僕と化け猫と蕎麦
是非、後書きも見てくだい
まず最初に言っておこう。これから話す出来事は僕、『松ノ上ショウや』が実際に体験した出来事である。あまりにも常軌を逸脱した話だから全員が全員に信じて貰えるとは思えないが構わない。なにしろ僕はこの話を誰かに話したくてたまらなくなってしまったのだから……。
その日、僕は会社の休みに学生時代の友人達と共にカラオケに来ていた。久々の友人達とのカラオケは多いに盛り上がり、僕は今だ高いテンションのまま友人達と話をしながらカラオケ点と駐車場を繋ぐ工事をしている道を歩いていた。工事も今日は休みのようで『立ち入り禁止』の看板が乱雑に置かれていただけで作業員は誰もいなかったと思う。
そんな時だ、僕は工事現場の中、地面を掘り返した後の側面に埋まっている奇妙な物を見つけた。
『黒いアタッシェケース』だ。
その黒いアタッシェケースが妙に気になった僕は、友人達の静止を降りきり、工事現場に浸入すると埋まっていたアタッシェケースを引っ張り出した。
友人達は『ヤバい人達の隠し金かもしれない』、『誰かが埋めた死体の一部が入ってるのかもしれない』と騒ぎたて、僕も思わず怖じ気づいたが胸から迫ってくる好奇心には勝てず。幸いと言うべきか不幸と言うべきかアタッシェケースには鍵がかかっておらず僕は止め金を外して一気にアタッシェケースを開いた。
いざ覚悟をして開いたアタッシェケースの中身は、大量の札束でも無く惨たらしい死体の一部でも無く、ただの透明なクリアファイルに入った一冊の書類そう、確か『わらしべチョージャプロジェクト』と言う今になって考えると非常に胡散臭い名前だった事を覚えている。工事現場から出て仲間と共にその書類読んでみると『おめでとう!あなたは一攫千金に成功した!』、『まさに現代のわらしべ長者!』とか言う煽り分と共にわらしべチョージャプロジェクトとやらの説明が書いてあった。
わらしべチョージャプロジェクトとは、いわゆる富裕層達が金を出しあって作ったプロジェクトで全国に凄まじい金額が手に入れられるチケット入りのアタッシェケース。つまりはこのケースを埋めてそれを発見するもの、つまり現代のわらしべ長者を探す、という物らしく。その文章が嘘では無い事を示すかのように書類の最期には見たことも無いような金額と複数の英数字のコードが書かれており、専用HPにアクセスするようにも書かれていた。アクセスしてみるとホームページにはわらしべチョージャプロジェクトが確かに存在するような証拠の数々、そしてアタッシェケースを血なまこになって探している人々の情報で、そんな情報を見た僕はすっかりわらしべチョージャプロジェクトの存在を信用してしまい友人達相手に前祝いと称して近くのファミリーレストラン等で豪遊しまくり、財布の中身をすっかり空にしてしまった。
そして、受かれた状態で友人達と別れていざ帰ろうとした時、事件は起こった。
駐車場に止めていた僕の車がすっかり消え失せていたのだ。むろん、僕はしっかりと車にカギをしてていたし、止めていた場所はちゃんと駐車エリア内に止めており違反車両と見なされたとは考えにくい。ともかく家族に連絡しなくてはと思い、携帯を操作して見るが電話はいつまで過ぎても繋がらず、メールも飛ばずまるで連絡が取れない。
仕方ない、もう歩いて帰るしかない。そう考えた僕はアタッシェケースを抱えて暗くなりだした道を歩き出した。しばらく歩くと暗い空からは雨が振り出し傘を持ってないうえに買う金すら持ってない僕はアタッシェケースを傘がわりに必死で雨に耐えながら走って雨宿りできる所を探した。それから数分程だろうか?ようやく雨宿りが出来そうな場所、バスの停留所を見つけた僕は重いアタッシェケースをおろして停留所のベンチに腰を掛けると一息ついて休憩する事にした。と、そんな時、突如携帯電話が鳴り出し着信を知らせる。
電話の相手は先程別れた友人だった。友人は酷く慌てた様子で
『さっきのわらしべチョージャプロジェクトのHPを見てみろ』
と、だけ告げ、僕が言われるがまま携帯で検索して調べて見るとなんと、わらしべチョージャプロジェクトのHPはまるで最初から無かったかのように消え失せており、検索履歴からさえも綺麗に消え失せていた。
「一体、どういう事なんだ!?」
僕は驚きのあまり立ち上がり、そして気付いた。さっきまで足元に置いてあったはずのアタッシェケースが無くなっている事に。
もはや何が何だかさっぱり分からない。混乱しきった僕は雨に濡れるのも構わずフラフラと歩き出す滅茶苦茶な方向へと歩き出した。
そして、余りにも茫然自失としてたせいか、途中の道のりが全く分からない、いや思い出せないが僕は気がつけば見知らぬ駅中にいた。駅中は無人で誰一人おらず、やたら広い案内板にしたがってひとまず外に出てみると。
そこには高く昇った太陽が優しく輝き、一見すると僕の見知った町並みに似ている、そう似ていただけで強烈な違和感を感じる光景が広がっていた。何より看板に書いてある文字が日本語に似ているのだが全く読めず、僕の記憶の限り本来その場所にはあるはずの無い建物があった。それに町を歩く人々の服装も洋服を着ている人が僕以外におらず、皆が着物を着て歩いていた。ますます訳が分からなくなりつつも僕は一心不乱に自宅にたどり着くべく記憶に残る限りしってる道を頼りに見慣れぬ町を歩き出した。
歩き続けていると、相変わらず記憶には無いはずの巨大な朱色の橋が見えそこを歩いていると、ふと橋の近くの川にうごめく動物の姿が見えた。茶色の毛皮で水面を滑るように動くそれは初めはカモだと僕は思ったが、足を止めて改めて確認し僕は悲鳴をあげた。
頭の形は巨大なフクロウにそっくりだが、がっちりとして分厚い毛皮を持った体はまるでヒグマ、おまけに尻尾は長くて鱗におおわれ爬虫類の尾を思わせた。そんな生物が数匹で群れを無し、川を動き回っていたのだ。
あきらかな異形の生物に恐怖を感じた僕は、思わず走って逃げようとしたが、その時またもや異変がおきた。
なんと僕の体は重力に逆らって勝手にゆっくりと浮かび上がり。地上から数十メートルの所まで上昇した。
「なんなんだよこれは!?何が起こっているんだ!ここはどこなんだ!?」
先程から起こる異常事態のラッシュにうんざりし始めた僕は、思わず叫ぶ。その瞬間
『×××××××××』
と、僕の背後、さらに上空の空から響き渡るような男の声がかけられた。言っている言葉は全く分からなかったが何やら僕に教えようとしているように感じた。その言葉が聞こえた瞬間、僕はゆっくりと下降し始めた。地上へと戻ると僕の回りには人だかりができ、集まった人々皆が何か『神の×××』、『やっと××××がきてくれた』、『おお×××××』と日本語と何か良く分からない言葉が混じった言葉で僕を笑顔で迎えていた。僕が困惑しながら辺りを見渡しているとふと、僕を囲む群集の外に一人だけ僕と同じく洋服を着て頭にタオルを巻いた大柄な男を見つけた。それは、僕の良く知っている人物だった。
「せ、先輩っっ!?」
それは僕が働いている職場、その職場の先輩であった。
「松ノ上!?何でここに!!」
先輩は僕に気が付くと動揺し、人混みを掻き分け僕の元へと近付いて来た。僕は自分でも無茶苦茶な話だとは思うが何とか先輩に事の顛末を伝えると先輩は大きく頷き。
「分かった、とりあえず俺の後をついて来るんだ。そうすれば元へ戻れる」
先輩はそう言うと僕に背中を見せてさっさと歩き出した。僕は慌ててその後を歩き、先輩を見失う事がないように街中を歩いていった。そして
「着いたぞ」
ふと、気が付けば僕は見慣れた自宅近くの街中に先輩と共に立っていた。
「とりあえず、腹が減ってるだろう?それに……聞きたい事もあるしな」
先輩はそう言って、すぐ近くの一軒の蕎麦屋へと入っていく。蕎麦屋は猫の額ほどの小さな部屋で席はカウンター席のみ、調理場には朗らかな顔で笑う一人のお婆ちゃんが立っていた。
「よ、婆ちゃん来たぜ」
先輩は軽く調理場にいるお婆ちゃんに挨拶すると、カウンター席に腰掛け隣に僕を座らせる。
「あらまぁ、あんた良く来たねぇ。そっちの子は?」
お婆ちゃんは僕に気付くと優しく笑いかけてきた。
「こいつは俺の会社の後輩……ちょっと、よく分からねぇもんに遭遇したらしくてな……」
「……あなた、お腹減ってるでしょう?お話はお蕎麦を食べながら聞きましょう」
先輩の話を聞くとお婆ちゃんは表情を一瞬曇らせるがすぐに笑顔に戻ると僕と先輩に蕎麦を出してきた。僕はお婆ちゃんに話をしながら蕎麦を食べていたが特段腹は減っていなかったが蕎麦はするすると僕の体へと入っていき、気が付けば蕎麦をすっかり食べおえていた。
「なるほどね……大体の話は分かったよ。それはたぶん『化け猫』だろうね」
「な、たぶん『化け猫』だろう?よく分からないがな……」
僕の話を聞き終えると、お婆ちゃんと先輩は二人して納得したかのように揃って言う。
「そ、そんな……僕は猫に恨まれるような児となんて……」
僕がそう言うと、お婆ちゃんは一度僕を見てから何かに納得して頷いた。
「確かにあなた自身は猫に恨まれる事はしてないようだねぇ……ただ、あなたの後ろにいる犬……白と茶色の毛の中型の日本犬だ。その子が関係してるみたいだねぇ……」
この時、僕は驚愕した。それは紛れもなく以前僕の家で飼っていた犬の姿そのものだったのだ。
「その子には悪気は無いからねぇ……これを持っていきな」
僕はそう言うお婆ちゃんに御守りを渡させると、その日僕は先輩の車に乗せられて帰宅した。
驚くべき事に消えた僕の車は何事も無かったかのように自宅の駐車スペースに止めてあり、家族からの話で僕はその日、一時間も家から出てない事が判明した。
これで全ての話は終わり、僕はいつもの日常へと帰っていった。
しかし、気になる所は無数にある。先輩やお婆ちゃんが行ってた『化け猫』の正体。僕の世界と良く似た未知の世界。そして何より
何故、あの世界に平然と先輩はいたのか。そこが気になるのだが、どうしても僕はそれを先輩から聞く勇気が持てないのです……
……………と、言う夢を見たのです。
あまりにも奇妙な夢だったのでどうしても誰かに伝えたくなったのです。ごめんなさい反省してます。なお、夢占いに詳しい方がいらっしゃりましたら診断お願いします