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静かな夜

グローム77 格納庫


格納庫の照明は半分落とされ、艦内は静まり返っていた。

エンジンの微かな熱音と、船体を流れる冷却液の低い唸りだけが響いている。


オルトは整備用ベンチに腰掛け、工具を片付けていた。

そこへ、金属質の足音がゆっくりと近づく。

Zだ。いつもの軽口も、柔らかな電子ノイズもない。

その沈黙が、逆に重い。


Z「……オルト、少し話がある」

オルト「なんだ、珍しいな。お前が真面目な声出すの」


Zは一拍置き、周囲のセンサーを確認するかのように頭部をわずかに傾けた。

そして、音を殺すようにして隣のベンチに腰を下ろす。


Z「《始原の砲》……聞いたことは?」


その単語を口にした瞬間、オルトの指が止まった。

工具がカン、と床に落ちる。


オルト「……伝承兵器、だろ。銀河の歴史に埋もれた、でっかいおとぎ話」

Z「おとぎ話ならよかった」


Zの声が、冷え切っていた。

普段の軽妙な調子とはまるで別物。

それに、彼のボディからわずかな光が走る――暗号回線が動いている証だ。


Z「帝国も、サルカも、今それを追ってる」

オルト「……戦況が膠着してるからな。でかい切り札が欲しいのはわかる」

Z「連邦も同じだ」


オルトは、彼の顔を見つめた。

光沢のある流体金属の仮面の奥で、何を考えているのかは読めない。


オルト「……どうしてお前がそんな情報を?」

Z「……仕事の一環だ」


短い答え。

そこに余地はなかった。

オルトは息を吐き、重たい沈黙を落とす。


Z「一つだけ言っておく。モルには話すな」

オルト「……あいつ、口軽いしな」

Z「違う。これは、あいつの背負うものじゃない」


Zが静かに立ち上がる。

その瞬間、船体の振動が少し強まった――ジャンプドライブの再起動音。

まるで、次の戦いがすぐそこに迫っているような錯覚を覚える。


Z「俺たちの任務は“配送”だ。それを忘れるな」

オルト「……わかってる」


Zは一度だけ、冷たい光を揺らし、格納庫の奥の暗闇に溶けていった。

残されたオルトは、無意識に拳を握る。

“始原の砲”――銀河を震わせるその名前が、今も耳に焼き付いていた。

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