扉を開けたら……
私はビルの清掃員だ。
掃除道具を出そうと扉の取っ手に手をかけた。
すると扉の向こうでガサガサと音がする。
開けてみたいけど、何があるのかわからない。
人?獣?それとも……
不審者?だったら怖い。
誰かを呼んでこよう。
でも今はまだ誰も出勤していない。
警備員もいない。
どうしよう。
よし、思い切って開けてみよう!
いや、待て。
不審者で刃物を持ってたら……
やっぱりダメだ。
殺されるのは嫌だ。
でも、子供だったら?
誰から逃げて隠れたのかもしれない。
そうだとしたら開けないと。
待って、もし幽霊だったら?
前に聞いたことがある。
このビルから飛び降りた人がいるって。
ああ、やっぱりやめよう。
子猫だったらどうしよう。
閉じ込められて可哀想。
でも猫だったら泣くよね。
その時だった。
社員が出勤してきた。
「おばさん、掃除もしないで何してるのよ」
「あ、いえ、あの」
言う間も無く扉を開けてしまった。
「ぎゃぁぁぁぁ!!」
私達は暗い扉の中に吸い込まれていった。
気がつくと私は手足が動かなくなっていた。
周りは暗くひんやりする。
何が起こったのかわからない。
「うぅぅぅぅ」
隣で社員さんのうめき声が聞こえる。
扉が開いて同僚の声が聞こえた。
「何この掃除道具、おばさんの名札がかかってる。
バケツには社員さんの名札……?」
「ガサガサ……うぅぅぅ」
「ん?なんか聞こえたみたい。ま、いっか」
同僚が私の体を持ち上げ、逆さまにした。
目がまわる。
「床拭かなくちゃ」
私の頭はバケツの中に放り込まれ水浸しになった。
ーーやめてぇ、息ができない
私の頭を床に押し付けて擦っている。
ーーい、痛い、か、髪の毛が……
私はモップになっていた。




