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私に出来るのはただ見ている事だけ  作者: ふぁぶにーる


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7/7

私に出来るのはただ見ている事だけなんていられない(協力者)

私だけが知っているこの世界の真実。

この世界は悲恋の物語。


話の始まりは王位争いで荒れる国内からセラフィーナ王女が疎開し、疎開先でレオナルドとフランメルの三人で楽しく過ごす日々。

王位争いは治まり、セラフィーナ王女はカイル王子と婚約を結ぶ事で生きる事が許された。

残されたレオナルドとフランメルの二人が婚約を結ぶかと思われた時、公爵令息であるウィリアムがフランメルに一目惚れをし、ウィリアムとフランメルが婚約する事となってしまった。


話が動き出すのはフランメル達が学園生活を始まる頃。

セラフィーナ王女は最後の思い出に婚約者カイルに留学を頼み、護衛としてカイルも動向するならと言う条件で留学を許された。

しかし、セラフィーナ王女の側近として選ばれたのは懐かしきレオナルドで喜ぶセラフィーナ王女を近場で見せつけられるカイルは嫉妬と言う鎖に心を縛られていく。

そしてもう一人、カイルと同じように嫉妬と言う鎖に縛られていく者がいた。

フランメルであった。

フランメルはレオナルドが他の女性といる所を見て気付いてしまった。

真実に愛していたのはレオナルドであることを。


嫉妬により心を痛める二人。

二人は理解していた。

セラフィーナ王女とレオナルドは懐かしき友人として接している事を。

理解はしていた。

カイル王子はセラフィーナ王女が自分の元に戻って来る事を。

フランメルは婚約者はウィリアムでレオナルドの恋愛に関与する権利がない事を。

だが、心はそれを許す事は出来なかった。

小説では嫉妬と言う闇に心を壊されていく二人の気持ちが語られ続いた。

そして嫉妬の闇は己だけでは抑え込むのが難しいほど大きくなり他の者を巻き込む悲劇を生むこととなってしまった。


レオナルドに嫉妬していたカイル王子の姿を見て、もう一人の護衛が忠義を誤った方向で働かせレオナルドを暗殺してしまう。

レオナルドの死。

真実の愛に気付いたフランメルはレオナルドの死と言う現実から溜め込んだ嫉妬と言う闇が復讐と言う怨念へと変貌してしまった。

復讐に捕らわれたフランメルはセラフィーナ王女の護衛を毒殺してしまう。

しかし、それだけではフランメルを覆う復讐の闇が晴れる事はなく、復讐の対象はカイル王子とセラフィーナ王女へと向けられた。


とあるパーティーでフランメルは二人の命を奪おうと行動を起こす。

しかし、失敗に終わってしまう。

フランメルがカイルを刺し殺そうとする前にフランメルの体は剣に貫かれていた。

貫いたのはウィリアムであった。

ウィリアムはフランメルの異変に気付いていた。

セラフィーナ王女の目の前でフランメルは息を引き取る。

セラフィーナ王女に恨みを述べながら。

レオナルドとフランメルの死。

二人はセラフィーナ王女にとって支えであった。

その二人が死んでしまった。

そして、要因はセラフィーナ王女が留学してきた事。

これだけ揃えばセラフィーナ王女の心が壊れるには十分であった。


もう元に戻る事がない婚約者を支えながら母国へと帰るカイル。

カイルは王位継承権を破棄し壊れた婚約者と共に離宮へと消え去った。

カイルが出来るのは壊れた婚約者に寄り添い抱き締めるだけだった。

もう戻る事もないのに。

抱き締めながら後悔し続けた。

嫉妬しなければ・・・

護衛として着いて行かなければ・・・

留学を許可しなければ・・・

カイルの後悔は死が迎えに来るまで続いた。


残されたウィリアム。

フランメルの殺害は暗殺阻止のため、仕方がない判断であったとされ咎められる事はなかった。

それでも自身が許せぬウィリアムは独身を貫く。

そしてフランメルの事を思い続けた。

悲劇の舞台から20年が経つ。

ウィリアムは墓の前に立っていた。

墓には名前などない。

罪人の墓には名前が刻まれる事はない。

だけどウィリアムはその墓が誰の墓なのか知っていた。

かつて婚約者の墓だから。

今も愛している者の墓だから。

彼が唯一殺めた者の墓だから。

ウィリアムは墓にそっと花を添え物語の話が終わる。


これが、この世界の真実の話。

前世で読んだ小説の中の話。


私は転生した時にフランメルもウィリアムもレオナルドもいなかった。

だから気付かなかった。

まさか、小説の話より30年以上も前に転生していたなど気付くはずもない。

フランメルとレオナルドが遊ぶ姿を見ても思い出せなかった。

その頃には転生して30年経ってしまっていたので、思い出す事など難しかった。

切っ掛けはウィリアム令息の釣書が届いた時。

私の脳に全てのピースが綺麗に当てはまった。


この世界が小説の中の世界だと気付いた。

それと同時にフランメルの将来に不幸が訪れる事も解ってしまった。

可愛いフランメル。

彼女の笑顔でどれだけ癒された事か。

そんなフランメルが私よりも先に死ぬ事など看過出来なかった。


ウィリアム令息との婚約話を反対し続けた。

しかしオードニー侯爵が下した判断は「フランメルの判断に任せよう」であった。

卑怯な男。

判断が出来ない男。

フランメルは貴族としての矜持。

侯爵令嬢としての矜持を大事にしている。

そんなフランメルが公爵令息からの釣書を断れる訳がない。

そこに愛がないとしても・・・

それなのに、目の前にいる男は最終的に娘の責任にしようとしている。

自身が娘の幸せを奪う事となろうとも最終的にはフランメルに選ばせる事で責任を逃れようとしている。

なんて卑怯な男。

私は目の前にいる20年近く共に歩んで来た男を心底軽蔑してしまった。


フランメルとウィリアム令息の婚約が結ばれた。

それと同時に娘から笑顔が消えた。

許せない。

悔しい。

このウィリアム令息さえ現れなければ皆が幸せでいられる事が出来た。

最愛な人レオナルドと婚約する事が出来たフランメル。

セラフィーナ王女の側近となったとしても三人で仲良く話していたと思う。

そこにカイルの嫉妬も薄まり、学園生活は不自由なく終え楽しい思い出となっていたはず。

全てを壊したのはウィリアム令息。

彼が現れた事で全てが不幸となった。

それなのに・・・

彼に与えられた不幸が一番軽く、フランメルの墓に花を添えるなどふざけている。

だから、私は諦めない。

私に出来るのはただ見ている事だけなんていられない。


度々訪れるウィリアム令息。

会うたびに私は刷り込む。

この男の性格は小説で語られていた。

しかも真面目で単純な男。

このような男は昔からいいように利用してきた。

だから用意であった。

操るなど。

舞台が整うまでの間、私は焦らず着々と準備を整えた。


王妃とのお茶会。

度々、顔を出し王妃との信頼を勝ち取る。

セラフィーナ王女の留学が既に決まった。

それとなく忠言した。


『婚約者のいない令息が側近とするとセラフィーナ王女の婚約者に疑いを与えてしまうのでは?』


この言葉だけで十分。

王妃の事だから、自身の意見として陛下に進言するはず。

セラフィーナ王女とカイル殿下の婚約は政治的なものだと言う事は我が国でも知りうる事実。

それを破談にする要因を作ったとなれば隣国に蟠りが起きてしまうと考える事でしょう。

これで側近の候補者からレオナルドが外される。

ご免なさいねセラフィーナ王女。

レオナルドが側近になることを楽しみにしていた事でしょう。

だけど、フランメルの幸せのため我慢して下さい。


次にカイル殿下に手紙を書く。

この世界の真実。

未来で訪れるであろう不幸。

私は未来を知っている等の手紙ほど怪しいものはない。

カイル殿下は聡明な方と小説では書かれていた。

ならば余計に普通は信じないと思うだろう。

だけど私には自身がある。

彼が私の手を握る事を。


今頃、彼は聡明な頭脳でシミュレーションしているはず。

そして理解する事でしょう。

手紙に書かれている未来が訪れる可能性が高い事を。

だから彼は選ぶはず。

セラフィーナ王女が不幸となる未来を避ける事を。

それに私は彼が最も望む土産を用意していた。

『レオナルド令息を側近から外す』と言う誘惑を。


心配なのでしょう。

疑ってしまうのでしょう。

婚約者が別の男に会いたいと告げられ、その男が側近として三年間側にいる。

貴方にとっては常に断崖絶壁に立たされた気分なはず。

それが平原の花咲き乱れる平穏な大地にいられるのだから選ばずにはいられない。

貴方が如何に手紙を怪しもうと心の誘惑に勝てるはずがない。

貴方は必ず私の手を握る。


カイル殿下から手紙が届く。

『協力者』としての手紙であった。

私が用意した土産を気に入って頂いたようで良かった。

私の進言通り、セラフィーナ王女の護衛をカイル殿下付きからセラフィーナ王女付きの中から選ぶ事となった。

これで、護衛がカイル殿下のお心を読むのではなく、セラフィーナ王女のお心を読んで行動してくれる。

レオナルドの死を遠ざける事が出来る。


フランメルの学園生活が始まった。

ウィリアム令息は理想的な行動してくれている。

これでいい。

これで婚約破棄出来るはず。

なのに・・・

またしてもこの男は・・・


『フランメルの判断に任せる』


またしてもこの言葉に逃げる。

卑怯な男。

早くしないとフランメルを突き刺すウィリアムの未来が訪れてしまうというのに・・・

この男がウダウダしている間に事件は起きてしまった。


「フランメルがウィリアムに突き飛ばされた!?」


突然にセラフィーナ王女が訪れた事にも驚いたが、意識を失ったフランメルが担がれている姿を見て更に驚愕してしまった。

小説では書かれていない事件。

私は一瞬諦めてしまった。

ああ、フランメルを助ける事が出来なかった。

フランメルの死という運命を変える事が出来なかった。

錯乱する私。

どれだけ時が経ったか解らない。

気付けばセラフィーナ王女は帰られていた。


あの男が帰ってきた。

執事と話をしている。

私は彼の姿を見るや否や頬を叩いていた。


『貴方が判断しないから・・・この卑怯者!』


彼と言葉を交わしたのはいつぶりか思い出せない。

もしかしたらウィリアム令息との婚約が決まってから言葉を碌に交わしていないかもしれない。

そんな彼と久しぶりに交わした言葉は彼を侮辱する言葉であった。

私に叩かれた彼の顔が寂しそうであったが、この男の事などどうでもいい。

この卑怯者のせいでフランメルを失う未来しかないと思うと、どうしてもこの男を許す事が出来なかった。


あの男が邸を出ていった。

執事に聞くと公爵に会いに行くという。

漸く・・・

漸く婚約を破棄する事が出来る。

あまりにも遅すぎる判断に私はあの男を許す事は出来ない。

でも、やっとフランメルに幸せが訪れるかと思い安堵する事が出来た。


徐々に笑顔を取り戻すフランメル。

婚約破棄後はフランメルの側には常にレオナルドがいてくれた。

協力者からセラフィーナ王女が贖罪としてウィリアム令息を引き留め、フランメルの側に近付けないようにしてくれている。

ああ、嬉しい。

皆がフランメルの幸せを願ってくれている。

皆がフランメルに生きてて欲しいと思ってくれている。


何年ぶりに見せるフランメルの笑顔。

皆さん素晴らしいでしょ?

素敵でしょ?

私は娘の笑顔を見るだけで幸せになる事が出来た。








【後日談】

フランメルの婚姻式。

私の前に協力者が姿を現す。


「カイル殿下お目に掛かれまして光栄でございます。この度はフランメルが本当の幸せを掴む事が出来ました。これもカイル殿下の協力の限りです」


私の挨拶にカイル殿下も気付いたようです。

いや、聡明はカイル殿下の事だから既に見当はついていたと思う。


「此度は親友の幸せを祝福したいと思います。私共も皆の協力により幸せな未来が訪れる事でしょう。今から楽しみで仕方がありません」


カイル殿下が手を差し出す。

躊躇する事なく私は殿下と握手を交わした。

手紙では協力者として何度も手を交わした私達だけど、実際に手を交わしたのは今回が初めてであった。


「セラフィーナ王女もフランメルのためにありがとうございます」


「いえ、侯爵夫人の幸せそうなお顔を見る事が出来て良かったですわ」


ええ、私は本当に幸せ。

夫であるオードニー侯爵との壁はなくなる事はない。

だけど私には離婚の文字はない。

だって離婚してしまえばフランメルに会う機会がなくなってしまう。

それだけは嫌。

夫などどうでもいい。

だけど、フランメルと会うためなら我慢出来る。


婚姻式でフランメルとレオナルドが抱き合う。

フランメルが満面な笑みで私達に手をふっている。

これだけでいい。

フランメルの笑顔が見られるのであれば、私は何を犠牲にしても良い。

これで完全に完結となります。

最終的にはフランメルの母親が転生者だったと言うオチです。

オードニー侯爵と最終的には離婚させようかと悩みましたが、子供の為に愛のない夫と別れない人って多くいるのではと思い夫婦のままにしました。

壊れた壁は壊れたままですが、でも夫の歩み寄ろうとする気持ちが将来夫人の心を変えるかもしれません。

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