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いったん最終話です!

暴走気味のイェルローズをどうにか抑えつつ、ユーリシアから距離と時間をおきながら森を歩く。

孤児院の少し奥、小屋の前で、ユーリシアが儚く清らかな少女の髪を愛おしげに整えているのが見えた。

ユーリシアは淡く微笑み、少女にリボンカチューシャを結んでいる。


「わ……わたくしのユーリシア様が、他の女に……!」

「お嬢様、落ち着いてください。推しは推しです。所有物ではありません」


震える声でつぶやくイェルローズ。

両手でツインテールを握りしめる姿は、少しだけいじらしい。


「リリ、冷たいミントティーも用意しましたよ。水分もしっかりとってくださいね」

「うん、いろいろありがとう」


あの少女はリリというらしい。見た目も名前も可憐だ。


この穏やかな空間にさすがのイェルローズも空気を読んで静かだ。

ちらりと横を見渡すと、誰もいない。

……誰もいないっ?!


「ユーリシア様ぁっ!」

慌てて目線を戻すと黄金ツインテールをぶんぶん振り回しながら突進していた。


あぁ~っ!お嬢様~っ!!!


「……何をしに来た」

「どうしてですの!? どうしてこんな小娘と一緒なのですか!」


お嬢様を止めたいのは山々だが、貴族と聖騎士の会話に割って入ることは許されない。

あくまで私は侍女。心の中で願うしかない――


「あなた、黄金の薔薇と名高いイェルローズを知らないはずがありませんわよねっ?!地位も名誉も財産も胸もすべてわたくしの方が上ですわっ! 」



――お嬢様、本当におやめろくださいっ!!!

黄金の薔薇の二つ名は言動が痛々しい棘と揶揄されてのことですよ・・・っ!


「ユーリシア様とあろう人が、どうしてこんな小娘にプロポーズなんて……嘘ですわよね……っ!」


ユーリシアは飴細工の赤い薔薇を握ったまま、リリの手をすっと取る。

その仕草は優雅で、まるで絵画の一部のようだった。


「言葉が過ぎるぞ。彼女は私の最愛だ」


赤い薔薇一輪には「あなたしかいない」という最愛の意味が込められている。

現代でいえば、指輪を贈るようなものだ。


イェルローズの周囲の空気が癇癪とともに爆発する。


「そ、そんなの……認めませんわぁーーっ!!」


絶叫しながら私のもとに戻ってくるイェルローズ。



「……お嬢様、いまのはいけません」

「ど、どうしてですの?!」

「推しは聖域です。手を出していいものではありません」

「で、でも……私はユーリシア様を推してる一番のファンですのよ!」


その時、遠くから現実の声が聞こえてきた。


「リリ、念のため言っておきますが、誤解しないでください。彼女はただの他人ですから」


そうです、お嬢様。

勝手に推し活しているだけで、ユーリシア様にとってはただの他人。

残念ですが現実を受け入れて……って、またいない?!


「ユーリシアさま?! というか、そもそもその小娘は誰ですの?!」


いつの間にかまた突進しているイェルローズ。


「私が守るべき、そして愛すべき人だ」

「愛っ!? だめですわ!」


二回目の修羅場。

それでもユーリシアは動じず、リリに宣言するように言い切る。


「私の心を動かせるのはリリだけだ」


イェルローズ、地面を踏み鳴らし、声を震わせながら絶叫する。


「だまされませんわっ! わたくしの“推し”に手を出した罪、許しませんからねっ!」

「手を出しているのは私の方です」

「~~~~~~~~~っ!!」


言葉を聞き、崩れ落ちそうになるイェルローズ。


「っ……!いえ……っ、でも……っ!!」


お嬢様、自滅フラグをこれ以上増やすなでございます!!


「……今日のところは帰らせていただきますわっ!!」


ようやく戻って来たイェルローズ。

私は今度こそ離れないようしっかり手を握り、元来た道を戻る。


屋敷に戻り、お茶の準備。

切ない気持ちを優しく包むハイビスカスティーにローズヒップをそえた華やかなトライフル。


「お嬢様。ユーリシア様が誰を選ぼうとも、推しへの愛は変わりません。それが真のファンです」

「・・・。」


さすがに今回は響かないか・・・。


「お嬢様・・・推しカプ、という概念をご存じですか。」

「なんですの、それは?」

「クールなユーリシア様が唯一愛情を示すのが儚げなリリ様。定番だからこそ美しいカップリングです」

「カプ……?」

「リリ様と一緒にいると、まるで石像のようなユーリシア様が愛を注ぐ姿が見られます!」

「・・・たしかにこんなにお話をしたのは初めてですわ。」

「リリ様が側にいらっしゃればいままで見たことのないユーリシア様のお姿とお声をたくさん見れます。」

「た、たしかにそうですわね?!」

「そう、それこそが推しカプです。全方向に幸せになれる推し活、それは推しカプです。」

「推しカプ・・・わたくし、その道も究めてみせますわ!」


ふぅ、なんとか今回も論点をずらせたようだ。

いつだって一生懸命に全力で素直なイェルローズをかわいく思える。

自滅令嬢の侍女も思ったほど悪くない、かも。


まさかここからお嬢様がユリリリのカプ推しどころかリリ様と友情を深めて想像以上に振り回されることになるなんて、この時は思いもしない私なのだった――。

自滅系悪役令嬢と突っ込み系侍女、とっても楽しく書かせていただきました!

最後まで読んでくださりありがとうございます。


こちらの小説の本編であるリリとユーリシアの物語への反応が嬉しく、サイドストーリーとして書いたのですが思ったよりも長くなったので別作品としてアップさせていただきました。


好評なようであれば、カプ推し編や友情編も続編として考えていますのでぜひとも応援よろしくお願いします!


もしよかったら元作品でイェルローズ初登場のリリ視点もぜひ↓

「美しすぎる女騎士に、なぜか全力で溺愛されています~私、どうしてこんなに甘やかされてるのでしょうか〜」(https://ncode.syosetu.com/n5106ky/)



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