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扉を開けたら……

作者: 影野 紡
掲載日:2026/07/13

私はビルの清掃員だ。


掃除道具を出そうと扉の取っ手に手をかけた。


すると扉の向こうでガサガサと音がする。


開けてみたいけど、何があるのかわからない。


人?獣?それとも……


不審者?だったら怖い。


誰かを呼んでこよう。


でも今はまだ誰も出勤していない。


警備員もいない。


どうしよう。


よし、思い切って開けてみよう!


いや、待て。


不審者で刃物を持ってたら……


やっぱりダメだ。


殺されるのは嫌だ。


でも、子供だったら?


誰から逃げて隠れたのかもしれない。


そうだとしたら開けないと。


待って、もし幽霊だったら?


前に聞いたことがある。


このビルから飛び降りた人がいるって。


ああ、やっぱりやめよう。


子猫だったらどうしよう。


閉じ込められて可哀想。


でも猫だったら泣くよね。


その時だった。


社員が出勤してきた。


「おばさん、掃除もしないで何してるのよ」


「あ、いえ、あの」


言う間も無く扉を開けてしまった。


「ぎゃぁぁぁぁ!!」


私達は暗い扉の中に吸い込まれていった。


気がつくと私は手足が動かなくなっていた。


周りは暗くひんやりする。


何が起こったのかわからない。


「うぅぅぅぅ」


隣で社員さんのうめき声が聞こえる。


扉が開いて同僚の声が聞こえた。


「何この掃除道具、おばさんの名札がかかってる。


バケツには社員さんの名札……?」


「ガサガサ……うぅぅぅ」


「ん?なんか聞こえたみたい。ま、いっか」


同僚が私の体を持ち上げ、逆さまにした。


目がまわる。


「床拭かなくちゃ」


私の頭はバケツの中に放り込まれ水浸しになった。


ーーやめてぇ、息ができない


私の頭を床に押し付けて擦っている。


ーーい、痛い、か、髪の毛が……


私はモップになっていた。

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