「私」 5
ふむ。
かっこよく言い放った後に、しかも自分で意識もしているのかキメ顔のところ悪いのですが。
「そういうのってもっと人がいたりして暖かい雰囲気の時にいう台詞じゃないですか?」
冷静に指摘すると、彼はむっと眉根を寄せた。別段凄んでいるわけでもないのだろうけど、少々怖い。
「今のはどう考えても流すところだろう。漫画だったら見開きページで予告編なんかにも乗っけられるかもだし、ドラマだったら必ずダイジェストには使われるぞ」
どうやら私の反応がお気に召さなかったらしい。
「だからそういうのもこんな部屋じゃ成立しないんじゃないですか?」
「乗りの悪い奴だな。ノリを大切にする人種なのに」
縞髪の彼、シマさんは私の反応が気に入らなかったのか子供のように口をとがらせると広げていた腕をしぶしぶ下げた。
「んで?何の用?」
態度が少し乱暴になった。胡坐をかいて膝に肘をついて顔を支えているのでまるで一人暮らしを始めたばかりなのにやさぐれて親から仕送りをもらいながらも大学に行くのを渋る優秀な兄がいる息子に見える。信頼できないわー。
しかし私が口を開かなければ始まらない。
「その、相談があるんですけど」
恐らく私と同性代だろうけど、年上かどうか不確かなので一応敬語にしておいた。一度背が低くて童顔の先輩にタメ口をきいて恥をかいてしまったことがあるので。私は学ぶ。というか私は依頼人なわけだし。
「ここは相談所だから当たり前だろ」
むかっ。喧嘩なら買ってやろうじゃないか。