prelude ~出会い~
春。それは出会いの季節だ。
桜舞う通学路を胸を膨らませながら歩いていると、いつものように小さな笑顔が目の前に現れた。
「一磨、おはよ!」
そう声をかけてきたのは大原 彩佳だ。幼稚園が一緒で、小学校は違ったけれども中学校で再会した、いわゆる「幼なじみ」ってやつだ。
「一磨、今日入学式だよ?なんでそんなテンション低いの?」
そんなの朝からただの幼なじみに会ってテンション上がるやつ、いるわけない。
それに、入学式は俺たち吹奏楽部の本番でもある。
言い遅れたが、俺は高橋 一磨。ここ川上中学校の吹奏楽部で、バストロンボーンという楽器を担当している。バストロンボーンは、トロンボーンの低音部を出しやすくしたやつだと思っておけば問題ない。(正直まったく別の楽器なのだが。)
大原も同じ吹奏楽部だ。大原はトランペットを吹いている。トランペットの説明は不要だろう。
校門に着く。校門は大勢の生徒でごった返している。何しろ川上中は1000人を超えるマンモス校だから、仕方ない。
昇降口でクラス編成の紙を受け取ると、俺はすぐに教室へ向かった。
俺は2年G組になった。去年もG組だった。同じクラスには大原のほかに、同じ吹部でチューバ吹きの赤塚 純也や、クラリネットの松本 美優、パーカッションの関戸 葵などがいた。どうやらにぎやかなクラスになりそうだ。
吹奏楽部の演奏の為に、クラスから離れ純也、大原、葵、美優と一緒に音楽準備室へ向かった。
「なあ、新しい顧問来るらしいぜ?」
「「「え!?」」」
純也の何気ないひとことにみんなは驚いた。
大変な一年になりそうだ。