仲間達
「なあ……これ、本当に“軍”なのか?」
オルト・ヴィスカは、異臭のするカフェテリアで、溶けかけた金属椅子に座りながら頭を抱えていた。
周囲を見渡せば、そこには宇宙最前線のはずの軍事拠点とは思えない光景が広がっていた。
・タコ型の隊長が、8本の腕で同時に5種類のコーヒーをこぼしていた
・演習場では、機動スーツを着たゴリラ型宇宙人がベースギターを爆音で演奏中
・通信室では、「くしゃみだけで会話する宇宙人」と「くしゃみ翻訳士」のペアが喧嘩していた
「くしゅん!(行くな!)」
「ハックショイ!!(やかましい! こっちはプロだ!)」
「訳せてねぇじゃねぇか……」オルトはつぶやいた。
「お〜〜〜い! 新入りィ! 名前と所属宙域を言えぇぇぇ!」
現れたのは、身長3メートルのタコ型司令官だった。
正確には、半分タコ、半分電波。名前は**“ダルトン・ビール中佐”**。一見威厳があるが、すぐに滑って転ぶ。
「オ、オルト・ヴィスカです。もともと配送員で……軍所属のつもりはなかっ……」
「異議なしィィィ!! 今日からお前はデスドライバー第3班・戦術配送班長だ!」
「いや、配送って何!? 戦場で!?」
「前線には物資を送らなきゃいかんだろ! オマエ、配送うまいんだろ!?」
「いや、評価★0.1ですけど!?」
「よーし! なら生きて帰って★5にするんだな! ハッハッハッ!」
タコ中佐のテンションに圧倒されていると、隣からぬいぐるみのような何かが近づいてきた。
「はじめまして、ヴィスカ氏。私は戦術サポート担当のフィル。……自己修復中につき、今は触らないでください」
目の前にいるのは、ふわふわで丸いぬいぐるみ状生命体。
だがその目は真紅に光り、体の内部には重力制御エンジンが詰め込まれている。
「ふわふわしてんのに声がやたら論理的だな……」
「生まれた星では、感情を殺す訓練が行われていたので。あと、触ると爆発します」
「冗談だよな?」
「まだ冗談の文法を習得していません。冗談だったら嬉しいですね」
さらに、壁からズルッと液体金属のような何かが現れた。
それは銀色のスライム状生命体で、突然オルトの顔の前ににゅるっと浮かび上がる。
「……………(無言)」
「……あの、名前は?」
「Z。声帯ないから、脳に直接話しかけてる」
「なんか気持ち悪……あっ、ごめん。いや違う、ちょっと脳がかゆいだけで」
「大丈夫、慣れると気持ちいい」
「そのセリフ、いろいろアウトじゃねぇか!?」