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第9話 曲をつくる。

 それから二日後、再び俺たちは彩夏の家に集まった。今日はついに曲を作る日だ。


 六月の下旬、期末試験を控えた時期だというのに、俺たちは気楽に集まっていた。


「今日は曲作りだよ!」と彩夏が両手をパンと叩いて、笑顔でみんなを見渡す。

「あのピザの歌詞に合う曲、どんなのがいいかな? 明るい感じ? しっとり系?」


「……優しい雰囲気の方が合うんじゃない?」と美咲が少し首をかしげる。


「そっか、じゃあまずは方向性を決めよう!」と彩夏が張り切って言うと、澪が「……その前に、勉強は?」と淡々と突っ込んできた。


「うっ……」と彩夏が顔をしかめ、「やる時間は後でちゃんと取るから! 試験、まだなんとかなるし!」と笑ってごまかす。美咲も「そ、そうだよね、私たち今は息抜きってことで……」と笑い、俺は「まあ、俺は必要な分はちゃんとやってるから大丈夫だな」と軽く肩をすくめた。


「……私も計画通り」と澪が小さくため息をつき、スマホをちらりと確認して「勉強時間は確保済み。今は曲作り」と静かに締めくくった。


「……すごいな、澪ちゃん。私も見習わなきゃ……」と美咲が苦笑し、「まぁまぁ、今は音楽を楽しもう!」と彩夏が明るく場をまとめた。


 そんな軽いやりとりを交わしたあと、彩夏が「じゃ、そろそろ本題!」と手を叩き、「澪!調べてみてくれる?」と声をかける。


 例のごとく、澪がノートパソコンを広げ、「まずは曲作りの基本をざっと調べる」と言い、画面を見つめながら淡々と説明を始めた。「……コード進行、メロディライン、リズムパターン。初心者なら、シンプルな4コード進行で十分。テンポはバラード系ならBPM70前後で情感重視、強弱のつけ方も大事」


「さすが澪!」と彩夏がぱちぱちと手を叩き、美咲は「助かる~」とホッとした顔をする。俺は「また頼りきりじゃん……」と苦笑い。


 みんなで方向性をあれこれ相談しているうちに、『やっぱり雰囲気はイタリアンだよね』という話にまとまっていった。


「イタリアンな雰囲気……カンツォーネ。アコースティック寄り、バラード系……」と澪が静かに呟くと、「おしゃれだなぁ」と美咲がうっとりし、彩夏は「イタリアっぽい情熱的な感じ?いいね!」とノリノリだ。


 そこから、彩夏がギターを抱えて「ラララ~♪」と鼻歌を乗せ、メロディを探り始める。「このコードに合わせると、こんな感じ……?」「あ、それいいかも!」と美咲がノート片手に必死にメロディ案を口に出す。「ここ、もっと優しい感じにしたらいいかも!」と美咲が提案すると、「じゃあちょっと抑えめに弾いてみる!」と彩夏が応じた。


「……でも、Bメロのとこ、跳ねすぎじゃない?」と澪がすかさず指摘。「うそ、ほんと? わかった、修正修正!」と彩夏は笑い、メロディを調整。


 そのやり取りを見守りながら、俺は「おい、これホントにピザの歌になるのか……?」とツッコミを入れ、場がどっと笑いに包まれる。


 そして問題になったのは、俺の担当――カホンだ。「あのさ、そもそもカホンって、この曲に合うのか?」と俺が聞くと、澪は少し考え込んで「打楽器として入れるなら、主張しすぎない方がいい。ブラシで柔らかめの音を入れて、リズムを軽く支える感じ」


「えっ、そんなテクいるの?」と俺が焦ると、「大丈夫だよ、お兄! 試してみよう!」と美咲が笑い、彩夏も「軽めのリズムでいいから!ピザの歌だもん、重すぎると変でしょ?」と笑った。


 みんなのアドバイスを受けつつ、俺はカホンを軽く叩き始める。ドン、ドン……コン、コン……「あ、いいじゃん、今の!」と美咲が目を輝かせ、「その感じでテンポだけ合わせれば、雰囲気ぴったりだよ!」と彩夏も声を弾ませた。


 だんだん音が重なっていく。ギターの響き、鼻歌メロディ、美咲の口ずさむ案、俺のカホンのリズム、澪の冷静なアドバイス。


 全員が試行錯誤しながら、少しずつ『ピザの歌』の輪郭が見えてくる。練習を繰り返し、失敗しては笑い合い、気づけばあっという間に夕方になっていたのだった。



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