表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

シンデレラ~アナザーストーリー~

作者: 暴走紅茶

私はシンデレラ。実のお母様は私が生まれて直ぐに亡くなりました。その数年後、お父様は新しい女性──今のお義母様と結婚なされましたが、一昨年、持病が悪化して、亡くなってしまいました。

今日はお城の舞踏会。武道会ではなく、舞踏会。美味しい物を食べ、美しい方々が踊りを踊る、社交の場です。

「シンデレラ? 私のドレスはー?」

新しいお義母様には、三人の連れ子がおりました。その一番上のお義姉様が呼んでいます。

「はーい! 只今~!」

本日の舞踏会には、お義母様とお義姉様方が参加なされます。私も参加したいけど……。ダメです。私は美しくないので。お義姉様や、お義母様はお美しいので、舞踏会に参加出来るのです。

「シンデレラ? 私の髪飾り知らない?」

「はーい! 今お持ちします~」

二番目のお義姉様です。皆様の準備が着々と進んで行きます。


そんなこんなで、皆様の準備が整いました。

「じゃあ、行ってくるわね。お部屋のお掃除と、ベッドメイク……そうね、あと、お風呂も洗っておいてくれるかしら」

「はい。承知しました」

四人が迎えの馬車に乗り込みます。いってらっしゃーい。と、見送ると、私は家の掃除を始めます。あぁ~~。私もいつか行ってみたいなあ~、お城の舞踏会。うっとりとした目をしていることが、自分でも分かりました。


「行けるぞよ」


その時です。どこかから嗄れた声がしました。

……ストーカー? それとも強盗……? ヒ、ヒィィィィィイイイイ。怖くて体がガクガク震えます。

「いや、そんな物騒な者じゃないんじゃが」

「へ?」

心を読まれました! 怖いです! 幽霊さんだったのでしょうか!?

「いや、幽霊じゃなくてのう、魔女。なんじゃが」

「魔女?」

声の主に問いかけます。

「そうじゃ。まあ、一度話を聞いてみないか?」

「は、はい……」

半信半疑ながら窓を開けます

「残念。わし儂はここじゃ」

後ろから声が!? 何故か魔女さんは後ろのトイレから出てきました。

「いや~。この年になるとトイレが近くてのう。驚かせてすまぬ」

魔女さんの格好は、頭まですっぽりと、フード付きのローブに身を包んでいました。性別は……たぶん女性です。声が女性らしかったですから。

「魔女のおばさま? 一体、何をどうして下さるの?」

「まあ、慌てなさんな。私はただ、いつも家事に勤しんでいるお前さんに、褒美をやろうと思ってな。どうじゃ? お城の舞踏会へ行ってみたくはないか?」

「本当!? でも、私、こんな格好だし……」

そういって、自分の格好を見ます。そこに見えたのは、継ぎ接ぎだらけのお下がりのお洋服。こんなのじゃ、とても、とても、そんな高貴な場所へは行けません。

「心配するな。こうするのじゃ」

そう言うと、魔女のおばさまはどこからともなく取り出した杖を一振りしました。すると、なんと言うことでしょう! 私の服が、みるみる美しいドレス(ノーブランド)に変化しました! 凄いです! ノーブランドだけど! ノーブランドだけど!

「別にブランドが全てじゃないのじゃが……」

更に振ります。次は私の足下にガラスの靴が! 更に、庭のカボチャが馬車に、鼠が馬になっていきます。

「おばさま! 本当に魔法使いだったのですね!」

「うわ~。こんな格好……したことありません! ありがとう!」

「そうかい、そうかい。それは良かった。して、どこか窮屈なところは無いか?」

「う~ん。そうねえ。ちょっと胸が苦しいわ……。でも、贅沢は言えないものね」

「うん? そうかい? どれ……。あ~これは、下着のサイズが合ってないねぇ。ちょっと待っておれ。今本部に確認取るでの」

そう言うと、おばあさんは袂から『スマフォ』を取り出しました。

「あ~。ジェームス? 今、例の子の所に来てるんだけどさ~。あんたらが八七センチっていうからそのサイズのを用意したのに……。あれ、どう見ても九十は超えてるよ? どうするのさ? ああ? 今から変更を送る? じゃあ、それなりのモノは期待していいんじゃな? クライアントは大事じゃよ? 誠意を見せるのじゃよ?」

そう言って、電話を切った。

「……おばさま? あのう。世界観って、大事ですよ?」

「知ったことか。……と、おお! 用意できたようじゃのじゃあ、いくぞ」

えいっと、おばさまが杖を振ります。

「今回のは……サイズにぴったりです! しかもこれ、ワ○ールじゃないですの? 流石の付け心地、盛り心地です~。……ん~。でも、なんで黒レースなんですの? なにかいらしいものを感じますが……」

「はあ、注文の多い子だねえ」

おばさまは再び本部へ連絡を取ると、杖をもう一振りしました。

「そうです。こういう普通なのが良かったんです! うん。白。無地のワコ○ル! 普段は手が出せないメイドインジャパンを身につけているのって、何だか高貴な身分になった心持ちがします!」

「もう気が済んだか?それじゃ、行くかの?」

「はい!」

……この作者さん、この作品文化祭に持ち込むつもりなのに、こんなに下着の話をしていて大丈夫なのかしら? まあ、登場人物には関係のない事ですね!


そしてお城に着いた。

「行ってきます」

「ああ。楽しんでおいで」

「有り難う御座います」

「いいのじゃ」

お城の中は……何というか、桃源郷でした。

「うわ~綺麗な人ばっかりだ~」

メインホールに入ると、直ぐに男性から声をかけられた。

「シャル ウィー ダンス?」

「え? あ、いや……あ、あははは……」

「ふん。すみませんでした」

男性は去って行ってしまった。びっくりした……。あんな風に声をかけられるのかあ。ほええええ。って、あれはお義姉様!? 一番下のお義姉様ですわ! 見つかったら怒られてしまいます! って、あれ? 私の前を素通りしていきました。気付かないのですか? そんなに分からないものなのですかねえ。

突然会場がざわめきに包まれました。

「王子よ!」「おお! 王子様!」

みんなが口々にその存在の名を呼びます。

「ほええ……素敵な人だなあ」

私には遠く手も及ばない人。雲の上の人だ。

あ、今、一瞬目があった! きゃ~~。心臓がドキドキ言っています~!

ん? 今、目があったときに軽く微笑みかけてくれたような……? 気のせいだよね?って! アレ? コッチニクルヨ……?

なんだこれ!? 汗が止まらない。王子様がこっちへ向かってくる!


「マドモアゼル? 私と踊ってくれませんか?」


「ふえええええええええええええ! あ、いえ、あの……はい。宜しくお願いします……」

最期は少し尻すぼみになっちゃいました。


たんたんたんたんったん。たたたた……。

王子様とのダンス……王子様の吐息……。

ああなんてすてきなのだろう……。

私、汗臭くないかなあ? 大丈夫かなあ?

時折、王子様は、私に向かって微笑んで下さいます。その凛としながらも、清楚なお顔立ちに、さっきから、なにやら、心の臓も踊り狂っています。

ああ……てっ、もうこんな時間?

後5分もないじゃないですか!

「あのう王子様、私お花を摘みに行って来ますわ」

「ああわかったよ」

王子様の優しい声に、耳が満足しているのが分かりました。


で、私インザトイレ

「魔女のおばさまー」

小さい声で呼んでみました。

「なんだい?」

またも個室から現れます。

「あのう延長できませんか?」

「はぁ?」

やっぱり無理ですわよね~。そう思っていたのに、

「ちょっと待ちな」

そう言うと、おばあさんはまたもやスマフォをとりだしたの

「おばあさん! ですから世界観!」

「うるさい小娘じゃのう。今はな、ITの時代なんじゃよ。嫌なら延長なしでもいいんじゃよぉ」

クッ……まあ、良いわ。

「お願いします」

「ちょっと待っとれ」

そう言うと、画面を操作して、

「あ、ジェームスかい? 時間課のワトソンへつないどくれ。

……あ、ワトソンかい? 例の子なのじゃが、時間延長はだめかのう? え? そんなにするのか? ああ……まあ、いいか。じゃ、それでいいから宜しく頼んだよ。それと、悪いんじゃが、人事課の田中さんへ繋いでおくれ。

……ああ、田中さんかい? 今日、残業するから、残業手当をよろしくじゃ」

電話を終えたおばさまが、にこやかな笑顔を向けてくる。

「20分なら良いぞ」

「本当!? ありがとうおばあさん」

「ああ、あとな、一つアドヴァイスじゃ。その靴を階段に捨てると運気アップ。じゃそうじゃ」

おばあさんはスマフォの画面を見ながらそう言ってきた。

「そ、そう……。分かったわ! 有り難う!」


「お待たせ! 王子様」

「お帰り。これ、どう?」

そう言って、白ワインを勧めてくれたわ。

「ありがとう! でも……ごめんなさい。私、急用を思い出したの……」

白ワインを受け取りながら、そう言った。

「もう帰らないと……」

「待ってくれ」

白ワインを突き返すと、王子様は呼び止めてくれた……でも私は帰った。

さっき半脱ぎにしておいたガラスの靴を置いて…………。


数週間後

私はいつも通りお義姉様方の言いつけで町へお買い物に行ったの

そうしたら遠くの方に人だかりが!

なにかしら……? そう思い行ってみると、

なんと、王子様が! それといつも一緒にいる側近の方もいる!

「えー。この靴に足がはいった人は王子様と結婚できます」

マジで!? よっしゃぁ!

そう思って行ってみたんです。


もう少しで私の番だわ……。(ドキドキ)

「ああ! 貴方が、私の理想の女性だ!」

「はあ?」

あれ? 私まで順番回って来てないよ? あれ?

周りの人達はなんだぁ……といった顔持ちで掃けていく。

呆然と立ちすくむ私。その目の前には嬉しそうに靴を履く女性が。え? ドウイウコト?

クイっと袖が引っ張られた。

「あれ? おばさま?」

そこには、魔法使いのおばさまが立っていた。

「本当にすまないのう。あのアドヴァイスには続きがあってな? 獅子座の方は、左の。魚座の方は右の靴を脱ぎ捨てろ、とな。いやあ、本当に悪いのう」

……私、獅子座……。右、脱ぎ捨てた…………。

「悪いじゃ済まされないわよ! どうしてくれるの? え? 私は幸せに成れないままあの継母達と暮らしていくの? そんなのごめんよ!」

「シンデレラよ。幸せは、やってくるモノじゃない。掴むモノなのじゃよ……」

「いい話風に言ってもダメよ! ああ……。ああ……。信じられない」

「じ、実はのう。シンデレラ。儂……儂の正体なのじゃが……」

「あぁ? なんだよ? こんなときによぅ?」

つい、口調が荒くなってしまいます。

「お前……キャラ変わりすぎだよ……。実はな? 儂は……儂は、お前の……お母さん……なんだよ?」

「え……? お母さん?」

「そうよ」

一瞬、よく分からなかったが、フードの下には、写真でしか見たことのないお母さんの姿が。

「本当に、お母さんなのね? でも、一体何で?」

「天国から見てたら、おまえが不憫でね。丁度、天界の役所の有給も溜まってたし、一念発起して、神様に頼んでみたの。そうしたら、案外とんとん拍子に進んで、こうなったって分け」

「…………不憫? 不憫に思ったのなら、最期までしっかりしてよ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~」


それから数時間後、お母さんは天界へ帰って行きました。もう二度とはこちらへ来られないそうです。母と娘の邂逅は、始終親子げんかでした。でも、私、お母さんと喧嘩するなんて……こんな経験始めてだし。なんか幸せでした。そうよ。なにも王子様と結婚することが幸せじゃないわ! 幸せは自分で掴むモノ。なのよね? お母さん?

私は空を見上げて小さく微笑んだ。


END


文化祭に提出する際、加筆修正したので、上げます。

読んで下さった方に至高の感謝を!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ