サイボーグとイカと筋肉
中立惑星の戦略会議室(貸切)
銀河戦線に関する「非公式の意見交換」として、サルカと帝国の代表者が極秘裏に対面する場。
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グラム(准将)(無表情)「……この会議は、貴官と私の思考プロトコルのすり合わせだ。無駄な動作と会話は避けたい」
クラーケン(少佐)「問題ない。我が筋繊維も極限まで削ぎ落としている」
グラム「……(0.3秒沈黙) 肉体の削ぎ落としは議題に含まれていない」
クラーケン「貴様、精神が削ぎ落とされているな。いい目をしている。良い前腕もしている」
グラム「私は義腕だ。筋繊維など存在しない」
クラーケン「義筋か……最先端だな。技術の極み。トレーニング可能か?」
グラム「不可。私は日々の筋力強化を、プロセッサの冷却と同列に扱っていない」
クラーケン「ならば貴様の義腕にダンベルを装着してやろう。日常がトレーニングだ」
グラム「やめろ」
クラーケン「この新型プロテインを見ろ。サルカ連邦産“マッスル海流α”。一杯で1.8キロ筋繊維が生成される」
グラム「データは?」
クラーケン「俺の胸筋が証明だ!!!!」
(突然、シャツを裂く)
グラム「布の再生コストが無駄だ。次は断る」
クラーケン「見ろ、この背中を!!トレーニングが外交を変える!!」
グラム「筋肉で語り合う戦略は存在しない」
グラム「結論。この会議は情報共有に至らなかった。収穫は、サルカ連邦の会議服がすぐ破れるとわかったことのみ」
クラーケン「収穫はこの肉体だ。貴様も目覚めよ。筋肉がすべてを語る世界に」
(クラーケン、眩しいほど完璧なポージングを取る)
(背後のライトが反射し、会議室が神々しく輝きはじめる)
グラム「……データ光量、臨界値を超えた。網膜にダメージ……対策プロトコル起動」
こうして、サルカと帝国の代表による会談は
ポージングと光量により幕を閉じた。
果たしてこれが、銀河に平和をもたらす一歩となるのか……
それは、誰にも分からない。




