体弱すぎ、休めよ少年
(※命短し、恋せよ乙女のリズムで)
俺にとって、久しぶりのハインリヒでの朝。久しぶりの俺の部屋で、久しぶりにフェルも隣で寝てる。いつも通りでないと言えば……
「イデデデデデ!? 無理!フェル、マジで動くの無理だから!」
「ですが! せめて、車椅子には乗っていただきませんと! というか!どこが筋肉痛なんですか!?」
「首、肩、腰だよ! アダダダダダ! ウグググッ……ハァハァ……やっと座ったのか……?」
この全身を襲ってくれる筋肉痛と吐き気、眩暈に頭痛、無理矢理体に闘気を巡らせた事による神経関係の損傷。更にフェルが久しぶりだからという事で、張り切り過ぎて腰も悲鳴上げてるし……トールのせいで寝てたのに休めた気もしない。
車椅子に座っても体中に違和感があるし、筋肉痛はほんの少し和らいだけど吐き気、頭痛、眩暈は治まらない。
「レイジ様、クスリでも飲みますか?」
「地球の物レベルで効力があるなら飲むよ……」
「この時代では……難しいですね」
これは久々の手足無し生活だな……これでも、鎖骨の骨折とか、超爆発での火傷とかの治せる外傷は治してもらったのにこれだからな。
朝ご飯の為フェルが車椅子を少し動かした瞬間……
「ああああああああ!? 無理無理! 無理だからああああああ!」
「…………これはどうしましょう?」
「今動かされたら、死ぬ。マジで」
と、言った瞬間だった。視界が一瞬で食堂に切り替わった。体に痛みは無く、いつ動かされたかも分からない。転移じゃなかった、転移ならもっと吐き気や頭痛が悪化してるはず。これは、フェルがなんかしたか?
「はい、時間を止めてみました。これで移動に関しては問題ありませんね」
「そうだな……とりあえず、ゼリー系で頼む……」
フェルに注文し、適当に食べれそうな物を取りに行ってもらう。ゼリーでも飲み込めるか怪しいけど……さ、最悪フェルに時間を止めてもらって胃の中に直接ブッこんでもらうしか……!
フェルが戻ってきたけど……手元にあるの、アレ……バケツ?
「ゼ、ゼリー系……このバケツプリンしか……ありませんでした」
「ええええ……ま、まあそれにするしかないか。フェル、食べさせてくれ……」
◆
結局、プリンも1口が限界。頭痛と吐き気にピークが来たので、自室のベッドに戻してもらった。仕事は当然レオとネルガに代行してもらった。バルトロの所への殴り込みも、もう少し延期しよう……
フェル……傍にいるか?
「はい、こちらにいます」
「あー……右の義手だけくれ」
フェルが異空間収納から俺の右の義手を取り出し、装着する。右肩の周りの筋肉が酷く痛むけど……その痛みをこらえてフェルの頬を撫でる。
暖かい……柔らかい……あの戦いは……無駄じゃなかった。
「レイジ様、私はここにおります。どうかご安心ください」
「本当は……怖かった……フェルが隣に居ないし、世界の命運とか言われて……急に特訓させられて……辛かったし……痛かったし……苦しかったし……終わってから怖くなってさ」
「はい……」
「戦えるようになったのは嬉しかったさ……でも、その力を……なんで好きな人に向けて振るわなきゃいけないんだって……」
「レイジ様……」
「次からは俺……この温もりに触れる為に……戦えるんだよな?お前の横で……戦えるんだよな?」
「いいえ、戦う必要もありません……私が全て終わらせますから」
「やだなあ……俺だって、お前の為に戦いたいんだよ……」
俺達は涙を流しながらだけど……笑っている。瞼が重くなってきた……フェルに頼んでおかないと……ああ、声を出す事すらだるくなってきた……
「でしたら、心を読み取っていますので…………っ! ……本当ですか? ……かしこまりました」
ああ、頼んだ……もう、俺の体から見れば……劣化品だし……つーか、もう使えないように、あらかじめ燃やしといて……灰になってるしな……
「でしたら、処分ではなく……」
…………マジか。まあ、好きにしていいよ…………もー無理……お休み
「かしこまりました。おやすみなさいませ、レイジ様」
本日の省かれシーン
フ:ウフフ……レイジ様の……ウフフフフ……素敵です
レ:俺は捨てて欲しかったんだけどなぁ……