表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

冬の悪魔

作者: 師走




冷たい風に乗って、悪魔はヒトの前に現れるのです


『寒いのならばおいで、春に連れていってあげる』



かれの薄桃色の髪の毛と、香る甘い匂いに誘われて、ヒトは彼の中に閉じ込められてしまうのです


終わらない冬に









冬の悪魔は寂しがり屋で、だからヒトを閉じ込めます


吹き荒れる吹雪の中でも、しろの世界に一人きりでも平気なように


捕らえたヒトが生きている間は、小さな温もりを感じて、安心出来るから


けれど彼は冬の化身だから、捕らえられたヒトは間もなくその冷たさに殺されてしまうのです


なので彼は、いつも一人きりで、




いつもヒトを探して歩いてました







ヒトは彼が声をかければ、すぐに寄ってきました


彼が近づくと周りは凍り、命の火が大きく揺れるからです


死を思わせる寒さは恐ろしくて、冬の化身だけど、暖かな容姿につられてしまうから



けれど彼は、触れば凍るような、冷たい悪魔なのです


春を求めて彼の手を握った人々は、ただただその突き放すような冷たさに、目を見開くことしか出来ないのです










冬の力が弱まり、地面の下がざわざわ蠢き初めます


するとかれは、ゆっくり目を瞑るのです


生き物の多くが彼に対しそうしたように



目を開けば、春だから






黄色い風がかれを包んで、

柔らかにひかります




波のように揺れるそれに身を任せ、かれはまた目を瞑るのです


彼にはそれに抗う理由が、何一つなかったから


薄れていく彼を、柔らかに微笑み見守る春の眩しいような温もりに強く惹かれながら


彼はやはり、ただただ消されてゆくのです




彼が消えたあとに残るのは、春と、わずかばかりの雪のあと










評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ