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第一話 ~コンサートマーチ 「青葉の街で」~

楽器と譜面台、タオルを持って講堂に行くと、そこにはすでに保護者が集まっていた。今年の1年生は13クラスもあるらしい。


チューニングだ。オーボエの山下 ゆり(やました ゆり)先輩がAの音を吹く。ゆり先輩の音はいつ聴いても澄み切っている。

そこにコンサートマスターのもり 勇樹ゆうき先輩がAを重ねる。2人のAがぴったりと合ったところで、ほかの人もAの音を重ねていく。

俺はこの「チューニング」が好きだ。それまでばらばらだった90人の音がぴったりと合わさり、一本のAになる。


チューニングを終えたところで教頭から合図が出た。学生指揮者でパーカッションの近藤こんどう 真衣香まいか先輩がさっと指揮棒を構える。

102人が一斉にブレスをとる。

コンサートマーチ「青葉の街で」がはじまる。



入学式も終わり、次は始業式だ。入ったばかりの1年生がホームルームをやっている間に始業式は行われる。

校長の話、校歌斉唱とあって、いよいよ学級担任発表だ。

2年生からだから、俺たち2年G組は7番目に呼ばれる。


「では。2年A組、・・・・」

「・・・・」


「2年G組、下村しもむら 結樹ゆき先生。音楽科、吹奏楽部の担当です。」



まさか新しい顧問が自分の担任になるとは思ってもいなかった。

純也や大原たちも驚きを隠せていない。

これからいったい、どうなるのだろうか。




始業式を終え、吹奏楽部を含め全員が一旦教室に戻った。

下村先生とのご対面だ。


「みなさん、おはようございます。今年度から川上中学校にやってきました。下村 結樹です。まだまだこの学校についてはわからないことばかりですが、よろしくお願いします。それから、合唱コン優勝しましょう!」

・・・早々にそれかよ。と誰もが思ったはずである。

確かに、この学校は合唱コンクールに異様なほど力を入れている。それで優勝、すなわち金賞というのは、決して簡単なことではない。でも、下村先生は音楽科だ。多少は期待できるだろう。


「それから、私は吹奏楽部の顧問にもなりました。しばらくは宮島先生と植田先生、私の3人体制となります。このクラスの吹奏楽部の人、手挙げて。・・・5人ね、よろしくね。では、今日はこれで終わりにします。明日は委員会と係決め、部活動紹介です。やりたい委員会と係考えといてね。じゃあ号令、とりあえず、そこの吹部の子。そう、あなた。大原さん。」


「はい。起立。さようなら。」


「「「「さようなら。」」」」



みんなは帰路につく。が、吹奏楽部はそうはいかない。明日の部活動紹介の打ち合わせがあるからだ。また純也たちと音楽室に向かう。


「ねえ、下村先生どう思う?」


葵がつぶやいた。


「うーん、美優はあんまり好きじゃないな~。」


「え、あたしは好きだよ。わかってそうだし。それに、前の学校で東海行ったらしいよ。小編成だけど。」


「え、すご。」


「まー、期待できるんじゃね?」


みんな口々に言っている。正直、俺はそんなことよりも今日の演奏について話がしたい。


「なあ、今日の青葉どう思った?」


「うーん、なんかペットのバランス悪かったよね、ごめんね。今日調子悪くて。」


彩佳は2年生ながらトランペット不動のエースだ。


「うちらもばらばらになっちゃった。真衣香先輩いないと辛いんだよね~。」


葵もそこそこ上手いと思う。


「クラは特に問題なかったけど、迫力に欠けてたよね。勇樹先輩どうしたんだろう。いつもはあんなにガンガン吹くのに。」


そういう美優だが、勇樹先輩よりも明らかに上手い。


「やっぱりチューバはまだまだだよな。なんかこう、ちょっと後ろに引っ張っちゃうっていうか・・・」


純也もわかっている。どうやら、2年G組は2年生のトッププレーヤーが集まったクラスらしい。


「一磨はどう思った?」


「コンサートマーチなのにテンポ遅いな、と思った。もっとはやく、132くらいでやるもんじゃないの?」


「あーそれは美優も思った。」


「俺も。」


「まあこの先下村先生が振ってくれるんだし、期待できるんじゃね?」


「とりあえず部員確保だな。」


「だね。」

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