私に出来るのはただ見ている事だけ(セラフィーナ王女)
私に出来るのはただ見ている事だけ。
そう、それで良いのです。
私は楽しみで仕方がなかった。
その楽しみを台無しにしたあの男を赦す事は出来なかった。
だから私は見るだけを選択した。
思い出す。
昔、三人で遊んだ日々の頃を。
ここラナクラーダ公国は今の平和が嘘のように数年前荒れていた。
原因は父である国王陛下が四十半ばと言う若さで亡くなってしまったからだ。
第一王子で側妃の子であるダグラス王子と第二王子である正妃の子であるマイケル王子が派閥の貴族達に担がれ争いを始めた。
争いは二人だけでは治まらず第三者であった第一王女が暗殺されると言う事件が起きた。
まだ幼い私にも火の粉が飛んで来そうだったため、内政が落ち着くまでお婆様の実家である隣国のクレモンド侯爵家へ避難する事となった。
そこで私はクレモンド侯爵家嫡男のレオナルド令息と隣領のフランメル令嬢と遊ぶ日々を過ごしていた。
その期間は二年ほどと短い期間であったがあの時の過ごした日々は私にとって一番の宝であった。
私は成人になると同時に異国の王子と婚姻する事になっている。
それまでに今一度二人に会いたかった。
だから私は婚約者にお願いして隣国に留学する事にした。
再び二人に会える。
ただ、それだけが楽しみだった。
「学園で側近としてユーグレイ公爵家嫡男ウィリアム令息をお付けさせて頂きます」
最初に計画が崩れたのは隣国に来て私に語られた宰相の言葉であった。
どうして?
私はレオナルドを希望したはず。
「どういう事でしょうか?私はクレモンド侯爵家嫡男レオナルド令息をお願いしたはずですが?」
「レオナルド令息は未婚約でありますので、そのような令息が王女殿下のお側にいますと有らぬ噂がたち、王女殿下や婚約者の方にもご迷惑をお掛けするのではと思い別の者に致しました。それにウィリアム令息はセラフィーナ王女と親しいフランメル令嬢の婚約者でもあります」
護衛のカイルを見ると顔を横に振っている。
解っている。
我が儘を言ってはいけない。
相手は私の事を思って言った事なのだから。
それにフランメルの婚約者がどんな方なのかも興味があった。
「解りました、三年間宜しくお願いします」
私の学園生活が始まる前にウィリアム令息と挨拶を交わす。
成る程。
誠実そうで身のこなしも悪くない。
フランメルは良い婚約者を見つけたものね。
私はレオナルドとフランメルが婚約を結ぶものと思っていたが、違う男性と婚約を結んだと言うからどのような男性か心配であった。
だけど、まともそうな男性で安心する事が出来た。
しかし、その安心は直ぐに覆された。
まず最初に私が他の令息令嬢に近付こうとするとウィリアム令息が彼等を威圧して遠ざけてしまう。
私はウィリアムに注意するも「護衛ですから」と言って言うことを聞かない。
その為、私に近付く者がいなくなってしまった。
次にランチの時間だ。
彼は私と一緒にランチを取る。
理由を尋ねれば「学友だから」と答える。
いくら二人の護衛が私の後ろに控えているからといって二人だけで座って食事をしていれば、あらぬ誤解が生まれてしまう。
ならば、婚約者のフランメルも一緒に提案したのだが、「彼女には王命の邪魔のしないよう伝えてある」と言う。
だからか、フランメルに声を掛けたら笑顔で挨拶を返すものの直ぐに私の側から遠ざかってしまった。
レオナルドも「護衛じゃない者は近付くな」とウィリアムに言われてから私に近付く事はしなくなった。
二人と楽しく過ごす私の夢はこの男に邪魔をされ続けた。
この男は解っていない。
王命で側近を付けたのは学園生活で寂しくしないため。
それが私から自由を奪っているのだから、こんな巫山戯た話はない。
それにこの男、その時の都合に合わせ「学友」と「護衛」を上手く使い分けている。
自分の都合が良いように。
「ですが、二人だけで食事をしておりますと誤解されてしまいます。お互い婚約者がいる立場として宜しくないのでは?」
「ご安心下さい、私の婚約者は理解しております」
『理解している』ですって、馬鹿じゃないの。
理解しているのではなく我慢しているのよ。
そんな事もわからないなんて・・・
それにこの男は私の為に行動しているようで私の事を考えてなどいない。
私の事を考えれば婚約者がいる私に誤解が生じるような行動など起こさないはず。
彼は人の事を考えているようで自分の事しか考えていない男であった。
もう目の前に座る独り善がりの男の事はほっておきましょう。
それよりも今度の休日が楽しむ事にしましょう。
「カイル、次の休日に昔良く訪れたお店に行こうと思うのですが良いですか?」
「それは良いですね。私も楽しみです」
私は後ろを振り返りカイルと話している。
ウィリアム令息には話してなどいない。
だが、出掛けようと準備をしていた私達に使用人が門前に怪しい人物が立っていると知らせが入った。
カイルがそっと窓から覗くと片手で頭を抱え出した。
どうしたのか気になり私も覗き込む。
門前にいたのはウィリアム令息であった。
何故彼が?
私達は恐る恐る門前まで行くことにした。
「セラフィーナ王女お待たせ致しました」
何を?
私はウィリアム令息の事など待ってなどいない。
「何故、貴方がここにいるのかしら?今日はここにいるカイルとミゼルと市井に行くとは言いましたが、貴方をお誘いしてはいませんが?」
「私は王命でセラフィーナ王女の護衛も任されております。市井に出掛けるならば護衛として離れる訳には行きません」
「・・・貴方、婚約者がいるのではなくて?いつも一緒におりますが婚約者の方が可哀想に思わないのかしら?」
「婚約者のフランメルでしたら大丈夫です。彼女も理解して下さっておりますから」
また理解していると言うこの男には苛立つ。
カイルの咳払いに寄って冷静を取り戻す事が出来たものの、この愚か者をどうにかフランメルの元に向かわさねばフランメルが可哀想。
それに、この男と出掛けるなんて気持ち悪くて絶対に御断りしたい。
「・・・そう、私のせいで婚約者の方に申し訳ないわ。本日のお出掛けは止めにします。ですので貴方も婚約者の元に向かいなさい」
そう言うと、私はは邸内に戻って行った。
久しぶりに訪れるはずであった思い出の場所だけど諦める事にした。
これで彼もフランメルの元に向かうはず。
「楽しみにしていたのではないのですか?」
「カイル、お出掛けは一緒に行く者に寄って楽しみが変わるのよ」
「確かに」
「セラフィーナ様、見て頂きますか?」
ミゼルが窓の外を見て欲しいと言ってきた。
どうしたのだろう?
ミゼルが指さす方を見るとウィリアムが邸の周りをウロウロにしていた。
「私、フランメルの方に向かうように言いましたわよね。あの方、何をしておりますの?」
「解りません。もしかしたら侵入出来る所を探しているのかもしれません」
ミゼルの言葉にブルッと震えを覚える。
正直言って気持ち悪い。
このような男がフランメルの婚約者だと思うと心配に思えてしまう。
この事はオードリー侯爵は知っているのだろうか?
「ミゼル、至急にオードリー侯爵に事情を説明したいと思います。文の準備をお願いします。それと、邸周辺に不審な人物がおりますので警戒をして頂くよう話して下さい」
私はオードリー侯爵にウィリアム令息について文を出す事にした。
返信は直ぐに返って来た。
オードリー侯爵もフランメルの変化に気付いているようであった。
しかし、最終的には娘の意思に任せているという。
侯爵もフランメルの事を心配されているようで安心した。
しかし「娘の意思に任せる」と書かれていた事に疑問を感じる。
今のフランメルは貴族としての責任感だけで拘っている。
家族思いで責任感が強いフランメルならば婚約破棄を選択することはない。
父親としてベストアンサーのように思われる言葉のように思えるが、私には父親の責任から逃げた言葉にしか思えなかった。
婚約破棄までいかなかったようで残念。
しかし侯爵から今後も情報を伝えて欲しいと頼まれた。
私もそのつもりだ。
あの男は危険。
このまま行くと良からぬ事が起きそうで不安が私を覆っていった。
それからも彼の行動は変わらない。
レオナルドやフランメルに会わせる顔がない。
手紙で事情を説明してはいるが信用されているかどうか解らない。
折角、楽しみにしていた学園生活も目の前の男に寄って台無しにされていた。
「セラフィーナ王女、来月行われますダンスパーティーはどうされる予定ですか?」
「私はカイルにエスコートして貰う予定です。婚約者以外の者にエスコートして貰うつもりはありませんので貴方も婚約者を大事にしなさい。いいですか、パーティーに婚約者をエスコートしないなど貴族としてあるまじき行為であり破棄を告げられてもおかしくない事ですので行動にはお気を付け下さい」
私は彼にハッキリと伝えた。
ここまで言わないと目の前の男は解らないと思ったからだ
しかし嫌な予感を拭う事は出来なかった。
そしてパーティー当日、予感は悪い方向に的中した。
窓の外を覗くと門前にあの男が立っていた。
「ここまで来ますと気持ち悪いを通り越して恐怖を感じますわね。カイル、私の側を離れないで下さい」
「安心して下さい。私は貴女の為にこの国に来たのですから」
私達は門前まで向かうとウィリアム令息は私達に気付き一礼をする。
それは流石公爵令息と思われるほど完璧であったが、私には彼の礼儀はただの動作にしか思えなかった。
本当に礼儀を重んじているのならば相手が嫌がる行為をしない。
それをこの男は解っていないため、この男が如何に完璧な動作を行えていたとしても礼儀知らずにしか見えなかった。
「何で貴方がここにいるのですか?貴方、婚約者の方がいるのに私をエスコートしようとは何を考えているのですか?」
「私はセラフィーナ王女の護衛ですので側を離れる訳には行きません」
赦せない。
この男がここに来ていると言う事はフランメルをエスコートする者がいないと言う事。
それが貴族令嬢にとってどんなに恥ずかしい事か、この男は解っていない。
いや、解っていてやっているのかもしれない。
「・・・そう、ですがエスコートはカイルと行います」
絶対にこの男にエスコートなどされたくない。
一緒の馬車に乗るのも嫌だ。
ウィリアム令息を馬車には乗せずパーティー会場へと向かった。
ざわめく会場。
それもそうだ、エスコートさえされていないにしろ、フランメル令嬢と一緒にいなければならないウィリアム令息が私の側にいるのだから。
それなのにこの男は・・・
「セラフィーナ王女、是非一曲私と踊って下さいませんか?」
この男は貴族失格だ。
人間的に破綻している。
誰もが解る事だ。
婚約者がいる者が他の者にファーストダンスを申し込むと言う行為がどう言うものかを。
この男は貴族として大事な空気を読む能力が欠如している。
「どうしましたか?」
「貴方、大丈夫?婚約者の方より先に別の女性を誘うなんて非常識ですわよ。先程から貴方の婚約者が壁の花として立っているのが貴方には見えないのかしら?」
私は壁際で花と化しているフランメルが目に入った。
私が留学したいなど願わなければ・・・
楽しみにしていた留学がフランメルを苦しめる事になって胸が締め付けるように苦しい。
「大丈夫です。フランメルもちゃんと理解しております」
「なっ!そうでは・・・」
『駄目です。ここで大事にするとフランメル令嬢をより傷付ける事になります。ここは抑えるべきです。ここは』
限界を向かえそうになった私をカイルの囁きで冷静を取り戻す事が出来た。
「仕方がありません。殿方のお誘いを無碍に断るのは失礼に値します。ですが、婚約者を無視する事は本位ではありません。一曲終えましたら婚約者の元に戻りなさい!」
この場はカイルの言う通り治める事にしましょう。
この男に触られるかと思うと気持ち悪く鳥肌が出そうになるが我慢しましょう。
後で・・・
後で後悔するといい。
フランメルを悲しませた罰は受けさせてやる。
ウィリアムとのダンスを終えた頃にはパーティー会場からフランメルの姿が見えなくなっていた。
フランメル・・・
このまではフランメルが・・・
「ミゼル、今すぐ王城に謁見の許可を取って下さい。カイルは文の準備を!」
パーティー終了後、私は直ぐに行動を起こす事にした。
ただ見ているだけ・・・何て冗談ではない!
王城に行くと国王陛下・宰相が申し訳なさそうな顔をしていた。
彼等も噂を聞いているのでしょう。
「陛下、そちらが紹介されました令息は少しオツムが宜しくないようで、苦言を申しましても行動を改めません。しかもパーティーにエスコートしようとしたり、ファーストダンスを申し込まれたりと、こちらの国は私の婚約を破談にしようと企てているのでしょうか?」
「そ、そのような事はない、私共もウィリアム令息があのような者だとは解らなかったのだ」
「解りました。こちらの国に悪意がない事はお解り致しました。ですが、あの者が側にいる事は我慢なりません」
「一月だけ猶予を頂きたい。側近をレオナルド令息に変える手続きを行うので駄目だろうか?」
一月。
そのくらいなら我慢しましょう。
次にフランメルを助けないと。
「それと、あの者は婚約者を軽んじ過ぎます。今すぐ婚約を破棄させるべきです」
「嫌、流石にそれは両家の問題・・・」
「二人は男爵や子爵家とは違います。この国を支えなければならない者がこのような事になっているのに両家の問題と国が責任を負わないでどうするのですか」
「わ、解った。ユーグレイ公爵家には苦言を入れよう。オードリー侯爵にも今回の事で婚約破棄となっても侯爵家には責任を問わない事を伝えよう」
ここまですれば婚約は破棄となるはず。
解っている。
私が行き過ぎた行動をしていることは。
だけど、我慢ならない。
フランメルを悲しませるあの男を。
それに私は解ってしまった。
あの男はフランメルが我慢している顔や悲しんでいる顔を見て愉悦を感じていた。
あのような男は徐々に要求が強くなり最終的には暴力を振るう。
フランメルとは早く別れさせた方が良い。
だが、婚約破棄の話しはなかなか聞こえて来なかった。
何故?
どうして?
オードリー侯爵は何をされているの?
早くしないとフランメルが・・・
しかし、私が恐れていた事がこんなに早く訪れるとは思わなかった。
「きゃっ!」
「危ない!」
この日はウィリアムが側にいない事で体が軽くなったような気分となり、足取りが軽くなり過ぎて足を捻ってしまった。
場所も悪く、転びそうとなった先は階段であった。
が、間一髪カイルが私を支えてくれた。
足の腫れを冷やす為に医務室へと向かった。
それだけの事であった。
それがあんな事になるなんて思いもしなかった。
ウィリアム令息が医務室に駆け付けてきた。
私はウィリアム令息に自身で足を捻った事を伝えた。
確りと伝えたはず。
しかしウィリアム令息は私の話を聞いて飛び出していった。
油断してしまった。
あの男がいなくなった事で安堵していた。
あの男が私の側から離れると言う異変に直ぐに気付くべきであった。
いや、普段の私なら少し考えれば解ったはず。
私は考えずに安らぎに甘えてしまった。
その私に天罰が下された。
医務室のドアが開くと気を失ったフランメルが運ばれてきた。
「何がありましたの?」
「ウィリアム様がフランメル様を突飛ばされましてそのまま意識を失われてしまいました」
私の失態だ。
私が油断しなければこんな事にはならなかった。
私がフランメルを傷付けてしまった。
医師が外傷は特になく意識も直に戻ると伝えられた。
医師の許可を得てオードリー侯爵の邸に運ぶ事にした。
このまま、ここに居ればウィリアム令息が再び来るかもしれないから。
そんな事になればフランメルが・・・
いえ、私が彼を粛清してしまうかもしれない。
ミゼルにオードリー侯爵が王城にいるかもしれないので向かわせ、私とカイルは意識が戻らないフランメルをオードリー侯爵の邸へと運んだ。
「カイル、私は赦せません。越権行為だとしてもフランメルとの婚約を破棄させます。止めても無駄です!」
「私もその方が良いと思う。フランメル令嬢の事を考えるとこのままにはしておけない」
「ありがとう」
私の手を握るカイルの暖かさで少しずつ私の心が落ち着く。
それでも・・・
それでも、ウィリアム令息を赦す事は出来ない。
邸に着く。
意識を失ったフランメルを見て使用人達が駆け寄って来た。
ベッドまで運ばれ、目が覚めないフランメルの手を握り謝り続けた。
私が足を捻らなければ・・・
私が留学をしなければ・・・
涙を流しながら懺悔をしている所にレオナルドが扉を開けて入って来た。
私はレオナルドに今までの事、今回の事件の経緯を全て話した。
全て話、レオナルドにも謝罪した。
レオナルドは許して下さったけど、本心は赦せないと思う。
大好きなフランメルが傷付けられたのだから。
「レオナルド、私はこれから王城に向かい事の経緯を話して来ます。レオナルドはオードリー侯爵に説明をお願い出来ますか?」
「ああ」
「そしてお願いします。婚約破棄を取り付けて!私が言うのはおかしいかもしれないけど、侯爵を説得して下さいませんか?」
「ああ、俺も我慢するのをやめた。任せろ」
レオナルドを顔は見て安心出来た。
彼の顔に迷いはない。
覚悟を決めている。
今回の件で婚約が破棄される事は間違いない。
問題はその後。
婚約破棄となれば、あの人の話を聞かない男の事だ、フランメルにしつこく言い寄るにちがいない。
そんな事はさせない。
フランメルには残りの学園生活を楽しく過ごす権利がある。
それを奪った私とあの男は罰を受けなければならない。
私は覚悟を決め王城へと向かった。
「話は聞いておる。あのような者をセラフィーナ殿下のお側に付けてしまい申し訳ない。今すぐ側近を代えようと思う」
「いえ、国王陛下。今、あの男を自由にしてしまえば、婚約破棄となったフランメルに危害を加えようとするかもしれません。それを避ける為にも今のままにしておく事に致しましょう」
「だが、それではセラフィーナ殿下の身が心配だ」
「安心して下さい。私にはカイルがおります。ミゼルもおります。これは贖罪なのです。私はフランメルを傷付けた罰を受けなければならないのです」
私の意思は硬く、ウィリアム令息は私の側近のままとなった。
これは私の贖罪。
学園に復帰したウィリアムを私の側まで連れて来る。
ウィリアムは安堵した様子だが婚約破棄された事に気付いていない。
それでいい。
私に出来るのはただ見ている事だけ。
それだけでいい。
私が見ている事でこの男はフランメルの元に向かう事が出来なくなるのだから。
レオナルドとフランメルが婚約した事を教えられた。
良かった。
これでフランメルが幸せになれる。
二人が幸せになれる。
その為なら私は我慢出来る。
だってこれはフランメルを悲しませた私の罰なのだから。
卒業パーティーで漸く己が婚約破棄されていた事に気付いたみたい。
離れるフランメルを見つめているウィリアム令息を見て、あの男もフランメルの事を想っていた事が解る。
だけど、貴方の想いは捻曲がっている。
だからフランメルには相応しくない。
レオナルドと踊るフランメルの笑顔。
あの笑顔が見れて良かった。
私も漸く留学して良かったと思えた。
さて、最後の仕事である彼に止めを刺しに行くことにしましょうか。
「壁の花となるお気持ちは解りまして?」
「セラフィーナ様・・・」
「貴方は『彼女なら解っている』と仰っておりましたが何も解っておりませんでしたのは貴方の方みたいですね」
「私は王命として・・・」
「貴方は王命を全うしておりませんでしてよ」
「な・・・ぜ・・・?」
「貴方に下された王命は私が学園で楽しく過ごして貰うためのもの。ですが私は貴方のせいでこの三年間全く楽しく感じた事はございませんでした。苦言を申しましても『王命』『学友』『護衛』と馬鹿の一つ覚えのように言われておりましたが、その言葉には何処にも私の事を思われている所はございませんでしたわ。私の事を思って下さるのでしたら婚約者がいる私に考慮をするものですもの。この苦言については既に陛下にお伝えしてあります。ですから貴方の王命は失敗。いえ、この程度の事は普通の貴族なら解る事ですから、貴方は貴族として失格なのですわ」
ウィリアム令息は膝から崩れ落ち、呆然と私の方を見ていた。
ええ、知ってましてよ。
貴方のプライド。
だって、その為に三年間貴方の事をただ見ていたのですから。
私も貴方を引き留めると言う罰を受け止めました。
ですから貴方もこの断罪を受け取りなさい。
これは私からの三年間のお礼ですわ。
【後日談】
レオナルドとフランメルが結婚する事を知った。
フランメルから招待状が届かなかった事に心が痛むがそれもしょうがない。
だけど、二人を祝いたいと思う気持ちは我慢できず、結婚式に無理矢理参加した。
と、思っているのはフランメルだけかもしれない。
オードリー侯爵が私の事を招待して下さった。
二人の幸せそうな笑顔を見て涙が止まらない。
最後にフランメルに謝罪をして許して貰えた。
フランメルには私達の結婚式にも来て貰える事となった。
だから、もう二人は知らなくて良い。
まだ、私の断罪が続いている事を。
ユーグレイ公爵家はウィリアムの相手を国外から探すらしい。
既に公爵家は別の者が継ぐ事になっているようなので婿も可能だと言う。
ならばと、私はそこに一つの悪意を混ぜた。
公爵が国外で探す伝の中に私が用意した令嬢へと結び付くようにした。
彼女は遥か遠くの国の女公爵。
少々、気が強過ぎ思った事は口にしないといられないため30歳後半となっても良い相手を見つける事が出来なかったが、これで彼女も安心出来るはず。
そしてウィリアム令息も少しはまともになる事を祈る事にした。
そして、ウィリアム令息がこの国に戻ってくる事はまずない。
フランメルとレオナルドの邪魔となる心配も消えた。
ウィリアム令息の事だから最後まで気付かないでしょうね。
私の断罪を・・・
第四話はセラフィーナ王女目線にしました。
セラフィーナ王女の『ただ見ているだけ』はウィリアムに対しての見張りとしてでした。




