父さんの遺影
そうだ。父さんはいつも笑っていなかった。だから、この遺影が不自然に見えるんだ。
父さんが死んでから2年。
もともと、心臓が弱いと、お母さんから聞いていた。
父さんは滅多に笑わない。
というよりも笑うのか?
とはいっても、いつも怒っているわけではない。
僕はそれを気にかけたことは無かった。
それが普通だったからだ。
父さんが死んだと聞かされた時、僕は高校3年の1学期の期末試験の2時間目だった。
試験中に新川先生に呼び出され聞かされた。
僕は急いでシャーペン、消しゴムを筆箱にしまって、リュックサックを背負って教室を出た。
病院に行くとお母さんが静かに泣いていた。
お母さんは、僕に真っ白な手紙を渡して
「お父さんからよ」
とか細い声で言った。
"良輔へ
父さん、おまえの為に何かしたことなにもな
かったな。ごめんな。
もっと、話しとけば良かった。
父さん、気付くの遅かった。悪かったな。
父さんは後悔ばかりの人生だった。
だから、母さんや良輔、麻里には後悔のない人生を送ってほしい。
今までありがとう。
父さんより"
字の几帳面さ、文の淡々とした感じは全て父さんそのそもだった。
父さんが死んで2年経った6月末。
「お母さん、お父さんって笑ってた?」
「なーに、急に。笑ってたわよ。」
「俺、見たことない」
「お父さん、良輔と麻里の話してる時、いつもニコニコしてたわよ? あの遺影も2人で向日葵見に行った時に撮ったのよ 」
そう話す、お母さんは、哀しげで、嬉しそうだった。