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フェルが王子の護衛!?

 涙が、零れていく。暖かい滴が頬を伝っていった。視界はグニャグニャに歪んで、涙は止まらない。


「ミハエルお兄様がレイジさんを泣かせました!」


「えっ!? 俺のせいになるの!?」


 涙で狼狽えるミハエルが見れない。ミハエルの戸惑う間抜け面を拝むために、目を閉じて肩で無理にでも涙を拭おうと首を近付ける。あと少しが届かない俺の目元を、誰かがハンカチで拭ってくれる。

 目を開けば、ユリウス王が俺の目元をハンカチを当てていた。フェルだと思っていたので、少し目を見開いてしまう。


「レイジ君……王族というのは、孤独な者が多い。君が良ければ、これからミハエルの友人として気軽に接してやって欲しい」


「……こんな俺で良ければ、喜んで」


 ユリウス王は、俺の答えに微笑む。こんな俺でも、喋る事なら出来る。だったら存分に気軽に接してやる。きっと、ミハエルの支えになれるはずだから。


「ハァハァ……おっと! 男同士の友情も美しいですが、ミハエル、ユリウス様に何か伝えたい事があったのでは?」


 今まで静かにしていたクリスティーナ王妃が鼻を手で隠しながら、本題を思い出す。

 気のせいじゃなかったら、なんか興奮した鼻息かなんかが聞こえたが気のせいだと信じたい。


「そうなんです。実はそこの兵士が押さえている貴族が食堂内にもかかわらず、レイジに魔法を撃ってきたんです」


 ミハエルの報告に、ユリウス王は怪訝な顔をする。当たり前だ、公共の場で魔法を放つ事がどれだけ危険かなんて、この世界に来て間もない俺でもよく分かってる。しかし、魔法を使えるなんてただの貴族じゃなさそうだ。それこそ、王立ハインリヒ魔法学園の生徒とかか?


「なんと……レイジ君、この男から恨みを買われるような覚えはあるかい?」


「いえ、この街には先ほど着いたばかりですし……」


 ミハエル達に絡んでいたギルドの男は流石に無関係か……この豚男が敵討ちなんてするようには見えないし……知らなかったとはいえ、ミハエルやマリアちゃんと居たからか? というか、普通ならミハエルやマリアちゃんが暗殺される、とかならよく見るけどなんで俺だったんだ?


「ふーむ……」


「ブ……ブヒ……ここは?」


 全員が黙って考え始めると、豚男が目を覚ます。豚男は俺を見るなり目を見開いた。


「お前ー! よ、よくも、ボクのマリアちゃんにご飯を食べさせてもらおうとしたな!?」


 あー、そういう事かぁ。気持ち悪い。マリアちゃんは涙目で震えていた。豚男は怯えるマリアちゃんを見て、さらに鼻息をする。


「マリアちゃん!? お前のせいでマリアちゃんが怖がっているブヒ! さっさと離れるブヒ!」


 威勢は良いが、兵士の拘束は振り払えていない。というか、自分が気持ち悪がられているなんて、欠片も考えていないのか……こういう奴なんて小説では引き立て役でしか無いけど、目の前にしてわかる。

 ねじ曲がった考え、勘違いの押し付け、貴族という上位の立場……全てがムカつく。


「これは……」


「ユリウス王様!? 聞いてください! そこの車椅子の男が!」


「静かにしろ。思い出したぞ、ピグマ男爵」


 ユリウス王の迫力に、豚男……ピグマが黙った。そのピリピリとした空気感に堪え切れず、マリアちゃんが俺のズボンの裾をギュッと握る。


「貴様、最近マリアをストーキングしていると噂の貴族だな。市民から多くの目撃表現も出ている。さらにはミハエルの友人への罪の捏造か……? これは許されるものではない」


「そ、それは……」


「牢へ連れていけ。処分は後に伝える」


「ブヒィィィィィイイ!?」


 ユリウス王が命じると、今までピグマの抵抗に微動だにしなかった兵士が動き出す。凄い……ピグマが大暴れしてるのに、片手で引きずってる。

 ピグマが消え、マリアちゃんに微笑みかける。マリアちゃんは慌てたように手を離して、そっぽを向いてしまった。


「レイジ君、すまなかったね。こちらの事情で迷惑をかけてしまった」


「………大丈夫です。ユリウス王に提案があります」


「提案?」


 今、俺がやるべき事は、住む場所とミハエルの信頼の確保だ。その為に、


「俺とフェルをミハエルの護衛にしていただけませんか?」


「君たちをか……?」


 ユリウス王は俺の足を見て、手を見て首を傾げる。言葉に出されてはいないが、気持ちは分かる。俺は確実に護衛とはなりえない。


「レイジ……? その手足で護衛なんて不可能じゃ?」


「不可能じゃないさ。実際に護衛の役回りを担うのはフェルだからな」


「……確かに、君のメイドは凄まじい戦闘力だ。しかし、何故護衛になる必要が……?」


「今回、ピグマのように怪しい貴族がいることが分かりました。しかし、ミハエル達には護衛が居なかった。それが護衛をつける余裕が無いのか、それともミハエル達が護衛を堅苦しく思ったのかは知りませんが……小規模とはいえ、事件が起きてしまった今、護衛を強化するべきと思ったのです」


 俺達が護衛になった時の絵面を想像してみる。ミハエルとマリアちゃん、そして俺と車椅子を押すフェル。どう見ても護衛が居るようには見えない。さらに、四肢が無い俺を人質か何かにしようと動くやつも居るだろう。つまり、おとり捜査も出来る筈。

 フェルの方をチラリと見る。また勝手に決めてしまったけど……小さく微笑んで、頷いてくれた。


「一理あるな……ならレイジ君、見返りを聞こうか?」


 よし、ユリウス王からこの言葉を聞きたかった。ピグマ……お前に手足が無いなりの報復を見せてやるよ。

ゾ〇ビピッグマン→ピッグマン→ピグマン→ピグマ

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