勘違い
帝国軍旗艦《ヴァルハラ級・グランデュール》 情報司令室
(青白い光を放つホログラフが乱舞し、数十の情報士官たちが慌ただしく動き回っている)
オペレーターA:「報告! サルカ哨戒艦および《テンタクル・ドーン》との小競り合いで……」
(言いよどむ)
グラム=ツァイト准将(低く鋭い声):「続けろ」
オペレーターA:「はっ……敵士官が戦闘中に一斉に……上半身裸になり、ポージングを……」
(室内がざわつく。若い士官たちが思わず顔を見合わせる)
別アングル:監視映像がホログラフに投影される
映像
•ゴルゴラス大尉、筋肉を盛大にパンプアップしながら艦橋でフロントダブルバイセップス。
•ダーククラーケン少佐、触手で自らの胸筋を叩きながら「パワーは! 正義だ!」と絶叫。
•その横でブラッド少佐が頭を抱え、「やめろォォ! 戦闘中だぞ貴様らぁぁ!」と必死にツッコミ。
オペレーターB(目を逸らしながら):「……准将、映像の通りであります」
副官:「これは……新型の威圧戦術か……?」
(若手士官たちがヒソヒソと)
•「……肩幅が、うちの戦闘艇の翼幅より広いんじゃ……」
•「あの大胸筋……シールドに匹敵する……」
•「准将……我々、勝てるのでしょうか……?」
グラム=ツァイト(機械仕掛けの瞳が冷たく光り、沈黙ののちに一言):「馬鹿な。あれは……ただの筋肉だ」
(司令室に一瞬の安堵が広がる――だがすぐに准将が鋭く言い放つ)
グラム=ツァイト:「だが侮るな。筋肉は“意志”だ。意志は兵を動かし、艦を動かす。結果、戦略を左右する」
(士官たちがゴクリと唾を飲む)
副官:「じゅ、准将……皇帝陛下の勅令は“始原の砲”の探索。しかし、今はサルカの筋肉研究を優先するのですか……?」
グラム=ツァイト:「勅令は絶対だ。始原の砲を見つけるのは我らの使命。……だが、筋肉を軽んじれば、それを手にしても敗北するだろう」
副官(絶句):「……!」
(グラム=ツァイトは指を鳴らす。即座に情報士官たちが端末に向かい始める)
グラム=ツァイト:「情報部に命じろ。
一、ゴルゴラスの筋肉構造を解析せよ。
一、ダーククラーケンの触手筋群の出力を測定せよ。
一、ブラッド少佐がなぜツッコミ役に甘んじているのか、その心理を調査せよ」
オペレーターC:「……最後のは必要でしょうか?」
グラム=ツァイト(即答):「必要だ。ツッコミは組織の秩序だ。放置すれば帝国は崩壊する」
(室内に重苦しい沈黙が走るが、誰も否定できない)
(士官たちが一斉にデータ収集に走り、帝国軍の情報網が“筋肉研究モード”に切り替わる)
グラム=ツァイト(独り言のように):「始原の砲……そして筋肉。銀河を制するのは、どちらだ……?」
(その言葉に、士官全員が震え上がる)
帝国軍、新たな研究分野
「サルカ筋肉学」部門、極秘裏に発足。




