました。激しいネルガのラッシュを使い魔は捌いていきます。
魔王城の門番というのは、伊達では無さそうですね。しかし……この闘気の剣は受けられるでしょうか……!
「行きます……光となりて剣を纏え!」
太陽の剣を纏う闘気が、白き光属性へと変化していく。そのまま、足元に転移門を展開する。相手の背後に転移門を設置し、するりと穴へ落ちるように転移する。
「気付いてないとでも思ったか? ギヒヒ!」
使い魔の影から、腕のような何かが私の目の前に現れる。しかし、問題は無い。同じように私の影から、影の腕を生やして抑えつける。
「ギヒ!? お前も影が扱えるのか!? この体を斬れば、バルトロも……」
「ご安心ください、私はそんな男に興味はありませんので」
使い魔の言葉はどうでもいい。他人の事など気にする暇も要らない。全ては1秒でも早く、レイジ様の所へ駆けつける為。
……と言っても、レイジ様には誰も殺すなと言われていますので……不本意ながら、ヴァーハを斬りながらバルトロの体を再生させてはいるのですが。
「上手くいきましたな、フェル殿!」
「油断しないでください。今のはバルトロからヴァーハを引きずり出しただけ、ここからが……」
「ギヒ……ギヒヒ。それはねーぜ。他国での俺は雑魚だからな……この程度の足止めで、限界なのさ」
倒れたバルトロから、影がハットを被った人間の影にギョロリと目が生えた何かになって出てきた。体の末端がゆらゆらと揺れて、姿が定まっていない。
「それより、あの若い兄ちゃんとメイドちゃんがヤバいぜ? アイツらが相手してんの……闇の守護神だからなぁ……」
ヴァーハは意味深な言葉を残して、その姿をあっさりと消した。そんな、まさか……レイジ様は、どうなって!?
「フェル殿、アレを!」
ネルガが指を指したのは透明な壁の向こう側。レオは気絶し、レイジ様があの女に……いや、ヴァーハの言葉を信じるのであれば、闇の守護神ヘルを相手に……魔力を宿して戦っている!?
あのレイジ様が、魔力を使って戦っている? そんなの、無茶をしているに決まっている。急いで、レイジ様をお助けしなければ!
本日の省かれシーン
ヴァ:それより、あの若い兄ちゃんとメイドちゃんが…………
フェ:(私も若いのですが……)