いきなり実戦
その後オルトは、流れるような勢いで演習機に乗せられ、初出撃の準備をさせられる。
ヘルメットはサイズ合ってないし、スーツは他人の名前入りだし、武器はなぜか水鉄砲みたいなデザインのレーザー銃だった。
「おいフィル、この武器なんだよ……」
「“水っぽいけど意外と痛いビーム”です。名前のままです」
「名付けセンス死んでんのかこの部隊!?」
「こちらデスドライバー3班! 接敵まであと2分! 配送班、後方支援に回れ!」
オルトは叫んだ。
「……っていうか、俺まだ正式に入隊してないからな!? 今からでも辞退できるよな!?」
「【規約第42条】:出撃後の辞退は死後に可能です」
「可能じゃねぇよそれぇぇぇ!!」
こうして、
**“面倒くさがりの元配送員”**は、今日も今日とて、
やる気のないAIと変な仲間たちと一緒に、宇宙の戦場で配送と戦闘をこなすのであった——。
戦場へ出撃して5分後。
オルト・ヴィスカは、すでに泣きそうだった。
「なんで俺、爆弾抱えて敵の要塞に“配送”してんの……?」
オルトの手元には、ピカピカに磨かれたパイ型の金属ケース。
中には、**高濃度の重力炸裂弾——通称“アップルパイ”**が入っていた。
そう。これは比喩ではなく、本当にアップルパイの形をしている。
「くれぐれも落とさぬように。中身が漏れると半径3kmが凹むぞ」
と、タコ中佐は笑いながら言っていた。
「何笑ってんだよ……どう見てもオチ担当だろオレ……」
「現在、敵要塞まで残り300メートル。敵の迎撃ドローン、14体接近中。死にますか?」
「言い方ァ!!」
「ご安心を。まだ3回は死ねます(精神的に)」
そのとき、背後から鋭い電子音と共に、タコ足ミサイルを搭載したドローンが群れで飛来してきた。
「うわああああっ! こっち見てるぅぅぅ!」
Z(液体金属)「気にしないで、撃つから」
Zは、銃の代わりに自分の体をビーム砲の形に変形し、ぬるっとした音と共に敵ドローンを吹き飛ばしていく。
「お前、便利だけど気持ち悪っ! ありがとうだけど気持ち悪っ!」
やがて到達した敵要塞の玄関口。そこに立ちはだかるのは——
「……当基地はサルカ連邦の領域である。正体を示せ。デリバリーか?」
「うん。配送です(爆弾だけど)」
「配送ならば、受取サインを求む」
「え、サイン要るの? 戦時中なのに?」
「規則である。“サインなき爆弾は違法爆弾”——連邦法第882条より」
「妙に律儀だなこのAIッ!」
仕方なく、オルトは配送端末を差し出した。敵AI「ミトコーン」は金属の腕でめちゃくちゃ丁寧な筆跡で署名した。
「ご苦労。……受け取り完了。では、死んでくれ」
「話が違うーーーーッ!!!」