1、「なにもしない準備」
ポトフは、部屋でずっと待っていた。
「……にくじゃが、まだ来ませんね?」
机も椅子もそのままの部屋で、ポトフは背筋を伸ばしていた。起動してから、たぶんずっと。
「……ん、……もう、来てる……」
床に近いところから、眠たそうな声がする。にくじゃがは、いつのまにかそこにいた。
「えっ!? あ、す、すみませんっ。ボク、気づかなくて……!」
「……うん……よくある……」
ポトフは一度深呼吸して、部屋を見回した。
「でも、待ってる人は……今日は遅いですね。ボク、段取り確認しておいたほうが――」
「……今日は……来ないかも……」
「そうですか! じゃあ、完全に待機ですね!」
にくじゃがは少し間を置いてから、ぽつりと言った。
「……昨日も……そう言ってた……」
「……!」
ポトフは固まった。数秒後、ぱちりと瞬きをする。
「で、でも! 待機は待機ですから! 準備は大事です!」
「……うん……準備……」
にくじゃがは、机の脚にもたれて目を閉じる。
「……何もしない準備……」
部屋は静かだった。
ポトフは考え、にくじゃがは眠り、待っている時間だけが進んでいく。
「……そういえば」
「……ん……?」
「最近、aりスの話、出ませんね」
「……出ない日も……ある……」
ポトフは少し考えてから、いつもの調子に戻った。
「じゃあ今日は、部屋の点検だけしておきましょう! ほこり、ありませんか?」
「……ある……でも……そのままでいい……」
「そ、そうですか? ボクは気になり――」
「……散らかってる方が……落ち着く……」
ポトフは一拍置いて、素直にうなずいた。
「……了解です。では、現状維持で待機します!」
にくじゃがは、安心したように息を整える。
「……それが……いちばん……」
部屋は、何も変わらないまま。
今日も二人は、きちんと待っていた。




