第一楽章 煌暦2342
急展開ですけどついてきてください。
煌暦2342年、人類はその生活圏を銀河全体に拡大し、それぞれ独自の文明を築き上げていた。
西暦という名の暦の末、地球は一つの超巨大帝国、アウグスタ帝国に統治された。
アウグスタ帝国はアジアのとある島国のクーデターによって誕生した。
そして、その勢力を国外に拡大すべく、周辺国に武力侵攻を始めた。
アウグスタ帝国はクーデター以前より有していた圧倒的科学技術力、そして武力によって次々と対抗する国家を征服していった。
そして100年もの長い激しい戦乱の末、地球はアウグスタ帝国によってついに一つになったのだった。
戦乱を終結させたアウグスタ帝国第三代皇帝アンティオヌスは、浪費され疲弊した地球環境を守るという名目のもと、選ばれた人民のみを地球に住まわせる「地球貴族主義」を展開した。
社会的弱者、障害者、貧困層などの「不適合な人民」はことごとく地球から追い出され、超光間跳躍技術によって銀河の果てへと生活圏を強引に拡大させられた。そして、その先でもアウグスタ帝国軍は不適合な人民への統治を行った。
不適合な人民が銀河全体へとその生活圏を広げている最中、地球では「選ばれた人民」の間でも格差が広がり、それが争いの火種となり、アウグスタ帝国はその人民による革命でわずか200年で滅びた。
だが、それがさらなる戦乱を招いた。
地球上で新たに数多の勢力、国家が誕生し、次の地球の覇者になるべく戦乱が再び始まった。
人類史上これまでにない長い戦いが起こり、ついには核兵器による戦闘が行われた。
誰が勝ち、誰が負けたことさえ分からなくなった。
地球は泥沼と化し、地球人類は一億人に縮小した。
地球人類史は振り出しに戻った。
一方、宇宙へ上がった不適合な人民を統治していたアウグスタ帝国軍は独自の発展を続け、アウグスタ帝国崩壊に伴いアウグスタ帝国軍元帥ヘレ二オスによって銀河帝国へと変貌を遂げ、ヘレ二オスは銀河帝国初代皇帝となった。
そして、地球人類が今までの愚かしい歴史を捨て、煌かしい歴史を紡ごうと誓ってから2342年が経った。地球人類は煌歴2230年に第一次世界大戦、2279年に第二次世界大戦が勃発したものの、現在は西暦2030年頃と文明が同程度の世界を取り戻したのだった。
地球人類史は一巡したと言えよう。
地球外の人類は、それぞれの惑星で独自の進化、発展を遂げ、もはや地球を母なる大地と覚えている人間はごくわずかになった。
銀河には銀河帝国、そしてそれに対抗する宇宙開放戦線、そしてそれらに属さない自治惑星が存在し、地球は銀河帝国の監視下に置かれていた。
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「我々は宇宙開放戦線である。帝国の独裁、圧制、そして搾取から宇宙の人民を開放する誇り高き戦士たちである。ここに帝国軍の新兵器があると傍受した。この劇場にいる者はすべて人質とする。帝国軍は大人しく投降し、新兵器を明け渡せ。我々は完全にこの劇場のシステムを掌握した。完全にこの劇場は我々によって包囲されている。繰り返す、帝国軍は大人しく投降し、新兵器を明け渡せ!」
アナウンスが野太い声で告げる。
「……ぅぞ」
「え?」
「逃げるぞ」
「へ?」
「逃げるぞ!!」
俺はいつのまにか立ち上がっていた鈴木に左手をぐっと引っ張られて走りだしていた。
「逃げるな!!てめえら地人どもは人質なんだ!!逃げたら殺す!!!」
コックピットから出てきた男の声がホールに響く。
俺と鈴木は壁の前で立ち止った。うしろには吹奏楽部全員がついてきていた。
俺たちは男にライフル銃を向けられていた。
俺たちと男の間にはかなり距離があるが、撃たれたら即死だろう。
「そうだ、そこで止まれ、そのまま席に戻れ、この地人どもが」
そりゃあ、こんな大人数で動いたらばれるか。
俺はいまだにこの状況が理解できてなかったが、それだけは分かった。
もうこれで終わりか。
タヒにたい、タヒにたいと思ってたら、ホントに死ぬときが来るなんて。
「早く戻れ!殺すぞ!!」
俺は泣きたかった。
だけど、ライフル銃を向けられている恐怖で動くことも泣くこともできない。
「地人のくせに生意気な野郎だ、今殺してやる!!」
そして、銃声が鳴り響いた。
男がコックピットから落ちた。
鈴木の手の中の銃から煙がなびていた。
「アホッ!早く逃げるぞ」
鈴木に引っ張られ、俺と鈴木は壁に突っ込んだ。
壁がぐるっと回転し、俺たちは壁の裏にあった通路を走る。
俺と鈴木の後ろを、吹奏楽部全員が追いかけて来ていた。
「なんだよこの通路!!」
「うっさい、説明は後でする、とっとと走れ!!!」
「なんなんだよおおおおおおおお!!!」
「こっちが聞きたい!!」
「何ここ?」
「暗いよー」
「怖いよー」
「狭いよー」
「うるさい!!みんな銃を手に持ってろ!!」
吹奏楽部全員がギャーギャー騒ぎながら、自分の制服の内ポケットから拳銃を取り出して通路を走った。
いまだに何が起こってるのがさっぱりだった。
「この先に何があるんだよ!!!」
「船がある!それで脱出する!!」
「なんでお前がそんなこと知ってんだよ!!」
「だから後で説明するつった!!!!」
「新兵器ってどういうことだよ!?」
「だからぁ、、、、」
俺たちは扉の前で立ち止った。
「後で説明するって言ってんだろ!!!!!!!!」
そう言って、鈴木はポケットからだしたカードキーで扉のロック解除した。
扉が開いた。
そこには、宇宙船があった。
見たことない宇宙船だった。
俺たちが乗ってきた宇宙バスの何十倍ものでかさだった。
ハッチが開いていた。
鈴木が一目散に中へと走っていった。
俺たちはそのあとに続いた。
そして、俺はそれに出会った。
読んでくれてありがとうございます。




