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冬の悪魔

作者: 師走




冷たい風に乗って、悪魔はヒトの前に現れるのです


『寒いのならばおいで、春に連れていってあげる』



かれの薄桃色の髪の毛と、香る甘い匂いに誘われて、ヒトは彼の中に閉じ込められてしまうのです


終わらない冬に









冬の悪魔は寂しがり屋で、だからヒトを閉じ込めます


吹き荒れる吹雪の中でも、しろの世界に一人きりでも平気なように


捕らえたヒトが生きている間は、小さな温もりを感じて、安心出来るから


けれど彼は冬の化身だから、捕らえられたヒトは間もなくその冷たさに殺されてしまうのです


なので彼は、いつも一人きりで、




いつもヒトを探して歩いてました







ヒトは彼が声をかければ、すぐに寄ってきました


彼が近づくと周りは凍り、命の火が大きく揺れるからです


死を思わせる寒さは恐ろしくて、冬の化身だけど、暖かな容姿につられてしまうから



けれど彼は、触れば凍るような、冷たい悪魔なのです


春を求めて彼の手を握った人々は、ただただその突き放すような冷たさに、目を見開くことしか出来ないのです










冬の力が弱まり、地面の下がざわざわ蠢き初めます


するとかれは、ゆっくり目を瞑るのです


生き物の多くが彼に対しそうしたように



目を開けば、春だから






黄色い風がかれを包んで、

柔らかにひかります




波のように揺れるそれに身を任せ、かれはまた目を瞑るのです


彼にはそれに抗う理由が、何一つなかったから


薄れていく彼を、柔らかに微笑み見守る春の眩しいような温もりに強く惹かれながら


彼はやはり、ただただ消されてゆくのです




彼が消えたあとに残るのは、春と、わずかばかりの雪のあと










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