最強メイドと歩む者
荒れ果てた大地を歩いていく……目の前の古城には、邪悪な魔力が漂っている。全く……本当にただのオタク寄りの俺には肉体的にも、精神的にも辛いものがあった。なんで俺がこんな事をしなくちゃいけないんだ……
「レイジ様、古城から矢の雨が来ます。防ぎましょうか?」
「いいや、道中の露払いは俺に任せろ。最強のお前は、出せる全てを温存しておいてくれ」
隣に立つメイドが告げた通りに、千を超える矢の雨が迫ってくる。慌てる必要も無い……橙の炎の文様が描かれた鎧の右腕を振るえば、炎の壁が現れ正面の矢を防いでいく。
俺はこの世界では強いとは言い切れない。なんだったら大事な勝負なのに勝った戦いより負けた勝負の方が多かった……あれ? 勝った事あったけ? 無いかも……無いなぁ。
「レイジ様、落ち込まないでください。第二陣来ます」
黄緑の風の文様が描かれる鎧の右足を振るうと、凄まじい旋風が俺達の周りを吹き荒れる。荒ぶる風が矢の雨を叩き落していき、俺達の道を作りあげる。
これなら、左の2つはまだまだ使わなくても良さそうだな。俺の体は無制限に戦えるわけじゃない。俺自身の力も、なるべく温存していくべきだろう。
「やれやれ……矢が駄目なら、雑魚で足止めか? 余程余裕が無いんだな」
前言撤回しなきゃな……左を使おう。
迫り来る雑魚の大軍を確認し、青き水の流れが表現された鎧の左腕を地面につける。水がじんわりと溢れ出し、迫り来る大群の足元のみを濡らしていく。水は溜っていき、平地だというのに大群の膝下辺りを濡らしていくいったが、こちらの足元は一切濡れていない。
「結局、4つ使われてしまいましたね?」
「問題ないさ。炎、水、風、そして雷。この世界の基本だろ」
仕上げに黄色い雷の文様が走る左足で水溜まりの端に、爪先を付ける。水を電流が走り出し、迫り来る大群に雷が牙を剥く。焦げ臭い香りが、辺りへと広がっていった。
昔はこんな雑魚に殺されかけたのか……懐かしいな。
「さあ……行こうか!」
こんな事になっているが、俺は地球の人間だった。始まりは数年前、俺が地球に居た頃に遡る。