表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/33

「俺」 2

 働いたからにはそれ相応の報酬があって当たり前なのに。ギブアンドテイクなのに。ハイリスクハイリターンなのに。キャッチアンドリリースなのに。

 ―違うか。


 大体特に日本人は形のないものに出費したくない性格なはずだろ。なんだ笑顔がお代って。某ファーストフード店によれば笑顔はただなわけで金銭的価値はない。だからそんなくさい台詞はかなくても。

 善意で仕事してても腹はふくれないっつーの。大体それで頷いちゃう客も客だよな。普通ならそこでいえ、でも相当の事をしてもらったわけですし。とかなんとかいって意地でも料金は払うだろ。ちょっと粘っただけで納得しちゃうとか。最初から払う気がなかったんじゃないか。一体いつ道寺を懐柔したのか。次からは気を付けなければならない。

 それにしても客が来なければ意味がない。口コミの威力はすさまじいと聞くが、どうやら今までの客は残念なことながら皆口が金庫並みに堅いらしい。それにしても口コミってカタカナのロコミみたいでなんか萌えキャラっぽい。良い評判だけぶちまけるコミィ~。


 ふぅ。


 事務所の構えが悪すぎるのも大きな要因の一つだろう。やはりライバルが多い現代にわざわざこのアパートを選ぶ物好きはいない。

 妖相談所。

 ふむ。もっと突飛なネーミングにした方が良かったかもしれない。それとポスターも鮮明な色使いで。あーでもカラーは高いしな。プリントするの。

 競争が激しいから値段は格安にしたのに。それでも人が寄り付かないところを見るとおそらく競争相手が俺のポスターの上に自社のポスターをかぶせるといった嫌がらせをしているとしか思えない。

 道寺はいつも俺がぐーたらしていると文句を漏らしているが、それもこれも仕事がないせいだ。奴がもう少し宣伝にでも力を入れて客が集まれば自然と俺も重たい、三トンはあるでろう腰を持ち上げるのに。象もびっくりの重さだ。百人乗っても壊れない物置も、象が載っても壊れない筆箱も俺にかかれば粉砕するに違いない。

 仕事がないとき、つまりはオフの時にしていることと言えば漫画を読むか、パソコンで時間をつぶすかくらいしかない。自然とだらだらしてしまう。

 今も「漫画で学ぶ歴史」なるものを読んでいる。

 漫画によると昔、さかのぼって平安時代には妖怪と人間との間で争いが続いていたらしい。んで陰陽師さんがたプロフェッショナルの人達が人に害を及ぼす妖怪をびしばし退治してたとか。妖怪がお偉いさん方を狙って陰陽師が守る。特撮ものやアンパンがヒーローのあのアニメのように同じパターンが長らく続いていたらしい。ある意味平和だったのかもしれない。あ、でもたまに応天門なるものに放火したり、将門を煽てたりと大きな混乱を起こすこともあったらしいからあまり穏やかではない。

 そして一度大きな戦があった。

 総大将ぬらりひょん率いる妖怪軍と、陰陽道を究めた阿部清明を筆頭とする陰陽軍。

 この二つの軍は決着をつけるべく、京都を舞台に約十年の月日を戦に費やした。十年間もどう戦い続けたのか詳細は漫画を読むだけではわからないが、おそらく大半がにらみ合いだったに違いない。

 合戦の様子は凄まじかったのだろうが、俺にはそれを具現化するだけの想像力が、そしてこの漫画の作者にも画力が足りないわけで、あやふやなイメージしか浮かばない。

 だって千年以上も前の事だし。こんなのただの過去でしかないし、テストに出る項目でしかない。この戦があってこそ今の社会が成り立っているとかそういうこともあるのかもしれないが、実感がわくはずもない。そんなことを言ってしまえば今俺がグータラしていることすらも将来の、千年後ほど未来の役に立っているかもしれないわけで。俺もしかすると救世主。妄想乙。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ