表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

俺、ヒーローです。

 ヒーローってなんだろう。男としてやっぱり思い浮かぶのは、子どもの頃テレビで見た3分間の巨人、仮面を付けたライダー、女の子だったらフリフリの服を身につけた魔法少女かなあ。男の子にも女の子にも、頭がパンでできているヒーローは人気だよね。夢があるよね、やっぱり。悪者をやっつけるために、超人的な力を持ってどこからか現れるヒーロー。正義の為に身を以て悪を倒す。子どもだったらみんな憧れる。

 でもさ。考えてみてよ。世の中、正義と悪、白黒付けられるわけがない。だってそうじゃん。悪者とされている人はさ、もしかしたらジャン・バルジャンみたいに大切な人を守るためにやっているのかもしれない。正義とされている人はさ、「人を助けている自分って素晴らしいっ!!」って感じで自己愛に溺れているのかもしれない。

 結局はさ、世の中に良い人も悪い人もいない。正義も悪も結局は全部自分の中にあるんだよね。だから、ジャン・バルジャンよろしくパンを盗んで「大切な人の為にやっているからどうせ許されるだろう」とか考えちゃったら結局悪い人だし、人を助けて「こんなに人を助けられるのは自分しかいないな。よしもっと助けよう」ってなるなら、結局いい人だよね。だからさ、世の中人と見比べるのはやめようよ。答えは全部自分の中にあるんだよ。




「起きなさーーーーーーーーい!!!!!」


 お母さんの声が家中に響き渡る。1階のキッチンから2階にいる俺の部屋まで声がクリアに聞こえるなんて、ウチの壁がくしゃみかなんかで破れるくらい薄いか、お母さんが昔オペラ歌手だったとしか考えられない。ゆっくりと起き上がり、時間を確認すると、8時15分。学校は9時からだから、今から準備すればギリギリ間に合う時間帯だ。


「朝飯捨てるぞ--ーーーーーー!!!!!」


 実際、お母さんは昔オペラ歌手だったらしい。現役時代は、声でコップを割ることができたらしい。このままだと、コップはおろか朝飯の皿まで割れてしまうから、急いでリビングへと向かうことにする。


「おはよう。お母さん。」

席に着くと同時に、お母さんはオレンジジュースが注がれたコップを持ってくる。

「あんた、最近夜遅くまで寝ないから朝起きれないのよ!なんか怪しいことやってんじゃないでしょうね?」

耳元で大きな声を出され、眠気が吹っ飛ぶ。

「なんで夜遅くまで起きてるって知ってんのさ。お母さんこそ、夜遅くまで起きてるってことじゃん。」

「お母さんはあんた達のために夜遅くまで仕事してんのよ!知ってるでしょ!」

その通り。お母さんは主婦をやりながら、PCを使った仕事をしている。最近は簡単な事務作業なら家でもできる時代だから、手のかかる俺達三人兄弟の為に働いてくれているのだ。ちなみに父親は、しがない商社マンで海外に単身赴任中である。


 さて、ここで問題です。俺は夜遅くまで何をやっているのでしょうか。母親は夜遅くまで「起きている」と言っていましたが、実際には俺は夜遅くまで家にはいないのです。次男である俺は、弟に頼んでいつも家に帰ったフリをしているのです。え?家にも帰らず何をしているかって?そりゃあ決まっているでしょう!ヒーロー業ですよ!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ