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それからというもの、イェルローズはユーリシアの推し活に励んでいた。

攻略対象ではないだろうユーリシアにハマるなら、それはそれで自滅フラグを折れるかも?


そう思った私は推し活に励むイェルローズを側で見守ることにした。


初めて名前を耳にした瞬間――

「ユーリシア様!尊い……!名前だけで高貴な旋律が流れてきますわ!」

まるで新曲タイトルを発表されたオタクのように手を組み、何度も名前を口にしては恍惚としていた。


名前を覚えたイェルローズは一日一度、必ず話しかけるようになった。


廊下で護衛任務に立つ姿を見つけた瞬間――

「ユーリシア様っ!!今日もクールな立ち姿!一切ぶれない石像!尊すぎますわ!」

……お嬢様、誉め言葉なのかどうか判断に迷います。


ユーリシア様が腰の剣に手をそえた瞬間――

「あぁっ……ユーリシア様っ!もはや芸術的!剣を愛するその仕草、尊すぎますわ!」

……お嬢様、ただずれたポジションをなおしただけです。


ユーリシア様がほんの少しだけ首を動か瞬間――

「っ!!ユーリシア様っ!東の窓を睨む横顔!今のは伝説級のカットですわ!」

……お嬢様、ただ巡回の目線を変えただけでございます。


ユーリシアはイェルローズの言動をすべてスルーしている。

イェルローズも最初は落ち込んだり癇癪を起したりしていたが、『塩対応』や『クーデレ(※デレは一切ない)』の概念で説き伏せた。

イェルローズなりに納得したようでいまは声をかけるだけで満足しているようだ。


まったく同じ行動しかしないユーリシア様からよくもまぁ推し要素を拾えるものだなぁと呆れを通りこして、むしろ感心しはじめたころ。


そんなある日。

イェルローズの推し活に変化がやってきた。

聖堂にいっても護衛をしておらず会えない日が続いたのだ。


「今日もいませんのね……クレオメ、気分転換に買い物にいきますわよ!」

「かしこまりました、お嬢様」


イェルローズのウィンドウショッピングに付き添っていたところ、偶然出会ってしまった。

――聖騎士ユーリシア様の「お買い物姿」を。

イェルローズの赤い瞳が一瞬で炎上する。


「クレオメ!これは運命ですわいきますわよ!!」

「お嬢様、推しのプライベートでのストーカー行為はいけません。」

「いいえ!たまたま、偶然同じところにいくだけですわ!お声かけもいたしませんわ!」


その先にはハーブ石鹸を買い求めるユーリシア。

ラベンダーやカモミールなど優しい香りのものを選んでいる。


「クレオメ!同じものを十個買いますわ!!」

「お嬢様……推しとお揃いの日用品といえどさすがに数が多すぎでは?」

「いいえ!これで毎日、ユーリシア様と同じ香りに包まれて暮らせますの!尊すぎて息が止まりますわ!」

(……ただの生活必需品だと思うのですが)


次に立ち寄ったのは小さな装飾雑貨屋。

ユーリシアは櫛と香油を手にした。手に取っているのはゼラニウムやローズマリー。

「まぁ!クールなお姿の裏で、ユーリシア様が実はヘアケアに気を遣っているだなんて……!」


(……髪を梳かすのは騎士にとって品位保持の範囲かと。)


そして――ヘアアレンジ用の可愛いらしいリボン。

「リボン!? ま、待ってくださいまし……」

お嬢様がピタリと固まる。

「あのユーリシア様が…リボン……?これは……まさか……自分用ではなく……贈り物……!?」


顔を真っ赤にし、両手を握りしめるイェルローズ様。

「く、クレオメ……!ユーリシア様に恋人フラグの可能性が浮上しましたわ……!」

「お嬢様、落ち着いてください。」


最後に訪れたのは女性ものの仕立屋。

ユーリシア様が手に取ったのは――小柄な女性向けの花刺繍などの装飾がほどこされたワンピースとボレロ、そして小さなサイズのブーツ。

「…………」

お嬢様は無言。顔色が変わる。

「……クレオメ」

「はい」

「これは……アウトですわぁぁぁぁ!!!」

街に響き渡るほどの叫び。

「誰ですの!?ユーリシア様が選んだ服を着るその存在は!? 同担拒否どころではありません!もはや脅威ですわぁぁぁ!!!」

「お嬢様!地面を叩かないでください!スカートが……!」


イェルローズ様は膝から崩れ落ち、涙ぐみながら拳を握る。

ユーリシア様は丁寧にラッピングされたそれらを抱え、颯爽と歩き出す。


なんとかなだめながら屋敷に帰ったお嬢様は放心状態だった。

「お嬢様、温かいジンジャーハーブティーをどうぞ。シナモンアップルタルトもありますよ」


そっと口に運ぶイェルローズ。うん、顔色がよくなってきた。


「お嬢様、推しの恋路すら応援する。それが真のファンです。推し活の究極です。」

「…いいえ!きっとユーリシア様は悪い女に騙されているのです!!わたくしが見極めてやりますわ!!!」

「お嬢様…?!」

「明日は朝から聖騎士寮を張り込みますわよ!」


今回ばかりは推し活理論武装でなだめるだけでは駄目そうだ。

それに断っても一人で行ってやらかしてしまうのが自滅令嬢。

それよりは付き添ってなんとか収拾するしかない・・・。


「・・・かしこまりました、お嬢様」


お嬢様の失恋フラグになんだかほっとしてしまった思いに蓋をして、返事をする私なのだった。

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