私に出きるのはただ見ている事だけ(王女の婚約者)
私に出来るのはただ見ている事だけ。
『最後の思い出に留学したい』
最後に友達に会いたい・・・
婚約者の願いの言葉。
私は彼女の言葉を信じるしかない。
婚約者が住まう国は昔荒れていた。
よくある王位争いによって。
彼女の姉も暗殺された事により彼女も避難が必要となった。
跡目争いも収まり、彼女の命も保証され戻る事が出来た。
彼女は私と婚約する事で生かされる事が許された。
だからそこに愛がない事は解っている。
彼女は会う度に笑顔で迎い入れてくれる。
その笑顔に愛がない事は解っている。
解っているが惹かれてしまった。
そんな彼女の頼みだ嫌だと言える訳がない。
それが、相手が男であったとしても。
彼女が私の元に嫁ぐ事になれば国を幾つか跨ぐ事になり、簡単に会う事は出来なくなるだろう。
だから、彼女の願いを叶える事とした。
私の心に嘘を付く事になろうとも。
彼女が笑う。
感謝の言葉を言う。
彼女の微笑みを見ることが出来て幸せな気持ちと、その微笑みの矛先を考えると虚しい気持ちで揺さぶられる。
君のその微笑みは私への感謝の笑みなのか・・・
君のその微笑みは別の男を想っての笑みなのか・・・
それでも私は彼女の幸せを願う事しか出来ない。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
〖ご報告〗
レオナルド・バッハガルド侯爵令息が側近として常にお側にいる事は殿下が三年も苦しむ事と思い、別の者を側近に致しました。
協力者より
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
突然に現れた協力者。
誰かは解らない。
だが、私はこの協力者によって心拍が落ち着く事となった。
彼女には申し訳ない。
彼女は楽しみにしていたはず。
しかし、私は三年間もただ見ている事だけなど耐えられない。
だから、私は協力者を受け入れた。
この者が誰か解らずとて・・・
この者の目的が解らずとて・・・
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
〖ご報告〗
ウィリアム・ユーグレイ公爵令息にはレオナルド・バッハガルド侯爵令息を近付けないように忠告しておきました。
殿下のお心に平和が訪れますよう願っております。
協力者より
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
レオナルド令息は数回の接触は見られたもののウィリアム令息の苦言により近付かなくなった。
協力者の言う通りだ。
遠くにいるレオナルド令息を見つめる彼女の姿を見ると罪と言う刃に心臓を抉られるようであった。
だが・・・
彼が近付かなくなるに連れ笑みを浮かべてしまう。
なんて最低な男なのだ。
なんて情けない男なのだ。
なんて心が狭い男なのだ。
自分に自分を幻滅してしまう。
それでも、私はただ見ている事だけは止められなかった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
〖ご報告〗
側近として選ばれましたウィリアム・ユーグレイ公爵令息ですが、少々可笑しな行動が見られます。
婚約者であるフランメル・オードニー侯爵令嬢との交流が確認出来ません。
どうやら、手紙すら出していないようです。
彼が婚約者と距離を取り始めたのはセラフィーナ王女殿下の側近として選ばれてからです。
私の思い過ごしだけで済めば宜しいのですが、少々警戒された方が宜しいかもしれません。
協力者より
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
確かにあの男の行動は不自然過ぎる。
二人だけ座ってランチするなど考えられん。
休みの日など邸周辺をウロウロしていた。
まさか、あの男も彼女の魅力に気付いたと言うのか?
婚約者がいる令息ならば安心かと思ったが、それも彼女の魅力の前では無意味だと言うのか・・・
しかし信じられん。
あの男は、そのような男にはみえなかった。
私の印象では彼は婚約者の事を好いているはず・・・
ならば、何故に婚約者と会おうとしないのだ・・・
何か心配だ。
私は協力者の手紙を今一度見返す。
協力者・・・
果たして私は協力者の事を信じて良いのだろうか?
私は始めて協力者の事を疑った。
姿が解らない協力者。
本来なら最も疑わしい人物。
真っ先に疑わなければいけない人物。
そのような人物の言葉を子守唄のように心を落ち着かせられた事で今まで疑う事をしなかった。
私は今頃になって協力者を疑う己の愚かさに頭を抱えた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
〖ご報告〗
どうやら、ウィリアム・ユーグレイ公爵令息は婚約者であるフランメル・オードニー侯爵令嬢の様々は表情を見て喜んでいるようです。
問題なのが、笑みであろうが悲しみだろうが関係ないようです。
どうやら危うい性格をされておりますのでご注意下さい。
協力者より
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ウィリアムはセラフィーナに想いを寄せていない。
ウィリアムの心は婚約者にあった。
そしてもう一つ解った事がある。
ウィリアムがクズである事が。
ウィリアムが抱える闇はヤバすぎる。
婚約者の姿を見て顔を和らげる。
言葉だけ拾えば微笑ましく思えてしまう。
しかし、彼が一緒にいるのはセラフィーナだ。
婚約者ではない。
別の女性と婚約者が一緒にいる姿を婚約者はどのような感情で見ていた事だろうか・・・
私ならば解る。
私だから解る。
二人だけで座る姿を見て出来る事。
私に出来る事はただ見ている事だけであった。
彼女も同じ気持ちに違いない。
そんな彼女が微笑ましく彼の事を見ているだろうか?
嬉しそうに見ているだろうか?
彼女は切なかったのに違いない。
彼女はやりきれなかったのに違いない。
私だから解るのだ。
そのような婚約者の姿を見て顔を和らげる、あの男の心は腐っているとしか思えない。
心が腐った男が彼女の側にいる。
私は見ているだけではいられなかった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
〖ご報告〗
オードニー侯爵はこれまでの経緯を知っても『娘の意思を尊重したい』と判断からお逃げになっております。
レオナルド・バッハガルド侯爵令息はフランメル・オードニー侯爵令嬢に想いを寄せている事は明白です。
殿下の心を考えれば、二人が婚約を結ぶ事が出来れば幸いかと思いますが、なかなか上手くは行かないようです。
協力者より
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
レオナルド令息はセラフィーナよりもフランメル令嬢に想いを寄せている事は私にとって吉報であった。
ならば・・・
ウィリアム君には申し訳ないがレオナルド令息にはフランメル令嬢に婚約して貰おう。
セラフィーナもそのようにしたいようだ。
ここで始めて、彼女と想いが一緒になったように思えた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
〖ご報告〗
フランメル令嬢が意識を失った件について、同日にユーグレイ公爵邸へオードニー侯爵が向かったようです。
おそらく、婚約破棄について話されるものかと思われます。
協力者より
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
やっと動いたか。
判断する事が出来ない侯爵も娘へのここまでの仕打ちを見れば動かざる得ないだろう。
此で動かないようなら、この国の王に圧力を掛ける所であったが、その必要はなくなった。
此でウィリアム令息とフランメル令嬢の婚約破棄は間違いないだろう。
となれば、レオナルド令息とフランメル令嬢は誰の気兼ねをする事なく婚約を結ぶ事が出来る。
此ならばレオナルド令息がセラフィーナの側近になったもしても安心出来るだろう。
セラフィーナも喜んでくれるはず。
此で漸くセラフィーナの学園生活が本当に始まろうとしているのだ。
セラフィーナはこの国に来てからは仮面だけの笑顔しか見せていない。
漸く本当に心から笑顔で過ごす事が出来る。
そう思うと私も顔を緩ませずにはいられなかった。
しかし、彼女の取った行動は私の予想を越えていた。
まさか、二人の幸せの為にあの男を側近として側に置いおくとは思わなかった。
私は反対した。
しかし彼女の決意は変わらない。
親友を傷付けていた自身が許せず、親友の為に自身の最後の思い出として訪れた留学を犠牲にし、親友の為に危険な男を側に置くことを選んだ。
何て苛烈なんだろうか。
私は更に彼女に惹かれてしまった。
ならば誓おう。
私が彼女を守る事を。
そして、彼女が学園を卒業してからの生活を幸せにしよう。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
〖ご報告〗
ウィリアム令息はフランメル令嬢との婚約が破棄となった事に気付いておりません。
また、婚約破棄後にレオナルド令息とフランメル令嬢は幾度かデートを行い、先月に婚約を結ぶ事が出来ました。
これもセラフィーナ王女殿下がフランメル令嬢の幸せのために我が身を犠牲にして下さっているお陰です。
協力者より
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
これでいい。
セラフィーナの覚悟を成就させる事が私の使命。
ウィリアム令息をフランメル令嬢に近付かせない。
これでいい。
ウィリアム令息には申し訳ない。
だがセラフィーナの怒りを買った君が悪い。
そして、ここに来て協力者が始めて手紙に感情を露にしてきた。
この協力者の目的はウィリアム令息との婚約破棄。
いや、それよりもフランメル令嬢の幸せを願っている。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
〖ご報告〗
この度、レオナルド令息とフランメル令嬢が婚姻を結ぶ事となりました。
フランメル令嬢はまだセラフィーナ王女殿下の事を誤解しているようですが、レオナルド令息は理解して頂いているようです。
セラフィーナ王女殿下にも招待状を出して貰えるよう頼みましたので、婚姻式に参加して頂き二人の蟠りが解消出来ればと思っております。
尚、新婚旅行を貴殿の国を勧めておりますので、訪れる事になれば二人を宜しくお願い致します。
協力者より
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
これが協力者からの最後の手紙だ。
招待状を見て彼女は舞い踊っているかのように落ち着きがない。
学園生活三年間で一度も見る事が出来なかった彼女の笑顔。
もう、彼女から取り上げてしまったのかと後悔していた。
だが、今また笑顔を見せてくれている。
私はもう間違わない。
彼女の笑顔を失わないよう私は何をも犠牲にする。
それが我が気持ちだろうと・・・
それが我が国だろうと・・・
「ねぇ、婚姻式はどんなドレスがいいかしら?」
「そうだな、只でさえ君は魅力的で主役の座を奪いかねないから難しいね」
「何言っているのよカイルったら」
「ははははは」
嘘じゃない。
君は魅力的過ぎる。
だから私は護衛として側にいる事にした。
そうでなければ・・・
ただ見ているだけなど私には出来なかった。
【後日談】
お互いの婚姻式及び新婚旅行を最後になかなか会う事が出来くなった。
だが、フランメルがいる国とセラフィーナが嫁いだ国を往き来するのに一番の妨害であったラナクラーダ国王を数ヵ国を結ぶ貿易ラインをカイルが治める国が全面的に補助する事で説得する事ができ、二十数年後には手軽に往き来する事が出来るようになった。
そして、王位を息子に譲るとカイル前国王とセラフィーナは前王妃は遠く離れた国のとある侯爵領で隠居生活をおくる事となった。
カイルと協力者は度々挨拶を交わした。
セラフィーナの婚約者はカイルでした。




