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序章
そっと風が吹いた
ここではない何処か
広く開けた青々しい陸の大海原
微かに残っていた
欠片が集まって
少しずつ流れを感じた
見渡してみれば山の木々が揺れていた
見上げてみれば空が青くて
耳をすませば水の音がした
ここがどこかは知らないけれど
なんだかとても懐かしくて
気が付けば走り出していた。
何処かに街があった気がした
何処かに自分がいたような気がした。
あそこには仲間がいたはずだった。
あそこには悪魔の住処もあった。
悪魔たちは残虐ではなかったが残酷だった
仲間たちは悪魔たちに淘汰されていった。
残ってた仲間はもう僅かだった、
それどころか自分だけかもしれなかった。
遥か遠くにそれを見つけた
見つけた。思い出した。あった。
そして今、此処で自分が生きていた。
あの時の風がそっと通りすぎていった。
やっと「約束」が果たされた。
こみあげてくる感情を強く心に留めて
その欠片を大切に握りしめた。